No.113…"ファイアーエムブレム 聖戦の系譜"(1996.5.14/SFC/開発:インテリジェントシステムズ/販売:任天堂)
No.113…"ファイアーエムブレム 聖戦の系譜"(2007.1.30/Wii VC/販売:任天堂)
No.113…"ファイアーエムブレム 聖戦の系譜"(2013.4.27/WiiU VC/販売:任天堂)
No.113…"ファイアーエムブレム 聖戦の系譜"(2016.8.27/New3DS VC/販売:任天堂)

 S・RPGの先駆けとして誕生したタイトルである『ファイアーエムブレム』。最初に出た『暗黒竜と光の剣』(FC)、『外伝』(FC)『紋章の謎』(SFC)と合計三作品の中で、アカネイア大陸とその西に存在するバレンシア大陸の物語が語られた。今回、紹介する『聖戦の系譜』は、『紋章の謎』の次にSFCで出たシリーズ作であり、『ファイアーエムブレム』シリーズの中でも特に熱心なファンが存在している作品である。

 ユグドラル大陸に位置するシアルフィ公国の公子シグルドは、隣国のユングヴィ公国の城が襲撃を受け、さらに幼馴染の公女エーディンが連れ去られたことを知り、ユングヴィ公国を襲ったならず者を掃討し、エーディンを取り戻そうと出撃を決意する。そんなシグルドの元へは、部下だけでなく、シグルドの親友であるレンスター王国の王子キュアンとシグルドの妹でいまはキュアンの妻であるエスリン、それに新米騎士のフィンらもレンスターから駆けつける。こうしてシグルド達は出陣するが、それが年単位で大陸全土を駆けめぐる、しかも最終的には世代をも越える壮大な戦いの幕開けになるとは、このときは誰も知る由などなかった。

 今作では『紋章の謎』までとはまずマップの大きさからして異なり、非常に広大なものとなっている。一つのマップ内で三つ四つの城を制圧することなどまるでめずらしいことでもない。それほど大きなマップであるから攻略にも当然、時間がかかるので、章数も序章や終章を入れても全12章と、数だけ聞くと物足りない印象もあるが、実際にプレイしてみるとそんなことは全くなく、ボリュームたっぷりの内容となっている。序章から終章までの間にめぐるマップをすべて貼り合わせると、そのままユグドラル大陸の地図になるというのも心憎い作りである。なお、本作の舞台であるユグドラル大陸はアカネイア大陸やバレンシア大陸と同じ世界に存在する大陸であり、時代的には『暗黒竜と光の剣』より約1000年前の物語で、ユグドラル大陸の神話と歴史にはアカネイア大陸の竜族が大きく関わっているという設定も存在している。

 ユニットの所持金システムも様変わりしており、『紋章の謎』までは軍資金は一つにまとめられて買い物時に誰でも自由に使うことが出来たが、今作では軍資金は個人単位で持っている。この個人単位での軍資金のやり取りは正式に結ばれたカップルの間か、もしくは味方のシーフから貰うかしか出来ない。しかもアイテムのやり取りも直接は出来ず、これはたとえ結ばれた恋人同士であっても、「ユニットAが要らないアイテムを中古屋に売る」→「ユニットBが中古屋に売られた欲しいアイテムを買う」というなんとも面倒くさい手順を踏まなければいけなくなっている。なぜこのような七面倒くさいシステムを採用したのかは、未だに疑問である。

 ネガティブな面を語ってしまったが、今作での最大の見どころは「親子二世代に渡る壮大な物語」をプレイヤーは神の視点から見届けられることだろう。ゲーム前半に登場する男女のユニットは親密度が高まって結ばれると、ゲーム後半ではそのカップルの子供達が成長した姿でユニットとして登場する仕様となっている(子供は母親依存で生まれてくるので親世代で未婚のままの女性キャラがいた場合、子世代では代替ユニットが登場する)。序章〜第5章までは親世代、第6章〜終章までが子世代と時代が分かれているのだが、詳しくは語らないものの、親世代の無念と理想を子世代が親から引き継いで繰り広げられるシナリオには本当に熱く、胸が打たれるものがある。

 今作は最初は『ファイアーエムブレム』シリーズとして作られる予定ではなかったという事情が存在するが、プレイしている間に会話や戦闘の緊張感などから感じられる作品の空気は間違いなく『ファイアーエムブレム』である。最後までプレイし終えてクリアにたどり着いたときの達成感はこれまでの他のシリーズ作以上に感慨深いものがあるだろう。

 幸い、最初に今作が出たハードであるSFC以外でも現在ではVCとして幾つものハードで遊ぶことが出来るので、手軽にオススメすることも出来る点も嬉しいポイントである。ある意味で『ファイアーエムブレム』シリーズの最高傑作とも言える今作『聖戦の系譜』。S・RPGがお好きならば、今作をプレイしないままというのはあまりにもったいない限りである。

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