No.96…"-CHASE- 未解決事件捜査課 〜遠い記憶〜"(2016.5.11/3DS DL/開発:G-Collection/販売:アークシステムワークス)

 DSで『ウィッシュルーム 天使の記憶』『ラストウィンドウ 真夜中の約束』といった良作ADVを開発した後に倒産したゲーム開発会社CING。今回、紹介する『-CHASE- 未解決事件捜査課 〜遠い記憶〜』は、この二作でキャラクターデザインを担当した金崎泰輔氏を始めとした元CINGスタッフが手掛けた作品であり、金崎氏は本作ではゲームデザインとキャラクターデザインを担当している。

 東京第三警察署未解決事件捜査課という署内で最も陽の当たらない部署。この課に属する刑事であり変人として署内で知られている七瀬祥之介と、その唯一の部下である女性刑事の雨倉香都の二人は退屈な日常を送っていたが、ある日、5年前にとある病院で起きた爆発事故は実は事故ではなく殺人事件であるというタレコミの電話が入る。七瀬と香都は半信半疑ながらも、まずはその事故に関わった少年を呼び出し、少年との対話をきっかけに5年前に事故として片づけられた事件の真実が明かされていく……。

 物語は一貫して取調室で始まり、取調室で終わる。未解決事件が過去の事件である以上、現場は既に捜査出来ないからだ。代わりに香都が過去のデータベースから事件に関わっていると思われる人物を探し出し、それらの人物を取調室に呼んで七瀬が事情聴取をするという形で基本的にはゲームは進んでいく。事情聴取において選択肢を間違えると画面に表示されているゲージの値が減少してゼロになるとゲームオーバーになるが、選択肢は易しいものばかりなので、七瀬と香都のやり取りをきちんと覚えていれば、選択肢を間違えてばかりでゲームオーバーになるといった事態にはまずならない難易度に設定されている。

 事情聴取以外では、香都が過去のデータベースから調べてきた情報を七瀬に報告してやり取りしたり、七瀬が事件について推理するといったシーンで構成されている。これらの場面ではゲームオーバーになることはないし、いつでもセーブ出来るようになっているので、事情聴取だけに限らず全体的に難易度は易しく設定されており、推理ADV初心者でも迷うことはなく楽しめるだろう。

 操作についてはボタン主体でもタッチペン主体でもどちらでも操作出来るように設計されているが、唯一、過去の現場写真を調べるシーンではタッチペンが必要となってくる。ここはボタン主体で操作している場合は少々面倒に感じるかもしれないが、他のシーンでボタンとタッチペンを併用する必要があることはないので、操作性はスムーズな部類に入るだろう。

 なお、ゲーム本編自体は1時間半もあればクリア出来るほどコンパクトに作られているが、800円のダウンロード専売ゲームとしては比較的妥当なプレイ時間であろうし、内容もきっちり作られている。また、ラストでは新たな謎が浮上し、さらに七瀬が何度も襲われる謎の発作の正体に関しても明かされないまま、このゲームは終わる。今作は未解決事件捜査課を舞台にした物語のプロローグなのであり、続編ありきで作られていることが開発スタッフインタビューでも示唆されている。

 内容がぎゅっと詰まっているとはいえ、プレイ時間の短さと続編の存在を前提としたシナリオには物足りなさを感じるプレイヤーも少なくないだろうが、七瀬を主人公とした推理ADVとして良作と言える作品だろう。七瀬のイメージをそのまま体現したハードボイルドな雰囲気が終始に渡って漂い、Live2D(2Dモーフィングによるシームレスアニメーションを可能にするソフトウェア)で描かれたキャラクターの表情や動きも滑らかで美しく、続編が待ち遠しい一本である。



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