No.82…"ラストウィンドウ 真夜中の約束" (2010.1.14/DS/開発:シング/販売:任天堂)

 新規のアドベンチャーゲームとしては21万本と決して少なくない本数を売り上げた有名作『ウィッシュルーム 天使の記憶』の続編がこの『ラストウィンドウ 真夜中の約束』である。

 前作『ウィッシュルーム』からほぼ1年後の1980年12月18日。いい加減な態度で仕事を放り投げた主人公カイル・ハイドが上司エドにクビにされかけるうえに、カイルは現在住んでいるアパートも立ち退きが決まっているため、遠からぬうちに引っ越し先も見つけなければいけない状態にあり、なんともシビアな状況から今回の物語は始まる。

 前作はホテルを舞台にした一晩の物語だったが、今作ではカイルが住むアパート「ケイプウェスト・アパートメント」が舞台となり、期間も1週間強と長めになっている。前作ではカイルはホテルの従業員や客と深く関わったが、今作でもアパートの住人とカイルの関わりが描かれている。キャラの魅力については前作に勝るとも劣らぬと言えるし、カイルがアパートの過去を調べるうちに彼自身の父親の死の真相にも迫っていくストーリーは前作以上に物悲しいものがある。

 今作の操作もタッチペンオンリーで、操作性についてはやや改善されている。例えば移動する際にダッシュが出来るようになったし、電話が鳴った時などは電話のすぐそばまで行かなくてもある程度近づけば電話のアイコンが表示されてすぐに通話できるようになった。もっとも、それでも非常に快適だとは断言出来ないのだが……だが、前作と比べれば格段に進歩したことは両作品を知っていれば分かることだろう。

 謎解きに関しても、前作ほどシビアなものは少なくなり、解決方法一つとっても複数の答えが用意されている場合が多い。例えばそれが固くなったバターの蓋を開ける方法であったり、閉じ込められたドアを破る方法であったり。そこには大きなものではないかもしれないがプレイヤーの個性が出てくると言ってもいいだろう。

 前述の通り操作性は向上しているし、どこか悲しげな雰囲気に満ちたストーリーや、前作同様に「ロトスコープ」で描写されたキャラの魅力も前作『ウィッシュルーム』と比べても甲乙つけ難い今作だが、どういうわけか発売前にほとんど宣伝されなかったためか、売り上げ本数は4万7千本と前作の4分の1以下にまで下がってしまった。ゲームとしては『ウィッシュルーム』より『ラストウィンドウ』のほうが完成度は高いと言えるのに……しかも開発元のシングがこの『ラストウィンドウ』発売直後に倒産してしまったため、続編については今のところ『ラストウィンドウ』冒頭のカイル・ハイド以上に絶望的な状況にある。なんとか同じスタッフが結集して、カイル・ハイドの第三の物語を作り上げてほしいものである……。



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