No.78…"有罪×無罪"(2009.5.21/DS/開発・販売:バンダイナムコゲームス)

 2009年5月21日から施行された裁判員制度。本作はその施行日に発売された裁判員裁判をテーマとしたアドベンチャーゲームである。

 プレイヤーは裁判員の一人として選ばれ、合計4回の裁判員裁判に臨むことになる。ただし、裁判員は連続では選ばれない仕組みなので、各話におけるプレイヤーの分身となる裁判員は同姓同名であってもそれぞれ別人という設定である。

 このゲームの肝とも言えるのが裁判官3人および裁判員6人によって行われる「評議」である。基本的に評議は一日目と二日目に行われ、有罪か無罪かを見極めて結論を出し、有罪の場合は量刑も考慮する最終評決は二日目の評議の内容で決定される。評議では事件の内容を「ファクター」に分けて話し合うのだが、例えば最初に選んだファクターからは有罪寄りと考えられるが、次のファクターでは逆に無罪寄りだと考えられたりもする。しかしどの事件でも「有罪か無罪かを示す決定的な証拠や証言」が存在しており、プレイヤーがそれらに気づいて他の裁判員や裁判官達に示すことが出来れば、それをきっかけに今まで分からなかった事件の真相が明るみに出てくるケースが多い。

 また、一度は議論したファクターであっても、時間が許す限りはファクターは何回でも議論し直せるので、最初に取り上げた時は曖昧なままだったファクターでも、真相に裁判員達が気づいた後で再度取り上げるとがらっと討論する内容も変わって、有罪なり無罪なりはっきりとさせることが出来るシステムとなっている。

 事件の真相に辿り着ければ、その裁判の終了後に真実追求度が「100%」と表示され、プレイヤーも清々しく終われる作りとなっている。真相が分からないままだとプレイヤーも釈然としないままだし真実追求度も満点ではなくなるが、その際には真実に近づくためのかなり細かいヒントを貰えるし、裁判を最初からだけでなく途中からもやり直す事が出来るようになっているので、再プレイするにしてもストレスはあまり感じないだろう。

 シナリオ監修には実際の法曹関係者が何人も携わっているだけあって、4つの事件はどれもリアルで本当に起こったとしてもおかしくない内容ばかりである。不幸な偶然が積み重なってしまったり、被告人が口を閉ざしていた悲しい事実が事件の契機であったり……何より今作のシナリオの真骨頂は最終話でもある第4話の結末であろう。背筋が凍るほどのぞっとする真実が明らかになり、そしてそれを知ったことでプレイヤーの分身たる裁判員はまた新たな形で裁判に関わることを示唆して物語は幕を下ろすのである。

 キャラクターデザインはいわゆる萌え絵とは程遠いリアル系な絵柄だが、登場するキャラは総じて魅力的である。全話に登場する井原裁判長、飯野裁判官、榊裁判官、荒牧検察官、平本弁護士らは皆、それぞれの職務を全うする姿が厳しくも人間的であるし、裁判員も色々な個性のキャラが揃っていて、中には別の事件で別の立場から関わってくる者もいるので、全4話を全て知っている立場のプレイヤーだからこそニヤリと来る場面も少なからず存在している。

 なお、今作とテーマが同じ裁判員裁判で発売日も同日かつハードもDSであるゲームとして『THE 裁判員 〜1つの真実、6つの答え〜』が存在している。裁判員裁判を描いたアドベンチャーゲームという点では似ているが、プレイヤーの視点やシステムは全くの別物である。だが、これら2つのゲームはどちらも非常に面白い力作だと断言出来るので、興味のある方は是非両方ともプレイして頂きたい。両作品とも決して損はさせない名作である。



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