No.63…"采配のゆくえ"(2008.10.23/DS/開発・販売:コーエー)

 『無双』シリーズで有名なコーエー内製作チーム「オメガフォース」が開発した「合戦アドベンチャー」。「関ヶ原の合戦」をメイン舞台に、西軍の総指揮官・石田三成を主人公として、関ヶ原の戦いを描いている。

 発売前からシステムやインターフェース、キャラモーションなどがカプコンのADV『逆転裁判』シリーズに酷似していると話題になっていたが、確かにその意見は否めない。だが、DSの上下2画面の効果的な使い方や、実在の戦国武将らを上手く使ったキャラ立ての巧みさなどで、単なる「模倣作」ではなくコーエーからカプコンへの見事な「本歌取り」的な作品として昇華されたゲームとなっている。

 ゲームは主に、戦闘以外のシーンを舞台とした「戦略パート」と、味方部隊と敵部隊との戦いを指揮する「合戦パート」に分かれているが、中盤以降からはほとんど「合戦パート」が占めるようになっていく。「戦略パート」では探偵ものADVさながらの探索や会話が行われ、「合戦パート」ではプレイヤーが指揮官である三成となって味方部隊を動かしていくことになるが、どちらのパートにも共通している重要なシステムに「説得」がある。これはたとえば、味方武将であっても頑なで三成の言葉を受け入れようとしない人物に対して、プレイヤーが登場人物たちとの会話から得た情報を武器に「説得」を試み、相手の心の内を引き出したり、三成を真の指揮官として認めさせたりするシステムである。このシステムにより登場人物たちの内面が深く描き出され、各キャラの造詣を深めさせることに成功している。

 また、「合戦パート」で三成率いる西軍部隊が窮地に追い込まれると、三成が部隊を率いるキャラたちの心を垣間見られることがあり、同時に「天眼」という能力が三成に宿ることになる。これにより、マス目上に配置された味方部隊を制限手数以内に効果的な位置へと動かして敵部隊を一気に撃ち破ることが出来る。最終的にどういった布陣にすべきかというお手本が示されるので、難易度自体はそれほど高くないが、ボードゲーム的でなかなか面白いものとなっている。ゲーム後半になると、複数の戦場で同時に発生する戦闘において、どんな指示を与えることで的確に味方部隊を連携させて敵を破れるか?という戦術的要素も加わり、新たな面白さを与えている。

 ゲームを通して語られるのは歴史上の「if」的な物語であり、日本史の詳しい知識がなくてもじゅうぶん楽しむことが出来るが、基本的には史実に倣っているので、登場する武将らに関する知識があれば、さらに楽しんでプレイ出来るだろう。プレイ時間がやや短いものの、中身の濃度は高い良作である。



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