No.104…"ポリスノーツ"(1995.9.29/3DO/開発:コナミコンピュータエンタテイメント大阪/販売:コナミ)
No.104…"ポリスノーツ"(1996.1.19(廉価版:1997.9.18/2003.8.7)/PS/開発:コナミコンピュータエンタテイメント大阪/販売:コナミ)
No.104…"ポリスノーツ"(1996.9.13/SS/開発:コナミコンピュータエンタテイメントジャパン/販売:コナミ)
No.104…"ポリスノーツ"(2008.5.14/PSP&PS3 ゲームアーカイブス/販売:コナミデジタルエンタテインメント)

 近未来のネオ・コウベシティを舞台にしたSFアドベンチャーの名作『スナッチャー』。今回紹介する『ポリスノーツ』はその『スナッチャー』と同じ開発責任者である小島秀夫氏が再び手掛けたハードボイルドSFアドベンチャーの名作である。

 西暦2010年、人類はラグランジュ・ポイント5にオニール型スペースコロニー「BEYOND COAST(ビヨンド・コースト)」を完成させて移住を開始した。続いて2013年、宇宙への一般市民の大量移住に対応すべく、世界中から選抜された5人の警察官が宇宙飛行士としての訓練を受け、ビヨンドの治安を守るべく配備された。警官(POLICE)であり宇宙飛行士(ASTRONAUTS)である彼らを、人々は「ポリスノーツ(POLICENAUTS)」と呼んだ。そのポリスノーツの一人であったジョナサン・イングラムは任務中に発生した事故のために行方不明となるが、生存システムによって人工冬眠状態で眠っていたところを奇跡的に救助される。しかし外界では既に25年もの年月が過ぎていた。

 時代に取り残されたジョナサンはオールド・ロサンゼルスでしがない私立探偵として細々と生きていたが、そんな彼の前にかつての妻であり、25年の月日を生きて年を重ねたロレインが現れる。ジョナサンが行方不明となって死亡したと断定された報を受けた後、ロレインは別の男性と再婚してビヨンドに移住していた。ロレインがジョナサンの元を訪れたのは、行方不明になった現在の彼女の夫の行方を捜してほしいというものだった。自分の妻が現在は別の男性の妻であるという事実や宇宙への恐怖症といった複雑な感情からジョナサンはロレインの依頼を引き受けることを即断しなかった。しかし、ジョナサンの事務所から出たところでロレインの車は爆破され、ロレインはジョナサンの腕の中で息を引き取ってしまう。病に苦しむ身である彼女の娘のことをジョナサンに託して。

 ロレインを殺したのは何者なのか、事件の背後にはいったい何が控えているのか。それらの謎を解明するために、ジョナサンはビヨンドへと向かう決意を固め、25年前に止まったままだったジョナサンの人生の物語は再び動き出すのだった。

 ゲームの発売時期はハード性能の明白な違いはあるとはいえ、前作『スナッチャー』とは比べ物にならないほどグラフィックもムービーも進化しており、特に最後に発売されたサターン版は「最終版」と呼ばれ、サターンの2Dグラフィック描写性能が余すところなく発揮されている。また、サターン版ではサターン専用マウスでの操作にも対応しているほか、なんと銃撃シーンではバーチャガンに持ち替えることも出来る仕様となっている。しかし、バーチャガンはブラウン管テレビでないと対応していないため、ほとんどの家庭でブラウン管テレビに代わって液晶テレビがメインになった現在では、バーチャガンでプレイすることは難しいと思われるのが残念なことである。

 グラフィックといった要素だけでなく、ストーリーももちろん『スナッチャー』に勝るとも劣らぬ完成度である。ジョナサンはビヨンドで再会したかつての親友であり元ポリスノーツである警察官エド・ブラウンと共に、ビヨンドの中で起きている真実を捜査することになる。同じく元ポリスノーツの同僚達、特にジョセフ・サダオキ・トクガワはビヨンドを牛耳る存在にのし上がっており、ジョナサンはトクガワと対立することになる。また、ジョナサンの前にたびたび立ち塞がるトクガワの配下でありビヨンドの精鋭警察官のトニー・レッドウッドの存在感は、彼の声を担当した故・塩沢兼人さんの演技もあいまって忘れがたいものとなっている。ジョナサンを取り巻く様々な人間関係が織りなすドラマは、プレイヤーをジョナサン達が生きている世界へ強く感情移入させるだろう。

 緊迫したストーリーのところどころにホッとするようなコミカルなシーンも挟みつつも、骨太な人間ドラマがプレイヤーを引き付けてやまない本作。前作『スナッチャー』では親子愛が隠れたテーマだったことと同じく、本作でも様々な形での親子愛が描かれており、特にエンディングでのエドの姿には落涙しかけてしまったほどだった。年月を経ても決して古びていないその面白さは、是非お勧めししたい限りである。

CONTENTS

inserted by FC2 system