No.89…"ファイアーエムブレム 封印の剣"(2002.3.29/GBA/開発:インテリジェントシステムズ/販売:任天堂)
No.89…"ファイアーエムブレム 封印の剣"(2015.9.2/WiiU VC/販売:任天堂)

 ファイアーエムブレムシリーズ第6作目であり、初の携帯ハードで発売された今作。物語やキャラの設定などは非常にオーソドックスだが、それ故にとっつきやすく、嫌味もない好作品に仕上がっている。

 戦闘システムはそれまでのファミコンやスーパーファミコンで出た前作を踏襲しており、難易度も手強いながらも適切に設定されているため、ファイアーエムブレムシリーズ初心者でもクリア出来るだろうと思われる。また、今作では『聖戦の系譜』から採用された支援会話システムが再び採用されており、主人公のロイとメインヒロインのリリーナのような王道カップル以外にも、意外なキャラ同士での支援会話も存在しており、舞台であるエレブ大陸の世界設定や人間関係の奥深さなどを体感できるようになっている。なお、前述したロイとリリーナの支援については真のエンディングにも関係しており、二人の支援レベルが最高の「A」でない場合は真のエンディングの内容が変わってくるが、そちらもバッドエンドという訳ではなく、一見の価値があるものとなっている。

 今作ではある章のマップで村を訪問したかしないかでその次のシナリオとマップが分岐して仲間になるユニットが変わり、また、特定の戦闘ユニットの成長度によって途中のシナリオとマップがもう一度分岐して、やはり仲間になるユニットが変わるシステムとなっているため、戦闘ユニットに対する個人の好みがシナリオやマップに如実に反映されてくると言えるだろう。具体的には第9章のマップで村を訪問したかしないかでその次のマップが変わるほか、「遊牧民」と「ペガサスナイト」というユニットのそれぞれの成長度で中盤のシナリオとマップが変わってくる。前者は騎乗して弓を武器とするユニットで、後者は打たれ弱いが飛行ユニットであるという利点があり、分岐シナリオのマップもそれぞれが活躍出来る設計となっている。

 オーソドックスなシナリオだと先に触れたが、物語の舞台であるエレブ大陸を征服しようと侵攻を始めるベルン王国の国王ゼフィールや彼に忠誠を誓うマムクートの少女イドゥンらの設定には悲劇的なものがある。特に異母妹ギネヴィアによって語られるゼフィールと彼の父親の確執はあまりに悲しすぎる。父の愛を求めた末に裏切られて人間に絶望したゼフィールと、仲間に裏切られて心を奪われた過去を持ち最終的にゼフィールの思いを託されるイドゥンに対し、ロイが最後の戦いで取った行動が彼ら――特にイドゥンにとって救いあるものであったことは、プレイヤーとしても印象強いものになるはずである。

 長らくGBAでしかプレイ出来なかったが、このたび、晴れてWiiUのバーチャルコンソールでもプレイ出来るようになった今作。古参プレイヤーも新規プレイヤーも、ファイアーエムブレムという手強いゲームを楽しめるであろう一品である。直接の続編であり前日譚でもある『ファイアーエムブレム 烈火の剣』と共に楽しんでほしい。



OFFICIAL SITE

OFFICIAL SITE(VC版)

CONTENTS

inserted by FC2 system