No.48…"X(エックス)"(1992.5.29/GB/開発:任天堂、アルゴノートソフトウェア/販売:任天堂)

 発売時のTVCMでの「マニアの方だけにオススメします」というコピーフレーズが有名な任天堂謹製のFPS視点3Dシューティングアクション。とは言っても、そのフレーズを知らない人のほうが多いかもしれないマイナー作品でもある。「マニアの方だけに…」と謳ってはいるが、それはどっこい、任天堂。初心者でもちゃんと遊べるように作ってある、シューティングの隠れた傑作である。

 ポリゴンを使えないゲームボーイというハードで、ワイヤーフレームを用いて見事に立体的に描かれた世界。画面は大きく上部3分の2と下部3分の1とに分かれ、上部がモニター、下部がレーダーや機体の耐久度やミサイル残数などを表す様々なパラメータが計器類で表示されている。移動&攻撃と同時に、幾種類もの計器類に目をやらなければいけないという時点で、「えー!?」と思われそうだが、心配は無用。序盤が事実上のトレーニングモードになっているので、上官の指示に従ってミッションをクリアしていると、いつの間にかモニターの視界と計器類のパラメータを同時に見て機体を動かせるようになっている。本格的なミッションを任されるようになる中盤以降でも、難易度の上昇が適切なので、途中で投げてしまうということがない。この辺りのバランスは見事としか言いようがない。

 先にも述べたが、このゲームはワイヤーフレームという古典的な手法で、計器類を除いた視界の全てが表現されている。だが、PSなどで出ているポリゴンを用いた3Dシューティングと比べても、全く劣る部分などない。むしろ画面がシンプルなだけに、視界に映るものが何なのかが判別しやすいし、想像力も働くし、このストイックなゲームのイメージとマッチしている。ゲーム全編をワイヤーフレームで描いて3Dをしっかり表現したこと、そしてその結果、見た目が非常に地味なものになったのに、このゲームを日陰者にすることなく堂々と発売した任天堂の英断には拍手を贈りたいぐらいである。

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