No.102…"ヴェスタリアサーガ I 亡国の騎士と星の巫女"(2016.9.5/PC/同人フリーソフト)

 『ファイアーエムブレム』シリーズをこの世に送り出した生みの親である加賀昭三氏が、市販のS・RPG制作ツールを使って有志のボランティアスタッフと共に作り上げた作品であり、同人フリーゲームとして世に送り出されたのがこの『ヴェスタリアサーガ』である。

 その『ヴェスタリアサーガ』だが、まずゲームを開始する際に難易度を「通常モード」か「救済モード」のどちらかから選ぶことになる。公式サイトでは「通常モードが推奨」とされているが、プレイに自信がない人は迷わず「救済モード」を選ぶべきだろう。S・RPGに慣れている歴戦のプレイヤーなら推奨とされている「通常モード」を選ぶだろうが、「救済モード」ですら一つのマップに何時間もかかるのは当たり前だし、最終章に至ってはプレイに必要な時間は10時間は見積もっておくべきであるほどの難易度なのだから。

 『ヴェスタリアサーガ』の物語は日本の本州と同じくらいの大きさの島であるヴェスタリア島の南東に位置するメレダ王国と、大陸の帝国との間に戦争が勃発したことから始まる。主人公であるメレダ王国の属邦レデッサ公国の公子ゼイドが、兄でありメレダ王国の王女アトルの婚約者でもあるゼクスの命に従って、メレダ王国王家の唯一の生き残りとなったアトルを守り、メレダ王国を脱出するまでを描いたのが序章となっている。

 内容はオーソドックスなS・RPGであり、序章こそ完全にチュートリアルに徹していて易しい難易度だが、第1章以降はとんでもなく手強くなってきて、ゲーム後半になると、前述したが一つのマップに何時間もかかっても全くおかしくないほどの難易度となる。それと言うのも攻略サイトで攻略方法を知ってもなお、何度もやられてやり直すことになるためである。一応、最初のターンとそれ以降の5ターンづつはセーブ出来るようになっているが、この途中セーブ仕様がなく、やられたらマップの最初からやり直しだったら、私は序盤で放り投げていただろう。とにかく一筋縄ではいかないシミュレーションなのだ。

 しかし、ただ理不尽に難しいという訳ではない。各々のユニットの特性を生かし、マップ内のギミックを解いていくことで、あんなに苦戦して悩んだマップを攻略するのが、いつの間にか楽しく思えてきて夢中になっていると言っても過言ではない。難易度と楽しさを見事に両立させた良質なS・RPGであると言えよう。こんな名作を同人フリーゲームで無料で遊べることは、開発スタッフに悪いのではないだろうかとさえ思えてくる面白さである。

 ボリュームの問題からこの第1部はゼイド達がメレダ王国に帰還するところで終わっており、EDでは各キャラのとりあえずの今後が様々に描かれているが、主人公であるゼイドの未来はいったいどうなるのかが想像が膨らむところである。ゼイドにはお互いに想いを寄せる相手であるアトルと幸せになってほしい限りだが、ゲームそのものが全体のボリュームの都合で分割されたものの、ゼイドとアトルの物語はいつか出るはずの第2部でまた描かれるはずなので、第2部が待ち遠しい限りである。



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