[結ばれた二人は皆に見守られて ―愛の絆は何よりも深く―]



「ああ……ああ……ん……! バスター……! バスター……!」
「レアナ……! 俺だけのレアナ……!」

 寝台の脇の小さな明かりだけが灯されたバスターの部屋の中で、寝台の上には一糸まとわぬ姿のレアナが両腕を寝台について膝を曲げて四つん這いになっていた。そんな赤裸々な姿のレアナの腰を後ろからがっしりとつかんで、やはり一糸まとわぬままの姿のバスターが勢いよく体を動かしてレアナを深く激しく攻めて愛していた。
「ああ……ん! バスター……! もっと……愛して……!」
「レアナ……! 俺だけの……いとおしいレアナ……!」
 バスターのたくましい体が激しく動いて勢いをつけてレアナの中に攻め入るたびに、レアナの豊かな形の良い乳房が大きく揺れ、寝台も音を立てて大きくきしんだ。そして何よりも、レアナの甘い声が部屋の中に響き渡っていた。
「うう! くうう! レアナ! レアナ……!」
「あん! ああん! バスター!」
 長い時間をかけてレアナと愛し合った末に、バスターがとうとう絶頂に達して熱い精をレアナの体の奥深くへと解き放ち、愛するバスターの熱く刺激に満ちた精をその華奢な体でもれなく受け止めたレアナもまた、ひときわ高い声をあげて果てて、そのまま寝台に崩れ落ちた。
 すっかり体の力が抜け、ぐったりとなって横たわるレアナの裸の体を、バスターは優しく抱き上げていとおしむように抱きしめた。抱きかかえたレアナをいたわるように彼女の柔らかで美しい髪の毛をゆっくりと指で梳きながら、バスターはレアナに声をかけた。
「レアナ……大丈夫か?」
 ぜいぜいと荒い呼吸を続けるレアナはすぐには返答出来なかった。だが、バスターに抱きしめられて髪を梳かれているうちに呼吸が落ち着くと、自分の体を抱く裸のままのバスターの体にすがりつき、バスターの唇に自身の唇でそっと触れて、明るく微笑んだ。
「だいじょうぶだよ……。バスター……いっぱい、うんといっぱい……愛してくれて……ありがとう……」
 あまりにも素直なレアナの言葉に、バスターは自身の赤い髪の毛をしきりにかきながら、照れくさそうな表情で答えた。
「レアナ……。俺はもちろんお前のことを愛しているけども……いつも理性が吹っ飛んじまって、本能のままにお前の体を攻めちまっているのに……」
 バスターの言葉を聞いたレアナは首を横に振り、微笑んだままで返事を返した。
「でも……バスターはあたしのことを……ちゃんと、体だけじゃなく心からも愛してくれているから……。バスターとひとつになって愛し合えるたびに、あたしはそれが……うれしくて、たまらないの……」
「レアナ……お前は本当に……いつまでも純真無垢なままだな……。俺もそんなお前が……どうしようもないほどに愛しくてたまらないんだ……」
 バスターはそう言うと、レアナの体を強く抱き寄せ、今度は彼のほうから唇を深く重ねてきた。愛しいバスターのくちづけをレアナは積極的なまでに受け入れてバスターの体に抱きつき、ほのかな明かりの中で、心から愛し合う二人は長いあいだ、抱き合って濃厚なくちづけを交わし続けていた。

 静けさを取り戻した部屋の中で、バスターとレアナは共に裸のままで寝台に横になっていた。二人はぴったりと体を近づけて寄り添い、バスターは右手を、レアナは左手をそれぞれ差し出して、指と指まで絡めて強く握り合っていた。
「バスター……あたしだけの……愛しいバスター……」
「レアナ……俺だけの……愛するレアナ……」
 お互いへの愛を確認するかのようにそうささやき合うと、レアナはバスターの裸の胸に頭を乗せ、愛する彼に甘えるように言葉を漏らした。
「バスター……。無事に地球に降りられたら……あたし、バスターとの思い出のあの場所に……もう一度、行きたいな……」
「俺との……思い出の場所……?」
「うん……。あたしとバスターが初めて会った……あの思い出の場所……」
「お前と初めて会ったって言うと……ああ、グリーンプラントのことか?」
 自身の記憶をたぐったバスターが頭によみがえった場所の名前を口にすると、レアナは嬉しそうに微笑んだ。
「そうだよ……。いっぱい緑にあふれてて……あたしたち、いっしょに大きな木に登ったよね」
 レアナの言葉を受けて、バスターの脳裏には古い記憶がありありとよみがえっていた。グリーンプラントはその名前の通り、様々な植物を管理し生育している施設であり、その施設の一画で開かれたパーティーで、まだ10歳だったバスターは、彼よりも一歳年下で10歳にもなっていなかった幼いレアナと出会っていた。懐かしい記憶に触れて、バスターの口元にも柔和な笑みが浮かんでいた。
「そうだったな……。でっかい木のてっぺんからのあの見晴らしは……俺はいまでも覚えてるぜ」
「木の上から辺りを見渡して……すごく気持ちよかったね」
「そうだな……。木を登るときも降りるときも、俺はお前が足を滑らせて落ちやしないかって、ヒヤヒヤしたけどな」
 まるで保護者のようなバスターの口振りに、レアナは小さく笑い声をこぼした。
「ふふっ……バスターったら……小さい頃からぶっきらぼうな振りをして……本当はやさしかったんだね」
 レアナに自分の性格の本質を指摘されたことに照れながらも、バスターはそれを否定はしなかった。
「まいったな……」
 レアナの指摘の言葉に照れてしまって自分のペースを崩されたバスターの様子に、レアナはまた笑って言葉を続けた。
「ふふふっ……それにバスターは出会ってすぐのときにも転んでケガしちゃったあたしの腕を手当てしてくれたし、木に登った後もあたしのことを先生たちからかばってくれて……嘘までついてくれたんだもんね」
「そ、そうだったな。けどよ……あの状況ではケガしていたお前を手当てするのは当然だったし、大人に問い詰められたお前のこともかばわなきゃって……俺にしてはめずらしく、そう思ったんだよ……。俺もお前もまだ子供だったけど……だからこそ、明らかにお前は俺より年下だって出会った瞬間から分かっんだしな」
 バスターの言葉に、レアナは相変わらず笑みを浮かべながらも感慨深げな口調でつぶやいた。
「バスター……。本当に……小さい頃からバスターはバスターのままだったんだね……」
 レアナの言葉を聞いたバスターはうっすらと顔を赤く染め、戸惑いながらも言葉を返した。
「そ、そうか? 俺に言わせれば……お前のほうこそ、子供の頃から全然、変わってねえけどな」
「そう……?」
 首をかしげたレアナを、バスターはニヤッと笑って見つめた。
「そうさ……。お人好しで馬鹿がつくほど正直で嘘がつけなくて……どこまでも純粋で……とびきり可愛くてな……」
「バ、バスターってば……!」
 バスターののろけそのものな発言に、レアナの顔は赤くなったが、そんなレアナをバスターは優しく抱きしめた。
「だってよ……本当のことだろう?」
 バスターに抱きしめられたレアナはおずおずと、再確認するかのように彼に尋ねた。
「そんな、だって……あたし、そんなに可愛い……?」
 レアナが愛らしい少女であることはバスターだけでなく、誰が見ても明らかな事実だったが、当のレアナにはまったく自覚がなかった。そんなレアナがバスターにはますますいとおしく、バスターは微笑んでレアナを見つめた。
「ああ……。昼間のお前はもちろん、夜のお前も……なんて可愛いんだろうって、お前と愛し合いながら……何度となく思ったものだぜ……? それに……いま俺の目の前にいるもう子供じゃないお前は、俺が思わずハッとなっちまうほどに美しくもあって……特に生まれたままの姿のお前は……まるで妖精みたいだよ……」
 バスターの手放しでの賛美の言葉を受けたレアナは赤面しつつも、いままさに自分が何一つ身にまとっていない裸のままであることに気づき、慌てて両手であらわな乳房を隠したが、そうやって恥じらいを見せるレアナの姿には余計に色香が漂っており、逆効果だったとも言えた。
「もう……バスターってば……」
 両手で胸を隠しながら、レアナの顔は真っ赤になっていたが、それでもバスターが妖精のようだとたとえた彼女の可憐な美しさが霞むことはなかった。そんな愛しいレアナを、バスターは先刻と変わらずに微笑んで見つめていた。
「いまのお前も……まばゆいほどだぜ?」
 さらなるバスターの賞賛の言葉に、レアナはこれ以上ないほど真っ赤になりながらも、どこか嬉しそうであると同時に懐かしそうにつぶやいた。
「バスターったら……。でも、あたしが子供の頃から変わっていないのなら、バスターも……子供の頃から頼もしいおにいちゃんのままだね……」
 レアナのつぶやきを耳にしたバスターは不意にレアナの体をぐいっと抱き寄せ、顔を近づけて彼女を魅惑するような笑みを浮かべて問いかけた。
「俺はまだ、お前にとっては『おにいちゃん』のままなのか? レアナ……俺の愛しい妻……」
 バスターが口にした「妻」という単語に、レアナは真っ赤な顔のまま反応し、小さく首を振って答えた。
「え、えっと……ううん……。バスターはいまはあたしの大切な人……愛しい……夫だよ……」
 レアナが恥ずかしそうに口ごもりながらも「夫」という単語を口にしたことに、バスターは満足げな笑みを浮かべた。
「よく出来ました……。そうさ……。俺達はいまや……堂々と愛し合える夫と妻なんだからな。レアナ……何よりもいとおしい俺の妻……」
 バスターの愛しげな言葉にレアナが赤い顔を上げると、その顔には自然と微笑みが浮かんでいた。
「バスター……バスターがあたしのことをやさしくそう呼んでくれるたびに……あたし、たまらなくうれしくなるの……」
 レアナはそのままバスターと見つめ合っていたが、急に何かを思いついたような顔になり、パチンと音を立てて両手を合わせた。
「あ! そうだ! グリーンプラントには新婚旅行で行こうよ!」
 思いもかけなかったレアナの言葉にバスターは面食らったが、頭をかきながら、やれやれといった口調でこぼした。
「おいおい……。新婚って……ガイにからかわれたことを思い出しちまったじゃねえか。しかも、いきなりハネムーンの話かよ」
「え……ガイがあたしたちのこと、そんな風に言ってたの? やだ……恥ずかしい……。もうまともにガイの顔なんて……見れないじゃない……」
 また真っ赤になったレアナはうつむいてしまい、バスターはそんな彼女を放っておけずにフォローする言葉をかけた。
「別にそんなに気にすることはねえよ。あいつは単純だけどさっぱりしたいいやつなんだからさ。俺をからかったことだって、悪気なんてまったくなかったんだろうし。お前もいつも通りにしていればいいんだよ」
「う、うん……」
「それにしても……ハネムーンで俺とお前の思い出の場所か……。それもいいかもな」
 バスターの言葉を聞いたレアナは笑って顔を上げ、嬉しそうにバスターに話しかけた。
「でしょう? きっと行こうね」
「そうだな。夜はあの野原の草の上でお前と愛し合えるのも……ロマンがあるしな」
 バスターの思いがけないあからさますぎる発言に、レアナの顔はもう何度目なのかも分からないほど真っ赤になっていた。
「バ、バスター……! 草の上でって……そんな……」
「いいじゃねえか……。月の光の下で裸になって草むらに横たわるお前は……きっと、それこそ本物の妖精も裸足で逃げ出すほどの美しさだと思うぜ……?」
 レアナを抱き寄せたバスターが、彼女を誘うような笑みを浮かべてそう言うと、レアナは真っ赤な顔のまま、しどろもどろになっていた。
「そ、そんな……! ハネムーンでバスターと愛し合えるのは……うれしいことだけど……で、でも……そ、外で、は、裸になってだなんて……あたし……」
 それきり、赤い顔のままでうつむいてしまったレアナの頭を撫でながら、バスターは声を出して笑った。
「ハハハッ、冗談だよ。真に受けるなって」
「バスター! もう……!」
「悪かったって。けど、ハネムーンもいいけどその前に、まだ地球に居座っているだろうあの敵どもを……片付けないといけねえけどな」
 打って変わったバスターの真面目な言葉に、レアナはしょんぼりとなり、肩を落とした。
「やっぱり……戦わなきゃいけないのかな……」
「覚悟はしておいたほうがいいだろうな。おい……そんな泣きそうな顔をするなよ……。なにもお前だけで戦うわけじゃねえんだ……。俺もガイもいるし、艦長とクリエイタだって、このTETRAから援護してくれるんだからな。だからもう……そんな顔するなよ……」
 レアナはゆっくりと顔を上げると、バスターの言葉に素直にうなづいた。
「うん……。みんながいてくれるんだよね……」
「そうさ……。特に俺は……いつだって、お前と一緒だ。いまだって……な」
 そう言うとバスターは不敵に笑い、レアナの腕をつかむと、あっという間に彼女を寝台に組み敷いていた。
「バ、バスター……!」
「レアナ……まだまだ夜は長いんだぜ? 俺はもっと……お前を愛したいんだ……」
 バスターの大胆不敵な言葉に、レアナはまたも赤面したが、大きく深呼吸すると、片手を伸ばして自分の裸の体に覆い被さるバスターの頬に愛しげにさわった。
「うん……いいよ……。また、いっぱい愛して……。さっきみたいに……ううん、さっきよりも、もっともっと……あたしのなにもかもを……愛し尽くして……」
 愛する男性であるバスターと愛し合う快楽をその身の奥底にまで刻みつけられた成熟した「女」の顔で切なげに懇願するレアナの様に、バスターの理性は早くも消し飛びかけていた。かろうじて理性を保ったバスターはレアナの顔のすぐそばまで顔を近づけて、愛の言葉をレアナにささやいた。
「レアナ……愛している……。この世界の何よりも……」
「バスター……あたしも……。バスターになら……どんなに激しく愛されてもかまわないくらい……バスターのことが……大好きだから……」
「レアナ……!」
 バスターの激しいまでの愛を求めて請うレアナの姿に、あやうい均衡で保たれていたバスターの理性は完全に消し飛んでいた。自身の意識が最高潮なまでに高ぶったまま、バスターはレアナの唇を奪っていた。たとえようもないほど熱く深いくちづけを皮切りに、バスターとレアナは再び熱く激しく愛し合っていた。身も心もひたむきに愛し合う二人を止められるものなど、この世界のどこにも存在していなかった。



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