[愛しき魂 ―その体に宿る熱―]



 格納庫から自分の自室へと戻ってきたバスターは、パイロットスーツを脱いでシャワーを浴び、一日の疲れと汗を洗い流した。パジャマを着てシャワールームから出てくると、ベッドの上で静かに横になっているレアナの姿があった。バスターと一緒に格納庫から戻ってきたときにはベッドの上に座っていたのだが、一日の疲れが出て眠ってしまったようだった。
 バスターはそんなレアナを起こさないようにそっと自分もベッドに潜り込むと、レアナの額にそっと口づけした。この愛しき魂が自分のすぐそばにいる幸いを確かめるかのように。
 はだけていたブランケットをレアナの体にかけ直し、点きっぱなしだったベッド脇のライトを消そうとしたとき、かすかな声がバスターの名前を呼んだ。
「……バスター?」
 その声に、バスターがレアナのほうを見ると、レアナは目を開け、ごしごしとその目をこすっていた。
「悪りぃ、起こしちまったな」
「……ううん、そんなの別にいいよ」
 そう言うと、レアナはバスターに体を寄せてきた。元々一人用のシングルベッドを二人で使っているのだから、必然的に身を寄せて眠ることになるのだが、レアナはそれ以上にバスターの体にくっついてきた。
「……あったかい」
 バスターの胸に顔を寄せると、レアナはどこか嬉しそうに、そして幸せそうに呟いた。
「今、シャワーを浴びてきたばかりだしな。お前は寒い格納庫にこんな格好でいたんだから、体が冷えてても当たり前だろうな」
 バスターはそう返すと、自分に身を寄せるレアナの体を抱きしめた。そして、まるでそれが自然な動作であるかのように、レアナの唇に唇を重ねていた。レアナの愛らしい唇は熱く、それがレアナの魂の熱さであるかのようだった。
 長い間そうして唇を重ね、息を交わし合った後、バスターがレアナの唇を解放すると、レアナは頬を朱に染めていた。
「もう……バスターったら、いつも突然なんだから……」
「今頃分かったのか?」
 バスターは笑ってそう答えると、再びレアナの唇を奪った。唇の間から舌をレアナの口内に侵入させた、先ほどよりも深い口づけだった。そうやってレアナと舌を絡ませあいながら、バスターは片手でレアナのパジャマのボタンを次々と外していた。ボタンをすっかり外すとパジャマを強引に脱がせ、そのままベッドの下に投げ落とした。
 レアナの豊満な乳房が露わになると、今度はその乳房の先端を口の中に収め、舌先でピンク色の乳首を転がした。もう片方の乳房も掌中に収め、指先でその先端をもてあそびながら強く揉みしだいていた。
「あ……ん……バスター……!」
 バスターの強引な愛し方にレアナは声をあげたが抵抗はせず、自分の乳房を舌と指で愛撫するバスターの頭を両手で抱きしめ、赤い髪にくしゃくしゃに指を絡ませた。
 バスターはレアナの乳房を愛撫していた片手を離すと、自分のパジャマのボタンを器用に外して脱ぎ捨て、さっさとズボンも下ろしていた。それらをさっきのようにベッドの下へ投げ落とすと、今度はレアナのパジャマのズボンも下着ごと脱がせていた。
 レアナのズボンと下着をベッドの下に投げ捨て、生まれたままの姿となった二人は、なおも強く愛し合っていた。バスターは乳房に幾つもの口づけを落とし、その痕が赤い花となってレアナの白い胸に咲き乱れた。
「バスター……はあっ……」
 乳房への愛撫だけでレアナは既に息も途切れ途切れになっていたが、バスターは片手の指をレアナの蜜口に差し込んだ。
「あん……バスター……!」
 蜜口は溢れ出た蜜ですっかり濡れており、蜜口を愛撫するバスターの指先には蜜が絡まっていた。レアナがそうであるように、バスター自身も限界に達しており、指先を蜜口から抜き出すと、レアナの両足を広げ、指の代わりのようにいきり立った己自身を蜜口にあてがった。
「レアナ……いいな?」
 レアナはぜいぜいと荒い息を漏らしていたが、バスターのほうへすうっと手を伸ばしてきた。バスターがその手を握ると、レアナはこくりと頷いた。
「うん……だいじょうぶ……バスター……おねがい……」
 その言葉でバスターの理性はかき消え、荒々しくレアナの中に踏み込んだ。片方の手でレアナの手を握り、もう片方の手でレアナの腰を掴んで、バスターはレアナをひたすら愛し続けた。何よりも愛しいその名を呼びながら。
「レアナ……レアナ……!」
 バスターが激しく体を動かすたびに、レアナの形の良い豊かな乳房も大きく揺れた。そのあられもない様はバスターにはたまらなく刺激的な更なる媚薬だった。そんなバスターに幾度となく攻められ、愛されながら、レアナもまたバスターの名前を呼び続けていた。差し伸べられた彼の片手に指を絡めて握りしめて。
「バスター……ああ……ん!……バスター……!」
 どれほどの時間が経った頃か、バスターの額には汗の粒が浮かび、レアナの体も熱を帯びてすっかり紅潮していた。たとえようもない快楽の真っ只中で、二人は互いを求める愛欲に溺れていたが、ひときわ大きな快楽の波に襲われた瞬間、バスターは熱くたぎった己の精を、レアナの中に勢いよくほとばしらせた。
「う!……くう!」
「ああ……ああん!」
 レアナの体は自分の中に放たれたバスターの熱く白い精を、その胎の奥深くにしっかりと受け止めた。同時に二人は身も心も絶頂に達し、そして果てた。バスターは何度か大きく息を吐き、レアナの中から鎮まった己自身を引き抜くと、仰向けのレアナの上に倒れ込んだ。
「はあ……はあ……」
 バスターはなおも大きく息を吐き、乱れた呼吸を整えようとした。レアナもまた、同じように満足に息も出来ない状態だったが、やがて、二人の呼吸が静かに収まると、室内を静寂が支配した。
 レアナは自分の体に覆い被さったバスターの背中に腕を回し、ひしと抱きついた。バスターもまた、そんなレアナをしっかりと抱きしめた。
「今夜はちょっと……やりすぎたかな……?」
 バスターがそう呟くと、レアナは彼に抱きついたまま、くすっと笑った。
「そうだね……でも……バスターにこうして愛してもらえるのは……すごくうれしいことだから……あたしは全然、平気だよ……?」
「俺もだ……お前をこうやって愛せる以上の幸せなんて、この世にはねえよ……」
 バスターはそう言って、レアナの唇を塞いだ。レアナの唇は愛し合う前よりも熱く、甘く感じられた。バスターがいったん唇を離すと、レアナは潤んだ瞳でバスターを見つめた。
「ねえ……バスター……」
「ん……? なんだ?」
「今、この時間は……夢なんかじゃなかったでしょう? バスターはあたしの全部を……ちゃんと感じてくれたでしょう……?」
 レアナの言葉は、格納庫でバスターが口にした不吉な冗談を否定してくれと懇願しているようだった。そんなレアナがよりいっそう愛しく、バスターは彼女を抱く腕に力を込めた。
「ああ……もちろんだとも……お前の全てをこの体で感じたさ……」
「よかった……あたしも……バスターの全部を……感じたよ……大好き……バスター……」
 その言葉に、バスターの中のレアナへの愛しさはますます膨れ上がった。こんなにも人を愛せる幸福が夢などではなく現実であることが、バスターには奇跡のように感じられた。
「愛してる……レアナ……」
 レアナの顔を真正面から見つめてそうささやくと、バスターはもう一度、唇を重ねた。二人は裸のまま抱き合いながら、何度も何度も唇を重ね合い続けた。バスターとレアナ、二人の間に生まれた互いを求める愛の存在を、もう一度、確かめ合うかのように。

 バスターの腕の中でレアナはすやすやと寝息を立てていた。先刻まであんなにも激しくバスターと求め合い、愛し合った後だとはにわかには信じられないほど、その寝顔は穏やかだった。二人とも何も身にまとっておらず、ただブランケットを被っているだけだったが、それで充分だった。
 レアナの寝顔を見つめながら、バスターもまた、ゆっくりと眠りに就き始めていた。腕の中のレアナの――この世でいちばん大切な魂の体温を、全身の素肌で直に感じながら――。



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