[心と体、震わせる感情 ―その名は愛―]



 裸のレアナを抱きしめたまま、バスターはベッドに突っ伏した。必然的にレアナの体はバスターの体の下になり、バスターの体重がレアナの華奢な体にのしかかった。
「あ……」
 小さく声をあげるレアナの体を捕らえたまま、バスターはレアナの細い首筋に口づけを落とした。
「あ……ん……バスター……」
 レアナの甘い声はバスターの感情を更に強く動かし、バスターはそのままレアナの胸元に口づけを次々と落としていった。そのたびにレアナは声をあげ、その声はこのうえなく甘かった。
「レアナ……」
 バスターは顔を上げてささやくようにレアナの名前を呼ぶと、間髪入れず、彼女の唇を奪った。レアナの全てを奪わんとするかのような強い口づけに、レアナの息は止まりかけたほどだった。
「ん……」
 レアナの唇を貪りながら、バスターは片手を滑らせて彼女の背中を撫で、もう片方のバスターの大きな男の手でもその掌に収まりきらないほどのレアナの豊かな乳房を掴み、先端の乳首を指先で軽く突いた。
「レアナ……」
 レアナの唇を解放し、その名前をもう一度ささやくと、バスターはレアナの乳房を弄びながら、もう片方の乳房に唇で触れた。
「バスター……あ……ああ……ん……!」
 バスターの唇と指による絶え間ない愛撫がもたらす感覚に耐えきれず、レアナは声をあげ続けたが、バスターは構わずレアナの白い乳房に唇で赤い花を幾つも咲かせると、愛らしい乳首をチュッと口内に収めて舌先で突き、長い指で彼女のもう片方の豊満で柔らかな乳房を愛する行為もやめなかった。
「バスター……だめ……あたし……もう……」
 レアナの白い肌はいつの間にか紅潮し、ほんのりとピンク色に染まっていた。ほのかな星々の明かりの下で、その様がたまらず、バスターはもう一度、半ば衝動的にレアナの唇を奪っていた。長い間、レアナと呼吸を交わし合い、ようやくバスターがレアナの唇から顔を離すと、レアナは閉じていた瞼を開け、潤んだ瞳でバスターを見つめた。
「バスター……もう……どうしちゃったの……?」
 いつも以上に激しく自分を愛するバスターの頭に手を伸ばし、赤い髪を撫でながら、レアナはなんとか声を出した。自分の髪を撫でるレアナの手を捕らえると、バスターは瞳を閉じてその手の甲にそっと唇で触れた。まるでレアナの言葉に無言で応えるかのように。そして紫色の瞳を開けると、まっすぐにレアナの青い瞳を見つめた。
「お前が俺を誘惑するからだろう?」
 バスターが小さく笑ってそう答えると、レアナの頬はさあっと赤く染まった。
「やだ……あたし、なにもしてないよ……?」
 レアナが小さな声でそう呟くと、バスターはくくっと笑ってレアナの裸身を抱きしめ、唇が重なる寸前まで自分の顔をレアナの顔に近づけた。
「好きな女にこんな格好で抱きつかれて、なんとも思わない男がいると思ってるのか?」
 バスターが笑って返答すると、レアナの顔は更に赤くなり、目の前のバスターから顔を逸らした。
「だ、だって……バスターだから……バスターはいつだって、あたしを全部うけとめてくれるから……」
「そうか? そいつは嬉しい言葉だけど……お前は無防備すぎるんだよ」
 そう言うと、バスターはレアナの顔を両手で包み込み、自分のほうを向かせた。レアナの顔はすっかり真っ赤になっており、潤んだままの瞳で困ったようにバスターを見つめた。
「だって……」
「だって?」
「……いいの。バスターになら何をされてもかまわないから……さっきは……ちょっとおどろいちゃっただけ……」
 レアナの言葉を聞いたバスターは、レアナの耳元に唇を近づけた。
「……嬉しいこと言ってくれるじゃねえか」
 レアナの耳元で笑ってささやくと、バスターは顔を上げ、レアナの額に汗で張り付いた髪の毛を指で除けると、印をつけるかのように額の真ん中に軽く口づけを落とした。それから顔を上げると、笑顔のままレアナを見つめ返した。
「お前は……」
「……え?」
「お前は……俺とは全然違って、誰にでも下心なんてない博愛を平等に分け与えられる心の持ち主だけど……こんな『女』としての魅力を放って、俺を一人の男として愛してくれているお前の姿を知っているのは……この世界で俺だけなんだよなって……そう思うと、お前のことが愛しくて……そう、たまらないんだ……」
 バスターはそこまで言うと、瞼を閉じ、レアナの唇を自身の唇でもう一度、けれどそっと優しく塞いだ。レアナもまた、瞳を閉じ、バスターの優しい口づけを受け入れた。
「ん……はあっ……」
 バスターがゆっくりと唇を離すと、レアナはまた甘い声をあげ、閉じていた瞳を開いた。そのまますぐそばのバスターの顔を見つめると、どこか恥ずかしげではあったが、嬉しそうに言葉を続けた。
「バスターってば……あたし、バスターのことが誰よりもいちばん大好きだもの……こんな裸のままでこんなふうにされても……一緒にいるのはバスターだって思うと、すごくうれしくて……自分でも自分がよくわからなくなっちゃうの……」
 レアナの言葉を聞いたバスターは、心の底から熱い想いが沸き上がってくるのを感じた。それは、レアナを純粋に愛する想いにほかならなかった。バスターはレアナの体を強く抱きしめると、間近のレアナの顔をまっすぐに見つめてささやいた。
「……俺もだぜ。今まで数えるのも面倒なほど何人も女を抱いたけど……こんなにも熱い想いになれるのは……お前が最初で……最後だ。もし……もしも地球で何事も起こらなくて、他に女がわんさかいたとしても、俺はもう、お前以外の女をこんな風に愛せるなんて……考えられねえよ」
「バスター……!」
 レアナは心から嬉しそうな声をあげ、自分を抱きしめるバスターの体に抱きつき返した。そんなレアナを抱く腕により一層の力を込め、けれども彼女の全てを慈しみつつ、バスターは呟いた。
「レアナ……お前と出会えて……俺は本当に幸福だ……そうさ、いま、この瞬間だって……」
 バスターの愛に満ちた告白を受けて、感きわまったレアナもまた、自身の想いの丈を詰めた言葉をバスターに返した。
「あたしも幸せだよ……バスター……。きっとバスターと同じ想いなんだと思うの……バスターの心を……ううん、それだけじゃなく……バスターの何もかもを独り占めできるのはあたしだけなんだって思うと……こんな幸せなんて他にはないって思えるから……」
 バスターはレアナの体温を、レアナはバスターの体温を素肌で感じながら、二人は熱い感情に包まれていた。それはバスターとレアナがお互いを強く愛する想いであり、相手を何よりも大切に想い合うその感情は、熱愛という言葉でも足りないほど熱く、激しいものだった。
 シングルベッドの上で抱き合うバスターとレアナは、強く確かな愛を体と心の両方で感じ合い、同時に比ぶるものなどない最上の幸福が二人を包んでいた――。



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