[罪をもかき消すもの、それは愛 ―その喜びに包まれて―]



「バスター……」
「ん? なんだ?」
 抱きしめていたレアナが腕の中から自分の名前を呼んだので、バスターは彼女の顔を見た。レアナの涙は止まっていたが、目元が少し赤く腫れていた。
「その目……冷やしておかないと、明日になったらもっと酷くなるかもな。待ってろ、今、タオルを持ってくる」
 バスターが身を起こし、レアナから離れようとすると、レアナはバスターの腕を掴んでそれを制した。
「ううん、それはいいの。それよりも……」
 レアナもまた身を起こすと、バスターの顔に顔を寄せ、唇を重ねてきた。思いもしなかったレアナの積極的な行動にバスターは少なからず驚いたが、それを拒むことはなく、レアナの体を抱くと、その口づけを深く受け入れた。
 やがて、レアナが唇を離すと、その顔は赤く染まっていた。しかし、バスターの胸に体をもたれかけ、彼から離れようとはしなかった。
「……どうした? 随分と積極的だな?」
 バスターが茶化すように陽気な口調でそう言うと、レアナはますます顔を赤くして、バスターの胸に顔をうずめた。
「だって……」
「だって?」
「……このままでいてほしいの。バスターとほんの少しでも長く一緒にいたいの……おねがい……」
 その言葉とレアナの様子は、あまりにもいとおしくバスターには映った。バスターは無言でレアナを抱きしめ直すと、そのまま彼女をベッドに横たわらせた。
 レアナを仰向けに横たわらせると、まるでそれが自然な成り行きであるかのように、バスターはレアナのパジャマのボタンを外していた。レアナが身に着けていたものはパジャマの上だけだったので、ボタンを全て外すと、レアナの白い裸体は必然的に露わになった。バスターだけが全てを知るその裸体の豊かな乳房は形良く、腰はくびれ、細い足が伸びていた。
 レアナが着ていたパジャマをベッドの脇に放り投げると、バスターは自身も履いていたパジャマのズボンを脱ぎ、同じようにベッドの脇に投げた。二人は数刻前と同じように、一糸まとわぬ姿で向かい合っていた。
「レアナ……」
 バスターはレアナの名前を呼ぶと、赤い目元に口づけを落とした。その腫れを少しでも引かせるかのように。目元から唇を離すと、バスターはレアナの唇を塞ぎ、もう一度、深い、更に深い口づけをもたらした。
「ん……」
 レアナはほんの少し声を漏らしたが、バスターのそれらの行為に抗おうとはしなかった。むしろ、バスターの背中に腕を回し、彼の愛の行為を自ら進んで受け入れていた。
 バスターが唇をそのままレアナの細い首筋に這わせると、レアナは更に声を漏らし、バスターの背中に回した手に力が入るのがバスターにも分かった。バスターは首筋から胸元へと唇を這わせ、豊満な乳房の片方の先端をちゅっと口の中に含み、もう片方の先端を指先で弄ぶと、レアナは甘い声をあげた。
「あ……ん。バス……ター……」
 乳房を唇と指先で愛し尽くした後、バスターは唇をレアナの下半身へと這わせた。くびれた腰を越え、バスター以外の誰も知らないレアナの最も奥めいた場所に近づくと、バスターは優しくレアナの足を開き、奥めいた蜜口に舌先を挿入した。
「あ……あん……バスター……!」
 バスターに蜜口を舌先で愛撫されることでもたらされる快感に、レアナの全身はしびれていた。レアナがあげる歓喜の声が、部屋の中に響いていた。
 バスターがようやく蜜口から顔を離すと、シーツをぐっしょりと濡らすほど蜜があふれ出ていた。バスターの男性としての証である部分もたぎりきっており、もはや我慢出来ない状態になっていたバスターは、レアナに一言だけ声をかけた。
「行くぞ……いいな?」
 レアナの言葉を待たず、バスターは一気にレアナの中に入り込んだ。蜜で濡れそぼったレアナの蜜口は、難なく猛りきったバスターの己自身を受け入れた。バスターはレアナの体を抱き、ひたすら自分の体を動かして彼女を愛し続けた。この世でいちばん愛しい名前を呼びながら。
「レアナ……レアナ……!」
 バスターに激しく愛されながら、レアナもバスターの体に必死にしがみつき、彼の名前を呼んでいた。バスターにとってレアナがそうであるように、レアナにとって誰よりも愛しい名前を呼び続けて。
「バスター……バスター……!」
 長い時間が経ち、快楽の果てに絶頂に達したバスターは己の全てをレアナの中に解き放った。バスターの熱い精のほとばしりを受けて、レアナもまた、一瞬だけ遅れて絶頂に達していた。
「くう!……レアナ……!」
「バス……ター……!」
 二人はお互いの体を抱きしめ合い、バスターの背中にはレアナの指の形がくっきりと残るほどだった。絶頂の波が去り、体から力が抜けても、二人は抱き合い、一つになったままだった。
「ふう……」
 乱れていた呼吸が落ち着くと、バスターは短く息をつき、レアナの体から己自身を引き離した。そして、改めてレアナの体を抱きしめ直した。
「レアナ……」
 バスターがレアナの淡い色の髪の毛を撫でながら名前を呼ぶと、ずっと目をつぶっていたレアナはゆっくりと目を開けた。青い瞳でバスターの顔を見ると、すっと顔を近づけ、触れるか触れないかの軽い口づけを交わした。
「バスター……あたし……バスターとこうしていられて……本当に幸せだよ……」
「俺もだ……こんな幸せでいいのかってくらいだぜ……?」
「あたし……バスターと一緒なら……どうなってもいいよ……ん……」
 レアナがついさっきそうしたように、バスターはレアナの唇を塞いだ。違ったのは、その口づけの深さだった。舌を絡み合わせ、息を交わし合った後、レアナの唇を解放すると、バスターは笑って答えた。
「俺はいつだってお前と一緒だ。絶対に離したりしない。絶対に……な」
「バスター……!」
 レアナは嬉しさに満ちた声でバスターの名前を呼び、彼の体に固く抱きついた。バスターもまた、レアナをしっかりと抱きしめていた。お互いを決して離すまいという強い意志の表れのように。

「冷たくて気持ちいい……」
 バスターの左腕を枕にして仰向けになったレアナの目には、濡らしたタオルが置かれていた。
「だろ? ちゃんと冷やしておかないと、腫れが酷くなるだけなんだからな」
「うん……でも……」
「でも?」
「バスターのことが見えないのは……ちょっとさびしいかな……」
 甘える子供のようなレアナの言葉に、バスターは口元に笑いを浮かべながらも、右手でレアナの右手をしっかりと握った。
「ほら、俺はここにいるだろう? だから……安心しろよ」
「うん……!」
 レアナも自分の右手を握るバスターの右手を握り返した。指を絡め、何があってもこの人の手を離さないとでも言うかのように。シングルベッドの上で、バスターとレアナはお互いが共にある幸福に包まれていた。



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