[その瞳に映る想い ―結ばれる魂―]



 ひとしきり抱き合った後、バスターはもう一度、レアナに口づけた。
「ん……」
 レアナは少しだけくぐもった声を出したが、バスターの行為を拒むようなことはせず、彼に唇を奪われるがままになっていた。
 やがてレアナの唇を解放すると、バスターは慣れた手つきでレアナのパジャマのボタンを外していった。パジャマの胸のボタンが外れると、パジャマの中に押し込められていたレアナの豊かな乳房が弾けるように露わになった。その一瞬を逃さず、バスターはレアナの胸元に顔を近づけると、残りのボタンを外しながら乳房の先端を口に含んでいた。
「あ……ん……」
 レアナは耐え切れず声を漏らし、バスターの赤い髪を撫でるように両手で抱え込んだ。レアナの乳房を味わいつつ、バスターはレアナのパジャマの上衣を脱がすと、いったん乳房を解放した。そして残っていたレアナのパジャマのズボンも下着ごとさっさと足から下ろし、レアナを生まれたままの姿にした。
「もう……バスターってば……」
 バスターとの愛の営みはもはや毎夜のこととはいえ、それでもレアナは胸元を手で隠し、両足を固く閉じて恥じらいを見せた。最初の夜から変わらないその初々しい様子がバスターにはたまらず、レアナの体を抱きしめると、また彼女の唇を奪っていた。
「……いいだろう? 俺だって同じだ」
 そう言うとバスターは自分が履いていたパジャマのズボンを下ろし、レアナ同様に何も身に着けていない姿となった。そのままレアナの体に覆い被さると、バスターは再度、レアナの無防備な乳房を口に含み、敏感な乳首を舌先で転がした。
「あん……バスター……」
 もう片方の乳房を片手で掴むと、鍛えられた男性であるバスターの手のひらにも収まりきらない豊満な乳房は潰れるように手の内からはみ出た。それでもその白く柔らかな乳房を揉む感触はバスターには途方もなく心地よかった。
「お前の体はどこもかしこも柔らかいな……けど、そこがいいんだけどな」
 バスターが悪戯っぽく笑ってそう言うと、レアナは潤んだ瞳で顔を赤らめた。そんなレアナの様子はバスターにはどうしようもなく愛おしかった。
「こっちも……ほら、もう濡れきってるぜ?」
 バスターがレアナの固く閉じられた両足の間に右手を差し入れ、指先で蜜口を探ると、そこはもう熱を持ち、大量の蜜を漏らしていた。
 バスターの男性としての分身も既に猛りきっていたし、レアナの体もそれを充分に受け入れられる状態になっていれば、いつもならすぐにでも男の本能のままにレアナの体を貫こうとするのだが、バスターは不意に、先ほどのレアナとのやり取りを思い出していた。
 レアナはどんな辛い目に遭ってもそれを不幸とは思わず、それゆえに無垢で無邪気な魂を持ち続けていた。無垢なのはその体も同じで、バスターと結ばれることで初めてレアナは女の喜びを知った。だが、いくら彼女を心の底から愛しているとはいえ、男女のことをほとんど知らなかったレアナをそうやって抱いたことに、バスターは少なからぬ罪悪感を今更ながら感じていた。
 黙ったまま自分の体の下のレアナを見つめるバスターの様子にレアナも気づき、不思議そうにバスターに尋ねてきた。
「バスター……? どうしたの……?」
 レアナの問いかけにバスターはすぐには答えず、彼女の赤みを帯びた頬を手を伸ばして撫でると、神妙な顔で口を開いた。
「……お前とこうなったこと……よく考えなくても、俺はお前の純潔を奪っちまったんだな」
「……じゅんけつ?……それって……えっと……」
 戸惑うレアナに、バスターは噛み砕くようにその意味を教えた。
「お前は俺以外の男とこんなことしたことなかっただろう? それは体が穢れてないってことだったんだ。それが純潔さ。だけど……俺はお前がこういうことをよく知らないのをいいことに……我慢しきれずにお前を抱いちまった……」
「え……えっと……」
 バスターの言葉の意味をようやく理解したレアナは戸惑いながらも、更に顔を赤くしていた。赤みを増した頬は熱くなり、その熱さを手のひらで感じながらバスターは言葉を続けた。
「……今も我慢出来なくて、夜毎にお前をこうして抱いているけど……悪かったな。もしかしたら、嫌なときも……なかったか?」
 バスターが謝罪の言葉を口にすると、戸惑っていたレアナははっとしたような表情になった。次の瞬間、レアナは身を起こすと、バスターの首根っこに両腕を回し、抱きついていた。
「!?……レアナ……?」
 バスターはまるで先刻のレアナのように戸惑ったが、レアナは構わず抱きつき、バスターの体に自分の体を密着させていた。バスターが舌と指で愛したレアナの柔らかな乳房は、バスターのたくましい胸板に押しつけられていた。
「……イヤなことなんてあるわけないじゃない。バスターと……大好きな人とこんな風に一緒にいられるのに、どうしてそれをイヤがる必要があるの?」
「レアナ……」
「それに……あたしの体を穢したなんてバスターは言うけど……こうなることが穢れるっていうことだって言うのなら、あたしはいくらだって穢れてもかまわないよ……純潔がどれだけ大切なものでも……あたしにはバスターと……この世でいちばん大切な人と……なにもかも一つになれることのほうが……ずっと大事だもん……」
 そこまで言うとレアナは少しだけ身を離し、バスターの顔を真正面から見つめた。レアナは寂しそうな、そして泣きそうな顔をしていた。
 そんなレアナの表情に、バスターは自分が彼女を不用意に悲しませてしまったことを悟り、レアナの体をきつく抱きしめた。
「悪い……俺、今まで出会った女とは遊びの関係ばかりで、本当に好きな女とこんな深い仲になったことってなかったから……お前の気持ちもよく分かってなかった。俺もお前をこうして抱けることも……一つになれることも……何よりも嬉しいよ」
「バスター……よかった……」
「ごめんな、つまらない理由でお前を不安にさせちまって」
「ううん、いいよ……もういいよ……」
「じゃあ……これから、いつものように続けても……いいか?」
 バスターがレアナに念を押すと、レアナはまた少し顔を赤らめながらも、口元に笑みを浮かべて頷いた。両の青い瞳には、バスターへの一途な愛が溢れていた。
「うん……いいよ……来て……バスター……」
 バスターは返答する代わりにレアナの額に軽く口づけると、彼女の足を優しく開き、なだらかな腰に片手を添え、もう片方の手で一回り小さな手を握ると、蜜がしたたる熱いレアナの中に一気に入り込んだ。バスターがレアナの最奥へと達し、二人が奥底まで繋がった瞬間、バスターとレアナの頭からつま先まで、全身を愛欲の絶頂が襲った。
「ああ……! バスター……!」
「レアナ……!」
 お互いの名前を呼びながら、二人は大きな快楽の波に飲み込まれていた。バスターは荒々しく体を動かしてレアナを求め、レアナもそんなバスターの激しい全てをその身に受け止めていた。甘い声と体が繋がる艶めいた水音が絶え間なく室内に響く中、無我夢中で一つになりながら、バスターはレアナと愛し合える幸福を感じていたし、それはレアナも同様だった。
 この世で何よりも愛しい存在と身も心も結ばれる喜びを、バスターとレアナ、愛し合う二つの魂は分かち合っていた――。



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