[ほのめいた月の光の中で]



「う……うう!」
「あ……ああん!」
 バスターとレアナの体がピンと張って強ばり、共に絶頂を迎えると、バスターの精がレアナの中に放たれた。次の瞬間、緊張した二人の体から一気に力が抜け、バスターはレアナの中から静まった己自身を引き抜くと、仰向けのレアナの横にドスンと音を立てて横たわった。
「はあっ……はあっ……」
 バスターもレアナも汗だくになり、大きく息を続けた。ようやく体のほてりが収まった頃、レアナはふとベッドの頭側に据え付けられている窓から入り込むかすかな光に気づいた。この窓は夜間時間はブラインドが下ろしてあるのだが、今夜はたまたまブラインドが上がったままだった。
 レアナは裸のまま身を起こして窓の外を見ると、わあと声をあげた。そんなレアナの様子に、バスターはベッドに横になったまま、彼女に尋ねた。
「どうした、レアナ」
「月が……今日はすごくきれいに見えるね」
「月?」
 バスターも上半身を起こして窓を見てみると、その窓の中央には白く光る月がぽつんと小さく浮かんでいた。TETRAは地球の衛星軌道を周回しているのだから、こんな風に月が見えることはさしてめずらしくもないのだが、今、この窓から見える月はことのほか、美しく見えた。
「きれい……」
 月に見とれるレアナの体を、起き上がったバスターは後ろから抱き込んだ。しばらくの間、レアナと一緒にバスターも月を眺めていたが、不意にすっと片手でレアナの豊満な乳房を抱え込み、細い首筋に口づけをした。
「あ……や……バスター……」
 バスターの再びの愛を求める行為に戸惑ったレアナだったが、バスターの腕の中から逃げ出そうとはしなかった。バスターの指先はレアナの乳房のピンク色の先端を弄び、首筋にはバスターの唇と舌が這い、もう一方の片手はレアナの閉じられた両足の間に入り込んで、蜜口にバスターの指が到達しようとしていた。
「ダメ……バスター……あん……」
 レアナは消え入りそうな小さな声で抵抗したが、そのささやかな抵抗はバスターには通じなかった。
「ダメ? どうしてだ?」
「だって……なんだか……お月様に見られているみたいで……はずかし……ああん……!」
「いいだろう? 見せつけてやろうぜ。それに……本当にここでやめてもいいのか?」
 バスターは少し意地悪そうな口調でこう答えたが、実際、レアナの体は既にバスターに支配されてしまっていた。バスターの指と舌による愛撫でレアナの息は荒くなっており、肌は熱情でうっすらと赤く染まって汗の粒が浮かび、乳首は固くなってツンと上を向き、蜜口からは蜜が溢れ出していた。もはや、レアナの身も、そして心も、完全にバスターのものになっていた。
「……やだ……バスター……ずるいんだから」
「男はみんな、ずるいものなんだぜ?」
 そう言った後も愛撫を続け、レアナの体がバスターを再度、受け入れる準備が出来あがると、バスターはレアナの体をそっと横たえた。淡い照明だけが灯ったほの暗い部屋の中で、ほのかな月明かりにも照らし出されたレアナの裸体を見て、バスターはごくりとつばを飲み込むと、思わず言葉をこぼした。
「レアナ……綺麗だ。あの月よりも、ずっと……」
 バスターの言葉に、レアナは顔を赤らめて両手で口を押さえたが、決して嬉しくない訳ではなかった。誰よりも愛するバスターにそう言われて、嬉しくないはずなどなかった。
「バスター……今夜は……やさしいのね」
「俺はいつだって優しいだろう? ただ……こんなお前を前にしちまうと、理性が吹っ飛んじまうけどな」
「バスターってば……」
 レアナは口を覆っていた両手を離すと、バスターのほうへと伸ばした。そうやってまるでバスターを迎えるように手を伸ばすと、レアナはかすかな声で呟いた。
「来て……バスター……」
 レアナのその言葉にバスターの理性は本当に消え失せようとしていた。もうレアナを求めることしか今のバスターには考えられなかった。
 レアナの両足をそっと広げ、露わになった蜜口にバスターが己自身をあてがうと、蜜が溢れかえった蜜口はバスターをすんなりと受け入れ、ずぶずぶとバスターの男としての分身はレアナの中に入っていった。バスターが完全にレアナの体の中心に収まると、バスターはレアナの体を抱きかかえ、レアナもまた、伸ばしていた両腕をバスターの背中に回した。
「レアナ……いいな?」
「うん……早く……あたし……もう……」
 バスターと同じくレアナも理性を失っており、発する言葉は少なめでも、普段の彼女からは考えられないほどその言動は大胆だった。バスターもレアナも二人ともが愛欲に溺れきっていたが、それを止められるものなどどこにもなかった。
 バスターが本能のままに大きく体を動かし始めると、レアナもまた、情欲に満ちた声をあげた。
「ああ……ん! バスター!……もっと……もっと……!」
 情欲に囚われているのはバスターもまた同じだった。レアナの中は信じられないほどの快楽に満ちており、体を動かすたびにバスターも声をあげていた。
「くう!……レアナ……!」
 時が数え切れないくらいに刻まれるほどの長い間、バスターとレアナはお互いを激しく求め合ったが、とうとう絶頂の時が訪れた。その波は大きく激しく、先ほどのものを遙かに超えるものだった。
「う……ああ!」
「バスター……ああ! バスター!」
 バスターの白い精がもう一度レアナの胎の奥深くに注がれ、その勢いはもちろん、灼けるような熱さもレアナをこの上ない快楽の頂点に迎えていた。
「バスター! ああ……」
「レアナ……はあっ……レアナ……」
 バスターはレアナの胎内からようやく落ち着いた己自身を引き離すと、レアナを抱いたまま、くるりと体の向きを変えて仰向けにベッドに倒れ込んだ。バスターの体の上に乗ってうつ伏せになる形となったレアナだったが、そのまま彼から離れようとはせず、広くたくましい胸に自然と顔を寄せた。
「ちょっと……今のはすごかったな」
 やっと呼吸が整ったバスターがそう言うと、レアナは彼の胸に手を置き、顔を寄せたまま呟いた。
「もう……バスターったら……」
 そんなレアナがいつも以上に愛おしく、バスターは彼女の柔らかな髪を撫でた。
「すまねえ。今夜はつい、張り切っちまったな。それも……月のせいかもしれねえな」
「……月の?……どうして?」
「月の光には人間の理性を失わせる魔力があるんだってさ。昔からそう言い伝えられているんだよ」
「そうなんだ……」
「けど、悪くはなかったよな……これからも月が見えるときは、窓は開けたままにしておくか?……お前もいつもより大胆だったしな」
 バスターの言葉にレアナは頬を朱に染め、その顔を隠すかのようにうつむいて、バスターの裸の胸によりいっそう顔を埋めた。
「もう……バスターのエッチ!」
 そうは言いながらも、レアナが本当に嫌がっている訳ではないことはバスターにも分かっていた。なだらかに美しい曲線を描くレアナの背中に手のひらを滑らせて彼女を抱きしめながら、バスターは何物にも代え難い腕の中の宝物――レアナへの強い自身の想いを改めて再確認していた。
 生まれたままの姿で寄り添い合い、愛を確かめ合う恋人達を、白く光る月は遙か遠くから静かな光を放ちつつ、見守っていた――。



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