[魂の絆]



「うっ!……くう!」
「あ……ん! バス……ター……!」
 ほの暗い部屋の中、シングルベッドの上ではバスターとレアナが今宵も愛し合っていた。仰向けのレアナをバスターが抱きかかえて共に絶頂を迎え、その絶頂も鎮まった頃、バスターがレアナから身を離そうとしたとき、レアナが不意にバスターの首根っこにしがみついてきた。
「レアナ……?」
 バスターは身を離すのを止め、レアナと繋がったまま彼女の顔を見た。バスターの目に映ったその表情はどこか曇っていた。
「どうした、レアナ」
 バスターが再びレアナの体を抱き、頭を撫でると、レアナはバスターにしがみついたまま、か細い声でささやいた。
「バスターは……」
「ん?」
「バスターは……どこにも行かないよね?」
「どうした、急に」
 バスターがもう一度、レアナの顔を見ると、レアナは今にも泣きそうな顔をしていた。
「バスターとこうしていると、あたし、本当にしあわせなの……でも……もしバスターが先にいなくなっちゃったらって思ったら……急に怖くなっちゃって……だから……」
 そこまでを言葉にすると、レアナの青く大きな瞳からは真珠のような涙の粒がぽろぽろとこぼれ出した。
「前に……バスターはあたしが死んじゃう夢を見て怖かったって言ってたよね……? あたし、今ならやっとその気持ちが本当にわかるの……あたしだって……バスターがいなくなっちゃったら……どうしていいかわからないもの……こうして……愛してもらうことも……できなくなるんだもの……」
「レアナ……」
 泣きじゃくるレアナをバスターは強く抱き寄せ、ただ静かに髪の毛を撫でていた。やがて、レアナの涙が少しだけ収まると、バスターはレアナの涙を指で拭いながら、彼女を真正面から見据えた。
「レアナ……俺は約束する。俺は絶対にお前を置いてなんかいかない」
「バスター……」
「けど……嬉しいよ。お前がそんなにも俺のことを想ってくれているんだってことが、改めて分かって」
「だって……バスターだけだもの……このTETRAに乗ってるみんなのことはもちろん大事だけど……こんな風に愛し合って一緒にいたいのは……バスターだけだもの……」
「レアナ……」
「バスター……約束を守ってね?……あたしを置いてっちゃイヤ……ん……」
 バスターがレアナの唇を唇で塞ぐと、長い間、二人はそうしてお互いの唇の感触を味わい、息を交わし合った。バスターがようやくレアナの唇を解放すると、バスターは優しく笑ってレアナを見つめた。
「俺だって、お前を失うかもしれないのは怖いよ……だから、絶対に約束を守るさ」
「バスター……」
 泣き腫らしたレアナの目は赤くなっていたが、バスターの笑顔と言葉を受け、ようやくその顔に笑みが浮かんだ。
「うん……ありがとう……ごめんね、急に泣いちゃったりして」
「気にするなよ。俺だって、お前がいなくなる夢を見たときは考えられないほど怖かったんだからな……それより……」
「?……バスター、どうしたの?……あっ……」
 自分の胎内に収まったままのバスターの男としての分身の変化に気づいたレアナが、バスターが説くよりも先に声をあげた。
「お前のことを大事に想っていたら、また復活しちまったみたいだ……いいか? レアナ?」
 バスターと繋がったままであることさえレアナは忘れていたが、バスターの男性としての本能が再びたぎったことに、ほんの少しだけ戸惑った顔を見せた。だが、笑顔を崩さないまま、バスターの問いかけに答えた。
「うん……いいよ……また……愛して……?」
 小首をかしげてそう呟くレアナの様子はバスターにとって本当に愛しく、バスターは思わずレアナと再び唇を重ねていた。唇を離すと、バスターはレアナの体を抱き直し、ニッと笑った。
「じゃあ……行くぜ?」
「うん……来て……バスター……」
 そのレアナの返答がスイッチとなり、再び二人は激しく愛し合い始めた。お互いの名前を呼び合いながら、バスターとレアナは身も心も一つになっていた。この世でいちばん大事な存在と肌を重ねて愛を確かめ合える――そんな幸福に、共に魂まで浸りながら――。



BACK

inserted by FC2 system