[ほの甘い誘い ―確かめ合う愛―]



 ベッドに座り、お互いに唇を貪るように求め合っていたバスターとレアナだったが、長い時間の後、ようやくどちらともなく唇を離した。
「バスター……」
 レアナは潤んだ瞳でバスターを見つめ、熱病に浮かされたかのような声でバスターの名を呼んだ。口づけだけで、もう身も心もバスターの虜となってしまったかのようだった。
 バスターはそんなレアナを抱きしめると、そっとベッドに横たえた。そして先にパジャマのズボンと下着を乱暴に脱いで何もまとわぬ姿になると、レアナの体に覆い被さり、彼女のパジャマのボタンを外していった。もはやそれは毎夜の習慣だったから、レアナも何も抵抗などしなかった。
 ただボタンを外すだけでも今のバスターにはもどかしい作業だったが、レアナの白く豊かな乳房が弾けるように露わになると、更に強引にパジャマを脱がし、下のズボンも下着ごと、ぐいっと引っ張って脱がせたことで、レアナもまた、一糸まとわぬ姿となった。ぼんやりと明るい部屋の中で、レアナの裸体は白く輝き、たまらなく扇情的で――美しかった。
 もう我慢出来ないというように、バスターはレアナの乳房にかぶりついた。乳房を舌で愛撫する一方で、バスターはもう片方の乳房も掌中に収めて揉みしだきながら、その先端を指先でつまんだり、つついたりして弄んでいた。
「ああん! バスター……!」
 レアナはたまらず声をあげたが、バスターは乳房を愛撫する指も舌も動きを止めなかったし、止める気など毛頭なかった。そもそもここでバスターが愛撫を止めれば、レアナが自分に責任があるのではと思いこんで落胆することは目に見えて明らかだった。そのバスターの指先と舌先の動きに釣られるように、レアナはうねるように体を動かし、声をあげ続けていた。
 片方の乳房を揉みしだきながら、バスターは胸からくびれた腰、平らな腹へと舌先を這わせていった。そして、蜜口に近づくと、まず指先をそっと挿しこんだ後、大胆に舌を挿入して中をかき回すように舌先を動かした。
「バスター! ああ……ああん!」
 バスターに乳房と蜜口を同時に弄ばれ、レアナの体は既に限界に達しようとしていた。特に蜜口への入念な愛撫がたまらず、レアナは甘い声と共に更に体をくねらせていた。
 そのレアナの声も、指で弄んでいる柔らかく豊満な乳房も、そして溢れる蜜で濡れた蜜口も、バスターには全てが媚薬だった。それ故に、レアナを愛する行為を止めようとはしなかった。
「ああ……バスター……! ああ……あ……ん!!」
 一際大きな声と共にレアナの体がびくんと強ばり、体から力ががくりと抜けた。バスターの執拗な愛撫によって昇り詰めた瞬間であり、レアナの体からは一気に力が抜けていた。
 レアナははあはあと大きく呼吸をしながら、その四肢をベッドの上に投げ出していた。レアナの胸は上下に大きく動き、目はとろんとして焦点が合っていないようだった。そんなレアナの様子を見たバスターは、自分の体も――己自身も――猛り切って限界に達していることを悟った。
「レアナ……俺も……いいな?」
 バスターのその言葉に、どこか遠くを見ているようだったレアナの瞳に光が戻り、眼前のバスターを捉えた。そして、顔を赤らめると、レアナはこくりと小さく頷いた。
「うん……バスター……来て……」
 その様がたまらず愛らしく、バスターは思わずレアナを抱きしめ、もう一度、唇を重ねていた。唇を離すと、バスターは上体も起こし、レアナの腰を両手で掴むと、勢いをつけて蜜で溢れたレアナの中に入り込んだ。
「!……バスター……!」
 入り込んできたバスターがいつも以上に衝動的だったため、レアナの顔がわずかに歪んだ。だが、バスターはもう、自分の想いを止められなかったし、それはレアナも同じだった。バスターはたぎった己自身で何度も何度もレアナを貫き、そのたびにレアナの乳房が大きく揺れ、レアナがあえぐ声とベッドがきしむ音、そして淫靡な水音が部屋の中に響いた。そんな二人の姿は確かに淫らではあったが、二人が想いの果てに全てをさらけ出して愛し合っている姿であることにも違いなかった。
「バスター……! バスター……!」
「レアナ……! レアナ……!」
 お互いの名を呼び合いながら、二人の体は溶け合うかのように結ばれていた。体だけでなく、心も一つに溶け合おうとしていた。どれくらいの時間が経ったのかも分からないほどそうして結ばれて愛し合った後、バスターが低くこらえるような声をあげた。
「う!……くうう!」
 その声と同時にバスターは己の精をレアナの胎の奥に解き放っていた。その白い奔流の熱さと勢いにレアナの体も反応し、今宵で二度目の絶頂を迎えていた。レアナの胎が大きくうねり、彼女の中のバスターにまとわりついて、絞り上げるように彼を強く愛していた。
「レアナ……! う……ああ!」
「バスター……! ああ……ん!」
 バスターもレアナも体の力がごっそりと抜けたようにふらふらになって汗だくになっていた。バスターは鎮まった己自身をレアナの中から引き抜くと、そのままレアナの体の上に倒れ込んだ。ちょうどレアナの二つの乳房の間にバスターの頭が収まる形となったため、バスターは目の前の乳房を再び手のひらに収めると、手持ち無沙汰のように軽く揉み、ピンク色の先端を指先でつついていた。
「ダメ……バスター……」
 レアナは自分の乳房をいじるバスターの手に一回り小さな手を重ね、バスターの行為をそっと止めた。バスターが顔を上げてレアナの顔を見ると、レアナはいたずらっ子を優しくなだめるように穏やかに笑っていた。だが、バスターと目が合うと、羞恥心からかレアナの顔はすっかり赤く染まっていた。
「なんだ? 今更、恥ずかしがることないだろう?」
「だって……今夜のバスター……いつもよりもすごかったんだもの……」
「そうだったか?」
「だって……あたしだけ……2回も……あんな……」
 レアナはバスターと交わって共に絶頂を迎える前に、彼の愛撫だけで自身が気を失う寸前まで昇り詰めたことを思い出し、ますます顔を赤く染めた。
「そうだな……俺はお前を愛せるだけで満足だから、ついお前の意思を考えることも頭になくて、お前に溺れてばかりだったな……悪かったよ」
 だがバスターのその言葉を聞いたレアナは、笑顔でふるふると頭を振った。
「ううん、バスターはあたしを大事に思ってくれているからこそ、今夜だけじゃなく、いつもあんなにも愛してくれているんでしょう?」
 そこまで言葉にした後、レアナは顔を赤らめたまま俯き、心なしか小声で呟いた。
「……今夜は特にすごくて、あたし、自分が自分でなくなるんじゃないかってくらい、びっくりしちゃったけど……」
 呟いた声は小さかったが、バスターにはちゃんと聞こえていたし、そのレアナの告白のせいか、バスターの頬も朱に染まっていた。そんなバスターの様子に気づいたのか、レアナは俯いていた顔をそっと上げると、微笑んでこう続けた。
「だから……バスターがあやまることなんて全然ないんだよ」
「レアナ……」
「バスター……」
 二人はしばしの間、真正面から見つめ合った。それぞれのバスターの紫色の瞳にはレアナ、レアナの青色の瞳にはバスター、お互いの目の前の愛する存在が映り込んでいた。
「けど今夜はこんなに張り切っちまったのは……お前が作ってきたシナモンジンジャーミルク……あの体を温める飲み物を飲んで、体が熱くなったからかな?」
「え、そんな……あたしのせいなの?」
 戸惑うレアナの様子がまた愛しく、バスターはレアナの頬を撫でると、優しく微笑んだ。
「冗談だよ……本当は……お前があんまり可愛いからさ」
「や!……バスター……そんな……」
「本当のことなんだから仕方ないだろう? 可愛すぎて……愛おしすぎて……どれだけ愛しても、愛し足りないぐらいだ……」
 いつもの飄々とした笑みが消え、代わりに浮かんだ真剣な表情でそう語るバスターに見つめられて、レアナはまだどこか恥ずかしげながらも、心から嬉しそうに微笑みを浮かべていた。
「バスター……あたしも……おんなじだよ」
「レアナ……」
「どんなにバスターに愛してもらっても……そのたびに……今夜だって……この時がいつまでも続けばって……そんなワガママを考えちゃうんだもの」
 レアナの言葉に、バスターはククッと笑ってレアナを見つめた。
「それはワガママなんかじゃねえよ。お前が俺を想ってくれている証拠だろう? 俺だって……お前を抱きながら、何度、朝が来なければいいって思ったことか……俺にとっちゃ……嬉しすぎるくらいの言葉だぜ」
 次の瞬間、バスターはレアナの唇をそっと奪っていた。レアナも全く抗いはせず、それどころか彼女の方からもバスターの唇を求めていた。再びお互いの唇を味わい、愛を求め合う二人の姿を、ほの暗い部屋の灯りは優しく照らし出していた。



BACK

inserted by FC2 system