[二つの命、一つの炎]



 バスターが目を覚ますと、すぐ横に眠るレアナの顔が視界に入ってきた。時計を見ると午前2時を過ぎた頃で、二人がこのベッドの上で何度も熱く交わってから、そう時間は経っていなかった。
 レアナが穏やかに眠っているのを確認すると、バスターは起き上がり、足を下ろしてベッドの端に座った。のどの渇きを覚えていたため、ベッド脇のミニテーブルに置かれているボトルを手に取り、その中のミネラルウォーターを飲んだ。そして一息ついたバスターは、背後からの声に振り向いた。
「バスター……」
 バスターがレアナの方を見ると、レアナが横になったまま、青い瞳を開いてバスターを見つめていた。
「レアナ……せっかく寝ていたのに、起こしちまったな」
「ううん、気にしないで」
 レアナは身を起こすと、バスターの横に足を組んでそっと座り、バスターの腕にすがりついて目を閉じた。
「前にもこんなこと、あったね」
「ああ……あの時は俺がタバコを吸ってたときだったな」
「寝てるときはいつもバスターとくっついてるから……バスターが起きて横からいなくなると、さびしくて起きちゃうのかな」
「そうか……じゃあ、こうすればどうだ?」
 バスターは笑ってそう言うと、レアナの体を両腕で抱え上げ、自分の鍛えられた硬い膝の上に彼女を載せた。バスターはパジャマのズボンしか履いておらず、上半身は裸のままだったので、レアナは必然的にバスターの裸の胸に顔を寄せる姿となった。だが、レアナは嫌な顔などはまるでせず、むしろ嬉しそうにバスターの胸に身を寄せた。
「バスターったら……」
「でも、嫌じゃないだろう?」
「……うん。それに……」
「それに?」
「全然、さびしくないよ……」
 自分の胸に体を寄せるレアナを、バスターもまた、愛おしそうに抱きしめた。レアナはバスターのパジャマの上を羽織っていたが、そのパジャマ越しに、バスターはレアナの体温を感じていた。愛しい者が自分の腕の中にいて、その温もりを感じられる幸福を、バスターは全身で味わっていた。
「バスター……」
 レアナの声にバスターが顔を上げて目を開くと、レアナが潤んだ瞳でバスターを見つめていた。その様はたまらなく魅力的で、バスターは自然とレアナの唇に唇を重ねていた。
「ん……」
 塞がれたレアナの小さな唇からわずかに声が漏れたが、バスターは構わず彼女の唇を吐息と共に貪った。ようやくバスターが満足して唇を離すと、レアナは赤い顔をしていた。
「バスターってば……」
 レアナはそう言いながらも、バスターから体を離そうとはしなかった。そんなレアナの様子がますます愛おしく、バスターはレアナの頬に手のひらで触り、微笑んだ。
「お前があんまり……可愛いからだよ」
「え……そ、そんな、えっと……」
 バスターの直球の嘘偽りない言葉に、レアナはますます顔を赤らめ、バスターはそんなレアナを愛おしむように見下ろしていた。レアナはパジャマを羽織ってはいるものの、ボタンをちゃんとかけていた訳ではなかったので、バスターからは豊かな胸元がはだけて見えていた。
 バスターは片手をレアナの胸元へ伸ばすと、パジャマのボタンを一つ、そっと外した。ボタンが外れたことで、レアナの胸はもうほとんど露わになっているも同じとなった。バスターの行動に、レアナは顔を赤くしたまま、まごまごとうろたえた。
「え、あ、あの、バスター……なに……するの?」
「こうしたいんだよ」
 バスターはそう言ってもう一つ、レアナの胸のボタンを外した。レアナの胸はパジャマから完全にはみだし、乳房の先端のピンク色の愛らしい乳首がツンと上を向いて飛び出した。その乳首を咥えるように、バスターはレアナの乳房にかぶりついた。
「あ……ん。バスター……!」
 レアナは甘い声を漏らしながら、自分の乳房を唇と舌で愛撫するバスターの頭を両手で抱え込んだ。バスターはレアナの乳房を愛撫しながら、器用に彼女のパジャマのボタンを全て外していった。バスターが顔を上げると、レアナはもはや何も身に着けていないのと同然で、白い裸体をバスターの前に晒していた。
「レアナ……」
 バスターはもう一度、レアナと唇を重ねると、膝の上の彼女の体を抱き上げ、ベッドの上に横たわらせた。薄暗い部屋の中で、レアナの白い体はほんのりと朱に染まって輝いており、その様はバスターのレアナを求める想いに更に火を点けた。
「レアナ……綺麗だ……」
 バスターは唯一身に着けていたパジャマのズボンを脱ぎ捨てると、レアナを求めて小柄な彼女の体の上に覆い被さった。バスターがレアナの髪に長い指を絡め、顔を近づけると、レアナは小さな声で呟いた。
「バスターだけ……だから……」
「え?」
「あたしのこと、こんな風にしていいのはバスターだけだよ……だから……なにをしてもいいけど……でも……ほんの少しでいいから……やさしく……して……おねがい……」
 そう訴えるレアナの表情は悩ましく、バスターはわずかに残っていた理性を失いそうになった。だが、かろうじて自身の興奮を抑えると紫色の瞳でレアナを見つめ、優しく笑って答えた。
「ああ……分かってるさ」
 二人がそのまま今夜で何度目かも分からない口づけを交わすと、バスターは指先と唇でレアナの裸体を丹念に愛撫していった。レアナは片手でバスターの片手と繋がり、もう片方の手でシーツをぐしゃぐしゃに掴んで、バスターの激しい、けれども優しい愛撫に身を任せていた。
「バスター……! バスター……!」
「レアナ……レアナ……!」
 お互いの名を呼びながら、二人は愛の熱に包まれていった。愛の巣となったベッドの上で、バスターとレアナはひたすらお互いを求め合った。二人の体、そして魂は、愛し合う一つの炎となっていた。



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