[愛する想い、愛される想い]



 日課の自主筋力トレーニングを終えたバスターが自室へ戻ってくると、シャワールームの扉が開いていた。そこには、バスタオルを体に巻いたレアナが立っていた。
「あ、バスター……」
「レアナか。先にシャワーを使ってたんだろう?」
「う、うん」
 バスターの部屋で毎夜、バスターとレアナが愛し合い、レアナがこの部屋で寝起きを共にするようになってから、シャワールームをレアナが使うことは当然のごとく、当たり前になっていた。二人のそれぞれのTETRA内で課せられた日課は全く同じというわけではなかったから、時間的な関係で夜はレアナが先にシャワーを使っている方が多かった。
「じゃあ、俺も浴びるか」
 そう言ってバスターはシャワールームの前で服を脱ぎ始めた。レアナはその間、バスターの後ろにいたが、そっと近づいてきてバスターに小声でささやいた。
「バスター……」
「ん? なんだ?」
「……はやく……あがってきてね」
 レアナは顔をうっすらと赤らめており、どこか緊張したような様子だった。そんなレアナを見て、バスターはいつもとは違う違和感を感じたが、敢えて口にはせず、顔を近づけて軽く唇を重ねると、笑って返した。
「ああ、分かってるさ」
 そう言ってバスターはシャワールームに入り、扉を後ろ手に閉めたが、その間もレアナはその場に立ったままだった。

 シャワーを浴び終えたバスターがシャワールームから出てくると、部屋の中は明かりが点いていなかった。ただ、シャワールームから漏れ出る明かりが部屋の中をうすぼんやりと照らし出していた。
「レアナ? どうしたんだ?」
 バスターはパジャマを着るより先にバスタオルを腰に巻き、ベッドの方を見た。ベッドには人影が――レアナ以外には考えられないのだが――座っているのが見え、その人影がバスターの声に反応して立ち上がったのも分かった。
「レアナ……?」
 そこにはレアナが立っていた。だが、いつもと違ったのは、レアナが先ほどと同じく、バスタオルを巻いただけの姿だということだった。
「どうしたんだよ? そんな格好のままで……」
 バスターが不思議そうな顔をすると、レアナはゆっくりとバスターの方へ歩いてきた。ぺたんぺたんという裸足の足音が室内に響いた。バスターの前までやって来ると、レアナはうつむいたまま言葉を発した。その顔はよく見えなかったが、赤く染まった耳たぶが髪の間から確認出来た。
「バスター……」
「……レアナ?」
「バスターは……いつもあたしを愛してくれているよね?」
 思ってもいなかったレアナの言葉にバスターは驚いたが、レアナはうつむいたまま言葉を続けた。
「でも、いつも、あたしばっかり愛してもらってちゃ、ずるいかなって……あたしも……バスターを愛してあげたいの……」
 それだけ言うと、レアナは体に巻いていたバスタオルをばさっと床に落とした。白いレアナの裸体が露わになり、その姿は暗い部屋の中でほのかに光っているようにも見えた。
「だけど……どうすればいいのか、わからなくて……バスター……おしえて……くれる?」
 次の瞬間、レアナは腕を引っ張られ、唇を塞がれていた。バスターが裸のレアナを抱きしめ、その唇を貪っていた。それは先ほどの軽い口づけとはまるで違う、激しいものだった。
「……レアナ」
 レアナの唇を味わい尽くし、ようやく解放すると、バスターは笑ってレアナを見つめた。
「レアナ……その気持ちだけで、俺はもうこんなに嬉しいよ」
 バスターがそう言って腰のバスタオルをどけると、そこにはバスターの男としての分身がそそり立っていた。レアナは直にそのいきり立ったバスターを見て更に顔を赤くしたが、以前のように目を逸らそうとはしなかった。
「けど……こいつを愛してもらうには、お前の体に準備してもらわなきゃな」
 シャワールームの明かりを消し、バスターはレアナを抱き上げると、ベッドへと運び、彼女を仰向けで寝かせた。部屋の中は暗いままだったので、バスターがヘッドボードに備え付けられたライトを点けると、ベッドの上を暖色系の光が照らし出した。その淡い光の中に照らし出されたレアナの太腿を掴んで足の付け根を広げると、バスターはその谷間に躊躇なく顔を突っ込んで、蜜口を舌で愛撫し始めた。
「あん! バスター!……なに……するの!?」
「お前の体に愛してもらう準備をしてるのさ」
「準備って……あ……ん!」
 レアナの体を隅々まで知り尽くしているバスターの舌先の巧みな動きでの愛撫に蜜口は容易く反応し、間もなく透明な蜜を漏らし始めた。その量が充分すぎるほどであることを確認すると、バスターはレアナの体に腕を回して抱き起こし、レアナをベッドに座らせると、自分はレアナの向かいにあぐらをかいた。バスターの正面に座り込んだレアナに対し、バスターはいきり立った自分自身を再び見せて笑った。
「この前みたいに……お前の体で、こいつをどうにかしてくれるか?」
 バスターの言葉と先ほどの蜜口への愛撫が意味することを理解したレアナは、愛撫のために顔を赤くしたまま、無言でこくりと頷いた。レアナは立ち上がり、バスターの肩に体を支えてもらうように両手を置くと、足を曲げ、そのまま腰を下ろし始めた。そうやって二人の秘めるべき場所が近づいていき、レアナの蜜口が猛ったバスターの先端に触れた瞬間、その熱さにレアナの体はびくっと固まった。
「あ……!」
「大丈夫か?……無理するなよ?」
 いきり立ったバスターの火傷するかのような熱さに困惑して体が固まっただけでなく、レアナの膝はがくがくと震えていた。だが、バスターの気遣いの言葉に、レアナの体の緊張は徐々に解けていき、膝の震えもいつの間にか収まっていた。
「う、うん……だいじょう……ぶ……」
 レアナはゆっくりと腰を下ろしていき、彼女の蜜口の中に猛ったバスターが少しづつ飲み込まれていった。くちゅ、くちゅり、という水音が絶え間なく響く中、レアナの広いとは言えない胎の中に、彼女の中から溢れ出る蜜のおかげでバスターの小さいとは言い難い分身はスムーズに侵入していき、バスターがレアナの体に施した「準備」が万全であったことを示していた。だが、猛ったバスターは燃え盛るように熱く、レアナはその熱さが自身の中に深く入っていくごとに体が興奮し、呼吸が荒くなっていくのを感じていた。
 やがて、いきり立ったバスターは全てレアナの胎内に収まった。レアナはバスターの下腹部に足を広げて座り込む形となり、二人の体は繋がって密着していた。裸体をピンク色に染めて息があがっているレアナだけでなく、バスターも既にもうたまらないといった表情をしていた。
「バスター……上に……うごけばいいの?」
「ああ……頼む」
 レアナが体を持ち上げると、レアナの胎内で密着しているバスター自身とレアナの胎壁とが擦れ、快楽の波が二人を襲った。以前にもそうだったように、レアナはその刺激に耐えきれず、腰をがくっと落とした。
「ああ……ん!」
「くう……! レアナ……いいぜ! もっと……やってくれ……!」
 レアナはバスターの言葉に従い、もう一度、腰を浮かせた。再びあの肉欲の刺激が二人の体中を襲い、レアナは耐え切れず、腰を落とした。
「あん……!」
「レアナ……!」
 いつもは愛されている側の自分の愛の行為にバスターが反応してくれることが嬉しくて、レアナは何度もその行為を繰り返したが、この前と同じく、愛欲に体が支配されていくのに比例して、段々と体の力が抜けていくのが分かった。それでもレアナはなんとか続けようとしたが、体の動きが小さくなっているのは、レアナに愛されることで快楽を分かち合っているバスターにも目に見えて明らかだった。
「レアナ……もう、疲れたんだろう?」
「ごめん……なさい。あたしが……愛してあげるって、言ったのに……」
 レアナはバスターの胸に顔を寄せ、涙を流した。愛欲で感情が高ぶり、抑制が効かなくなっていたためか、レアナは普段にも増して泣き虫になっているようだった。レアナはぼろぼろと大粒の涙をこぼしていたが、そんなレアナの涙をバスターが指で拭った。レアナが顔を上げると、そこには優しい笑みを浮かべたバスターがいた。
「バスター……」
「お前のその気持ちだけで充分だよ。この世でいちばん愛している女に、こんなにも想ってもらえて……愛してもらえているなんて……俺は……世界一の幸せ者だな」
「でも、バスター……」
「ここからは俺が……手伝うからさ」
 そう言ってバスターは両腕を伸ばし、引き締まって小ぶりだが情欲的な魅力をはらんだレアナの臀部を下から掴んだ。そしてそのまま、日頃から鍛え上げた腕力でレアナの体を持ち上げた。
「バ、バスター……! あ……ああん!」
 レアナの胎内にまたあの刺激が走り、全身を駆け巡った。バスターはレアナの体を下ろしたが、すぐにまた持ち上げた。そのたびに二人の体を大きな愛欲の刺激が襲い、バスターもレアナも恍惚とした表情になっていた。その行為のスピードは加速がついたように段々と速くなり、二人は激しい快楽の渦に飲まれていった。
「ああ……バスター……!」
「レアナ……! 最高だ……!」
 長い時間、そうやって強く愛し合った末に、二人は同時に絶頂に達し、バスターの精が勢いよく放たれた。熱さもさることながら、そのほとばしった量も格別で、今までに感じたことがないほどのバスターの精の熱さとボリュームに反応したレアナの胎もまた、いつも以上に大きく震えていた。
「ああ……ん! バスター……の……熱い……の……いっぱ……い……!」
「レアナ……! くう……! レアナ……!」
 バスターとレアナは理性が弾け飛ぶほどの愛欲の歓喜に包まれ、繋がったまま一緒に尽き果てた。レアナはバスターの胸にがっくりともたれこみ、バスターはそんなレアナを愛おしそうに抱きしめた。二人はしばらくの間、荒く大きな呼吸を続けていたが、それも段々と収まっていった。
「今の……バスターの……すごかった……ね……」
「お前が頑張って愛してくれたからさ。嬉しくて……俺の体も張り切りすぎちまったみたいだ」
「そ、そんな……バスターってば……」
 レアナは顔を赤らめてうつむいたが、バスターはそんな彼女の髪を優しく撫でた。
「レアナ……ありがとう」
「そんな……あたし、結局、中途半端なことしかできなかったのに……」
「何度も言ってるだろう? その気持ちだけでも俺は嬉しかったし……お前は精一杯のことをしてくれたよ。現に……俺の体も嘘をついていなかっただろう?」
「う……うん」
 レアナは更に顔を赤らめ、恥じらいを見せたが、その心は歓喜していた。バスターの優しい言葉はもちろんだったが、バスターを愛することで彼が喜んでくれた証を、自分の体そのもので確認出来たことが、嬉しくてたまらなかった。
 バスターはレアナと唇を重ね、互いの舌を絡ませるほどの深い口づけを交わすと、そのままレアナを押し倒す形でベッドに横たわらせ、自分はその上に覆い被さった。二人は未だ、繋がったままだった。バスターはレアナの体からそうやすやすとは離れたくなかった。愛しい少女と少しでも長く、交わって一つでありたかったのだ。
「お前が俺を愛してくれたように……今度は俺がお前を愛してもいいよな? いつもみたいに……お前をもっと感じていたいんだ」
 レアナは笑みを浮かべ、「うん」と小声で言って頷いた。バスターは、今は鎮まったもののまた猛ろうとしている己自身をいったんレアナの中から引き抜くと、レアナの乳房の片方を包み込むように揉み、もう片方の乳房には唇を這わせて白い肌に赤い愛の花を咲かせ、レアナの体をまんべんなく愛し始めた。レアナは甘い声をあげ、バスターの体にしがみついた。
「あ……ん! バスター……!」
 艶めいた声をあげ続けながらも、レアナの心は沸き上がる愛欲とはまた別のもので満たされていた。バスターを愛するあまり、自分からも愛してあげたいと思い詰めた末のレアナの想いを、バスターは喜んで汲み取ってくれた。それだけでなく、今もこうしていつもと変わりなく、いや、それ以上に深くレアナを愛してくれている。そんなバスターへの愛しさが、レアナをたまらない幸福感で包んでいた。
 レアナは愛する喜びを、バスターは愛される喜びを、改めてその身と心に刻みつけ、今宵もまた、狂おしいほどに愛し合い続けていた。その愛を交わし合う行為は、この夜が明けるまで、何度も繰り返されるだろう。二人の愛は、決して尽きることはないのだから。



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