[交じり合う体、そして心]



 バスターが自室に戻ってから随分と時が流れたが、ベッドの上では変わらず、バスターはレアナと抱き合っていた。そのうちにバスターがレアナの顎にそっと指を寄せ、二人は唇を重ねた。お互いを求め合うような深い口づけを交わした後、レアナが少し不思議そうな表情を見せた。
「あれ?……バスター……またお酒のんだの?」
「……ばれちまったか」
「わかるよ、あたしだって……ねえ、あたしものんでいいでしょう?」
「……お前が飲んだら、この前みたいになるぞ?」
 バスターの警告めいた言葉に、レアナはうっすらと頬を染めて呟いた。
「……うん。あたしはいいよ、それでも……」
 それがレアナからバスターへの「愛してほしい」というメッセージを暗に含んだ言葉だとバスターは気づき、バスターも少なからず顔を赤らめた。だが、レアナの顔を見据えると、バスターはレアナの額に口づけした。
「……分かったよ。ちょっと待ってろ」
 バスターは立ち上がってテーブルに近づき、一升瓶とそのそばに置かれたグラスを取り上げると、こぽこぽとグラスに一升瓶の中身を注いだ。そしてグラスを手にしてベッドに戻ってきたが、ふと何か思いついたような顔を見せ、悪戯っぽくレアナに笑いかけた。
「バスター……?」
 レアナがまたも不思議そうな顔をする傍らで、バスターはグラスの中身を一口分、口に含んだ。そうした後、片腕でレアナを抱き寄せると、もう一度唇を重ねた。
「……!」
 突然のことにレアナは驚いたが、唇を離すようなそぶりは見せなかった。やがて、レアナの喉元がこくりと動き、酒がバスターからレアナへ口移しで運ばれたことが分かった。バスターは唇を離すと、悪戯っぽい笑みのままレアナを見つめた。
「お前にはちょっと強い酒だからな。こうしたほうが飲みやすいだろう?」
 レアナは顔を真っ赤にして唇を押さえていたが、バスターの言葉にゆっくりと頷いた。そして、小さな声を漏らした。
「……っと」
「え?」
「……もっと、ちょうだい……バスター」
「ああ、分かってるさ」
 バスターは改めて酒を口に含み、もう一度、口移しでレアナに飲ませた。それをグラスの中身が空になるまで、四回ほど繰り返した頃には、レアナの顔はすっかり赤くなっていた。だが、それは酒のせいだけでも、恥じらいが加わっているだけでもなかった。レアナの表情は艶めいていて、潤んだ瞳で自分を抱きしめるバスターを見つめていた。
「バスター……」
 そのレアナのバスターに愛されることを求めて誘うような様は、バスターにとってはたまらない媚薬だった。バスターは空のグラスをベッド脇の床に置くと、もどかしい様子でレアナのパジャマのボタンを次々と外した。一糸まとわぬ姿となったレアナは、バスターとの深い口づけの繰り返しで全身が熱を帯び、ピンク色に染まっていた。自身もパジャマのズボンを乱暴に脱ぎ捨てると、バスターはレアナの乳房にかぶりついた。
「あ……あん!」
 舌先で乳首を転がし、もう片方の乳房も片手で強く揉むと、レアナの体はたやすく反応し、乳首が固く立った。その乳首を舌先で、そして指先で更に弄ぶと、レアナは身も心もバスターの愛欲に支配され、体をくねらせた。
「あん……! バスター……ダメ……!」
 レアナのそのささやかな抵抗さえもバスターには愛しく、唇と指先を徐々に胸、腰、そして蜜口と下ろしていき、レアナの体を愛撫し続けた。その愛撫の連続に、レアナは全身の力が抜けたようになってしまい、甘い声をあげ続けた。
「あ……! いや! バスター!」
 バスターが蜜口に指先を差し込むとレアナは一際大きな声を出したが、蜜口からは蜜が既に溢れ出ており、レアナが本心では嫌などではないことは一目瞭然だった。バスターが蜜口に差し込んだ指をくちゅりと水音を立てて動かすと、レアナも指の動きに合わせて無意識に腰を動かし、色めいた声を漏らし続けた。
「ああ……ん! バスター……!」
 バスターが蜜口から指を抜くと、レアナはぜいぜいと荒い息を続け、その体はもうすっかりバスターを受け入れる準備が出来ていた。だが、バスターはレアナの体を抱き起こすと、そのままうつ伏せにし、背中に舌を這わせた。
「あ……ん!」
 考えてもいなかったバスターの行動に、レアナは大きく甘い声をあげた。バスターは更にレアナのうなじに唇を這わせ、耳元で呟いた。
「いいだろう? こんなのも?」
 レアナは耳たぶまで真っ赤にしたが、何も反論は出来なかった。更にバスターは熱を帯びた指先でレアナの腰を撫でながら、片腕を背中から胸に回し、再度、乳房を手で弄んだ。レアナは嬌声をあげたが、バスターにはその声さえも刺激的で、彼を満たす愛欲をいっそう強めていた。
 そうやってバスターが背後からの愛撫を続けているうちに、レアナが絞り出すような声で訴えてきた。
「おねがい……バスター……もう……はやく……」
「早く? どう早くなんだ?」
 バスターが全て分かっていながら、少し意地悪そうに耳元で尋ねると、レアナは顔を赤くしたまま、バスターの問いに答えた。
「はやく……来て……あたし……もう……」
 レアナのその様はバスターが今までに見たことがないほど扇情的だった。予想していたより遥かに情欲に満ちたレアナの様子に、バスターは脳天をドンと突かれたような衝撃に襲われたが、自分を強く求めるレアナが愛しくてたまらなかった。
 バスターはうつ伏せのままのレアナの腰を掴んで膝で立たせると、既にいきり立っていた己自身を、蜜で溢れかえった蜜口に勢いよく挿し込んだ。この前にシャワールームで愛し合った時もそうだったが、レアナを後ろから愛するときには、興奮のあまりか、バスターは彼女への配慮の言葉さえ忘れてしまっていた。
「ああん! バスター……!」
 バスターが中に入ってきた勢いでレアナの体は一瞬、前方へ押し出されたが、レアナはなんとか両腕で体を支え、繋がったまま掴まれた腰をバスターの方へつき出した。バスターの愛欲に支配されたレアナの体が、バスターをより強く求めていることは明らかだった。バスターは体を大きく動かし、レアナを後ろから攻め、愛し続けた。レアナの中という肉欲的な歓喜に満ちた場所にバスターは取り憑かれ、夢中で体を動かしていた。
「レアナ……レアナ……!」
「ああ……あ……バスター……!」
 バスターとレアナの体と心は限界に近かった。しかし、バスターはいったん体を動かすのを止め、猛ったままの己自身を引き抜くと、レアナの体を後ろから抱き込んだ。
「バスター……? あ! な……なにするの!?」
 バスターはレアナの体を抱きかかえ、再び仰向けに戻した。そして、レアナに笑って語りかけた。
「やっぱりお前の顔を見ていたいんだよ……いいだろう?」
 それだけ言うと、バスターは今度はレアナの太腿を掴んで広げ、もう一度レアナの蜜口に侵入し、さっきよりもより激しく、けれども巧みに体を動かして、猛り狂う己自身でレアナの胎を攻め続けた。他の誰でもないバスターによって「女」となったレアナの体は、夜毎の営みでその体を知り尽くしたバスターの体の動きで胎の奥深くから刺激され、レアナは絶頂に達しようとしていた。レアナはシーツをぐしゃぐしゃに掴んで甘く切ない声を漏らし続け、バスターの動きに合わせて細い体にはアンバランスなほど大きな乳房がたわわに揺れた。バスターは体を動かしながら、たまらなく情欲的なレアナの姿から目を離せなかった。
「レアナ……綺麗だ……いいぜ……最高だ……!」
「あ……ん! バス……ター……そんな……に……見ない……で……! こんな……あた……し……ああん!」
 バスターに愛され続けるレアナだけでなく、レアナを愛し続けるバスターもまた、絶頂を迎えようとしていた。バスターもレアナも、狂おしいほどに激しく愛し合うことでもたらされる大きな快楽の渦に恍惚と浸り、二人とも理性などどこかに吹き飛びかけていた。
「ああ……バスター! あたし……もう……ダ……メ!」
「分かって……る……俺も……くう……う!」
 長い時をかけて愛し合った末に、バスターの熱いたぎりがとうとうレアナの中に放たれ、二人は共に頂点に達し、尽き果てた。バスターはレアナの体の上に倒れ込み、乳房の間に頭を置いたまま、はあはあと大きな呼吸を繰り返した。レアナもやはり呼吸が乱れ、満足に息も継げないほどだったが、時が流れ、落ち着き始めると、自分の胸に頭を預けるバスターの赤い髪を優しく撫で、愛しいその名前を呼んだ。
「バスター……」
 バスターはレアナの胸に顔を埋めたまま、本能のままにほとばしった自分の精を受け止めたレアナのくびれた腰を愛おしそうに撫で、呟くように言った。
「ちょっと……やり過ぎちまったかな」
 その言葉にレアナはクスッと笑い、バスターの頭を両腕で包み込んだ。
「そうよ……あたし、どうにかなっちゃいそうだったもん……」
「……そうだな……ごめん」
 二人はしばらくそのまま密着していたが、やがてバスターが身を起こし、レアナを真正面から見つめた。
「けど……今回はお前のほうからこうしてほしいって言ってきたようなもんだぜ?」
 バスターの言葉に、レアナはもう何度目か分からないほど顔を赤くした。
「そ……そんな! た、たしかに、お酒はのみたいって言ったけど……」
「でも、俺は嬉しかったぜ? それに……」
 バスターはあと少しで唇が触れるほどの距離まで顔を近づけた。
「そんなお前も可愛いぜ。俺は……どんなお前だって喜んで受け入れてやるさ。お前は俺の……」
 そこまで言うとバスターは唇をほんの少しだけ重ね、すぐに離して言葉を続けた。
「……この世でただ一人の、半身なんだからな」
 レアナは恥ずかしげにバスターを見つめていたが、バスターのその言葉に、嬉しそうに笑みを浮かべた。
「バスター……ありがとう……」
 レアナは瞳を閉じると自分から顔を近づけてバスターと唇を重ねた。二人はそのまま、深く唇で交わった。愛欲も確かに二人の体にまだ残っていたが、それ以上に、純粋にお互いを求める愛が二人の体の熱となり、二人の心をとろかしていた。
 バスターに愛される喜び、レアナを愛する幸福。それらを知り、満たされた二人の愛の高まりを止めることは、もはやなんぴとたりとも出来なかった。



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