[想いの残照]



 ベッド脇の小さな灯りだけがともった薄暗いバスターの部屋。その中で二つの人影がベッドに座り、身を寄せ合っていた。それは毎夜、この部屋で見られる光景だった。
 バスターはレアナの顔を両手で包み込み、彼女の唇を自身の唇で貪っていた。息を交わし合い、舌を絡ませ、それはさながら舌での愛撫だった。実際、レアナの息は大きく荒くなり、顔も紅潮していた。バスターはそんなレアナの背中に腕を回して彼女を抱き抱えると、レアナをそっとベッドに横たえた。そしていったん唇を解放すると、レアナのパジャマのボタンを上から一つづつ外していった。
 レアナは無防備で下着を着けていなかったから、豊満な乳房がぷるんと露わになった。仰向けになっていても、乳房の大きさは充分すぎるほどだった。バスターは乳房のピンク色の先端を指先で弄びながら、少し意地悪そうに笑って言った。
「どうせこうやって脱がすんだから、パジャマなんて着なくていいのによ……」
 その言葉にレアナはいっそう顔を赤くしながらも、小さな声で反論した。
「だ、だって」
「ま、それは俺も同じだけどな」
 バスターはそう言うとレアナのショーツをズボンごと脱がせた。全身をさらけ出したレアナの体は薄暗い闇の中で白く光り、それを見るたびにバスターは綺麗だと感じていた。バスターも自分のパジャマをさっさと脱ぎ始め、二人のパジャマを無造作にベッドの下に投げると、レアナと同じく一糸まとわぬ姿となった。
「レアナ……」
 バスターは愛しい少女の名を呼ぶと、もう一度唇を重ねた。レアナの口内に舌を挿入し、レアナの舌を求め、絡め合った。その間、二人の手も繋がれたままだった。
 バスターは顔を上げると、レアナの顔を見つめた。レアナは目をつぶっていたが、バスターの視線に気づき、目を開いた。青い瞳は潤み、目尻はほんのり赤く染まり、その表情はバスターのレアナへの想いを強く刺激した。
 バスターは手を繋いだまま、首筋を舌で舐め、乳房の片方を優しく噛んだ。舌先で乳首をつつき愛撫すると、乳首はぴんと固くなり、同時にレアナは声を上げた。
「いや……! バスター……!」
 レアナの懇願にも関わらずバスターは構わず愛撫を続けた。レアナが本気で嫌がっている訳ではないと分かっていたから。もう片方の乳房も掌中に収め、乳首を愛撫しながら強く、だが優しく揉んだ。
「バスター!……あ……ああ!」
 レアナの甘く切ない声が絶えず漏れ、バスターの男としての本能が次第に目覚めていった。
 唇と舌で乳房を愛しながら、バスターは空いている片手を離し、レアナの細い腰を撫でた。豊かな乳房とは対照的に細くくびれた腰は乱暴に扱えば壊れそうなほどで、こんな細い体で毎夜、自分が欲望のままに放つ精を受け止めているのだとは、バスターにはにわかには信じられなかった。
 腰から続く下半身に手を下ろすと、バスターの手はレアナの蜜口に伸びた。足は蜜口を隠すように閉じられていたが、レアナを求めるバスターの前には無力も同然で、造作もなくバスターはレアナの足を広げて蜜口に指を入れた。びくり、とレアナの体が反応したが、指を動かし始めると、レアナの体はその動きに呼応するかのようにくねり始めた。
「あ……や……!」
 レアナが発する声はもはや言葉になっていなかった。ただ、それがバスターの行為を受け入れた歓喜の想いであることは確かだった。バスターは乳房から顔を離すと、濡れた蜜口から指を外し、代わりに舌先を挿入した。舌での蜜口の愛撫は、指でのそれ以上にレアナの体を刺激していた。レアナはもう、まともに声を発することすら出来ないほどだった。
 バスターの舌にあふれ出した蜜が絡み、受け止め損ねた蜜がしたたり落ちてシーツをぐっしょりと濡らすほどになると、バスターはようやく顔を離した。レアナの体がそうであるように、バスターの体も限界を迎えていた。いきりたった己自身をレアナの蜜口に近づけると、バスターはレアナを抱きしめ、耳元で囁いた。
「俺も……いいか?」
 レアナは言葉は出さず、代わりにバスターの背中に腕を回し、バスターの体に絡みついた。バスターはそれを肯定と捉えると、猛った己自身でレアナの体を刺し貫いた。
「……!」
 レアナは声にならない声を上げたが、それはバスターの体を拒否したわけではなく、むしろ受け入れたからこその声だった。激しく体を動かすバスターの体にしがみつき、まるで振り落とされまいとしているようにも見えた。バスターも本能のままに体を動かしながらもレアナの体を強く抱きしめていた。何があってもレアナを離しはしないとでも言わんかのように。
「レアナ……愛している……レアナ……」
 バスターは無意識のうちにそう呟いていた。素面の状態だったら恥ずかしさが先行して言えそうもない言葉でさえ、何もかもをさらけ出して一つになった今は口にすることが出来た。レアナも荒く大きな息をしながらも、その言葉に絶え絶えに応えていた。
「バスター……だい……すき……はなさ……ないで……」
 レアナの言葉にバスターは更に体を激しく動かし、同時にレアナを強く抱きしめた。
「離したりしない……レアナ……お前は……俺の……!」
 次の瞬間、バスターの体がびくん、と強ばり、熱い精がレアナの体の中に放たれた。レアナも同じ瞬間に絶頂を迎え、バスターにしがみつく腕によりいっそう力が加えられた。それはしがみついていたバスターの背中に赤い手形が残るほどだった。
 二人の体から力が抜け、しばらくの間、バスターとレアナはそのままベッドの上に横たわっていた。まだ繋がったままであるだけでなく、足を絡ませ、お互いの体を抱きしめ、二つの体が一つの何かになったかのようだった。
 やがて、バスターはゆっくりと上半身を起こした。仰向けになったまま目を閉じ、まだ荒い呼吸を続けるレアナを見て、バスターはレアナの閉じられたまぶたにそっと口づけをした。それを合図とするかのようにレアナはゆっくりと目を開けた。
「レアナ……」
 バスターがレアナの髪を指先で梳きながら名前を呼ぶと、レアナはにこっと優しく笑い、バスターの顔に手を伸ばした。
「バスター……ありがとう」
「え?」
「あたしのこと、愛してるって、離さないって言ってくれて……」
「あ……ああ。そりゃ……当たり前だろ?」
 顔を赤らめるバスターを見て、レアナはクスッと笑った。
「バスターは……こうしてるときは素直にこたえてくれるもんね」
 図星を指されたバスターはますます顔を赤くし、バツの悪そうな顔をしたが、照れ隠しのようにレアナの唇に唇を重ねた。だがそれは先ほどのような激しいものではなく、息を交わし合う程度の穏やかで優しいものだった。唇を離すと、バスターは紫色の瞳でレアナを再び見つめた。
「俺は……いつだって素直だぜ?」
「うそ」
 二人はクスクスと笑い合った。体を重ねていた時に身も心も支配していた激しい感情はもうなりを潜め、穏やかな空気が流れていた。二人は何も身につけぬまま、お互いをそっと抱きしめ合い、ブランケットに包まれて静かに眠りに落ちていった。
 バスターはレアナを離そうとはしなかったし、レアナもバスターから離れようとはしなかった。まるでそれは激しい熱の残照のようでもあり、お互いを強く想う気持ちの証であった。



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