[重なる想い]



 静寂が支配する真夜中、バスターは不意に目を覚ました。薄暗い中、高くない天井が見え、傍らからはぬくもりが伝わってきた。
 ぬくもりの主――レアナは穏やかな寝息を立てていた。その姿はバスターのパジャマを羽織っただけで、しかもボタンをきちんと閉めていなかった。そのために胸元が丸見えだと言ってもいい状態だった。幼ささえ感じる寝顔と、豊かな胸元とのギャップに、バスターは思わずドキリとした。
 そんな風にレアナを見ているうちに、バスターは己の中の野生がまた高ぶり始めていることに気づいた。レアナを欲しい、抱きたい、一つになりたい……それらの感情はこの部屋の中で夜毎、解放されており、今夜もバスターは先刻にレアナを抱いていた。
 レアナを抱くときにいつも感じるのは猛り立った自分の身と心だけでなく、このうえない幸福感だった。すさんだ生活を送っているときに、レアナ以外の女性を抱いたことも何回もあるが、レアナを抱くときに感じる幸福感などまるで感じたことがなかった。
 女性を抱くのは一時の快楽のためだけだとバスターは思っていたが、レアナと出会い、彼女を抱いて初めて、人と人が愛し合う意味を身をもって知った。今やもう、レアナがいない人生などバスターには考えられなかった。
 バスターの手は、自然とレアナのパジャマのボタンへと伸びていた。ボタンを一つづつ外していくと、レアナの豊満な乳房が露わになった。バスターが乳房に触れ、指先で乳首を弄ぶと、さすがにレアナが目を覚ました。
「ん……や……バスター?」
 猛った感情に支配されつつあったバスターは構わず手と指で乳房を愛撫し、片方の乳房の先端を口に含み、更に乳首を舌で弄んだ。
「バス……ター……はあっ……」
 すでにレアナは熱い息をこぼしており、バスターの頭を両手で抱えていた。細い指先に赤い髪を絡ませ、己を支配する熱に体をうねらせていた。
 レアナの乳房を味わい尽くしたバスターは、更にレアナのパジャマのボタンを外していき、彼女の白い裸体を露わにした。レアナは下着も何も着ていなかったから、生まれたままの姿をさらけ出していた。
 羞恥心からレアナは真っ赤な顔をしていたが、バスターにはそんなレアナの様子も愛おしく、顎を指で持ち上げると、深いくちづけを落とした。二人の舌と舌が絡み合い、息をついでは何度も唇を重ね合っていた。
 唇を重ねながら、バスターはレアナの蜜口に手を伸ばしていた。最初こそびくりとレアナは体を固めたが、何度もの深い口づけのせいか、徐々に閉じられた足は緩んでいった。その先の蜜口にバスターの指が入り込み、最初はゆっくりと、段々と激しい愛撫を繰り返すと、蜜口はあふれ出した蜜に濡れ、シーツにまでしたたり落ちるほどだった。
「レアナ……いいか?」
 バスターは既にぜいぜいと荒い息をあげるレアナに、これからしようとすることを確認した。もっとも、もはやバスターには我慢出来ない状態だったのだが。
「……うん」
 レアナは息を少し整えると、小さな声で答えた。やはり小さな声でこう続けて。
「やさしく……してね……?」
 その言葉でバスターのリミッターが外れた。レアナの蜜口と猛ったバスターそのものとが繋がると、愛撫がそうであったように、初めはゆっくりと、だが徐々に己の感情に従うままにバスターは激しく体を動かした。
「あ……やあ……」
 レアナはバスターの体にしがみつき、普段の子供っぽい彼女とは別人のような官能的な声を上げた。その声がますますバスターを刺激していた。
「バスター……バスター……!」
 己の名を呼ぶ切ない声に、バスターは体を動かしながらかすれた声で答えていた。
「レアナ……!」
 やがてどれだけの時間が経った頃か、バスターはついに果て、レアナも同時に果てた。バスターは自分の体の下のレアナを抱きしめ、二人はそのまましばらく抱き合っていたが、お互い呼吸が落ち着くと、バスターはそっと身を起こした。
「レアナ……」
 愛しい少女の名を呼ぶと、白い裸体を露わにしたままのレアナはバスターの顔に手を伸ばした。
「バスターってば……本当にエッチなんだから……」
「へ?」
 前にも言われたことのある言葉をまた言われ、バスターは虚を突かれた。
「こんなことしたいのなら、あたしが寝てるときにいきなりしなくてもいいじゃない……あたしを起こしてくれれば……こんなにびっくりしなかったのに……」
「悪りい。つい……な」
「つい……?」
「お前があんまり可愛い顔で眠ってるからだよ」
「!?……バ、バスターってば……!」
 顔を真っ赤にしたレアナは裸体を手で隠し、顔を伏せた。そんなレアナに対し、バスターはさっき脱がせたパジャマを着せようとした。レアナは抵抗せず、バスターにされるがままになってパジャマを着た。ボタンを留められながら、レアナは小さな声で呟いた。
「バスター」
「ん? なんだ?」
「あ、あたしはバスターとこういうことをするのはぜんぜんイヤじゃないの。だから……」
「ああ、悪かったよ。いきなりさっきみたいなことして」
「バスターはあやまらなくていいよ。だって、あたし……」
 そこまで言葉を紡いだところで、レアナも身を起こし、裸のままのバスターにしがみついた。そして、更に小さな声でこう呟いた。
「バスター……あたし……バスターのことが大好き。こうやって二人で時間を重ねるたびに、よけいに好きになっていってる……そんな気がするの」
 バスターは自分の顔が赤くなっているのを感じていた。だが、そんなことは今はどうでもよかった。自分に身を寄せるレアナを抱き寄せ、柔らかな髪を撫でた。
「俺も……レアナ……どんどんお前に夢中になっているよ。お前とこうしていられるなんて……夢みたいだ」
 薄暗い部屋の中で、二人はただ強く抱き合っていた。お互いを決して失うまいとの決意のように。



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