[First Night]



 息が止まるような口づけの後、バスターはゆっくりと顔を離した。目の前のレアナの顔を見ると、その瞳はうるみ、はあはあと肩で息をしていた。その表情がどうしようもなく愛おしく、バスターはレアナを抱き上げると、そのまますぐ横の彼女のベッドに横たえた。そして、再びその唇を奪っていた。
「ん……」
 レアナは小さくうめいたが、すぐにおとなしくなった。お互いの息を交換し、同時に強く抱き合った。バスターがそっと唇を解放すると、レアナの表情はさっきにも増して官能的になっていた。そしてバスターは、自分がもう止められない状態にあることを自覚した。

 片手でレアナのパジャマのボタンを外すと同時に、自身のパジャマのボタンをもう一方の手で外すという器用な仕草で、二人はたちまち胸を露にした。レアナは咄嗟に両手で胸を隠したが、同じように上半身裸になったバスターがその手に優しく、彼女よりひとまわり大きな手を置いた。
「ダメか?」
「そんな……ダメなんて…ただ……」
「ただ?」
「はずかしいもの……」
 レアナはそう呟いて顔を赤らめた。バスターはそっと触れるか触れないかのキスをし、微笑んだ。
「恥ずかしくなんかねえさ……こんなに綺麗なのに?」
 バスターはそう言いつつ、レアナの両腕を胸からはがした。豊かで形の良い乳房がこぼれた。レアナの返答を聞く間もなく、バスターはその乳房の先端を口に含んでいた。
「や……はあっ……」
 レアナは一瞬、びくりと体を震わせた。バスターに抑えられた両腕が抵抗しようとしたがそれもかなわず、指先がシーツを掴んでいた。バスターが舌先で可愛らしい乳首を転がすと、レアナは声をあげながら、体をよじった。
「ん……あ……」
 もう抵抗しようとする気がレアナにないことを彼女の腕にこめられた力から気付くと、バスターはレアナの両腕を自由にした。そしてすぐに、同時に自由になった自分の手で、レアナのもう片方の乳房を掌中に収めた。柔らかな感触を味わい、指先でその先端を弄ぶと、レアナは控えめながらも声を更にあげ、体をうねらせた。

 バスターはレアナの両の乳房を舌と指先で存分に味わうと、今度は彼女のパジャマのズボンをさっさと下ろした。ショーツまでも一緒に。彼自身も続いて自分のズボンと下着を下ろし、二人は一糸まとわぬ姿になった。ほのかな明かりの下に照らし出されたレアナの裸体は、彼が今までに見たどんなものよりも美しく見えた。レアナはあまりの恥ずかしさから顔を背け、目を固く閉じていた。バスターがそんなレアナの潤んだ目元に唇で触れると、レアナはゆっくり瞼を開いた。
「バスター……」
 バスターはそのまま裸のレアナを抱きしめ、細く白い首筋に唇を這わせた。バスターの背中に回されたレアナの両腕に力が込められ、レアナが声を漏らした。密着した二人の体は熱を帯びたように熱かった。

 レアナの首、乳房、腹部と、バスターは唇で順に愛撫すると、がっちりと足で閉められた、まだ誰も入り込んだことのない場所に指を這わせた。レアナは身を固くしたが、バスターは彼女の耳元で優しく囁いた。
「大丈夫……力を抜けよ」
 その言葉にレアナは少しとまどったようだったが、ほんのちょっとの間を置いて、小さな声で返答した。
「うん……」
 こわばっていたレアナの両脚が緩むのを確認すると、バスターは彼女の細い両脚を優しく開いた。そして顔を近づけると、優しく舌先で触れはじめた。
「はあ……ああん!」
 思いもよらなかったバスターの行動にレアナはひときわ大きく喘いだが、生まれて初めて味わう快感に抗うことは出来なかった。バスターが舌を動かすたびにレアナの声が部屋に響いた。

 バスターが舌を離すと、レアナの中から溢れ出した蜜で、シーツはぐっしょりと濡れていた。レアナはぜいぜいと大きく呼吸しており、全身が火照っていた。バスターは自分自身がもう我慢の限界だと思い、レアナの体を再び抱き寄せて口づけを交わした。そして、レアナの瞳を見つめた。
「痛いと思うけど……許してくれ。俺がもう限界なんだ」
 レアナがその意味を理解する前に、バスターは熱くたぎった己自身を、熱と蜜で濡れそぼったレアナの体の中心にぐっと押し込んだ。ゆっくりと、だが確実にバスターとレアナはひとつになろうとしていた。
「う……バス……ター……」
 あまりの痛みにレアナは苦悶の表情を浮かべ、シーツを強く握った。それでもバスターはやめなかった。やがて、ひときわ突き抜けるような痛みがレアナを襲ったが、同時にバスターは息をついた。痛みがおさまり、自分の体の中に何か熱く硬い大きなものが入れられているという感覚が、レアナにもおぼろげに分かった。
「バスター……」
「ごめんな……まだもう少し……我慢してくれ」
 バスターはそう言うと、レアナの肩を抱いた。そのままバスターが体を動かすと、レアナの体を再び痛みが襲った。
「はあ……うう……バスター……」
 レアナは必死にバスターの体に掴まり、痛みに耐えた。だが、段々とその痛みに混じって、不思議な快感が伝わってきた。バスターの指と舌で弄ばれた時とはまた違った、初めての、どうしようもない感覚だった。レアナの漏らす声は、いつの間にか呻きから官能的な喘ぎに変わっていた。
「あ……ああ……バスター……!……バスター!」
 レアナは自分の体を貫き続ける青年の名を呼んだ。バスターもそれに呼応するかのように、より激しく体を動かし、自分に快楽を与えてくれる愛する少女の名を呼んだ。
「レアナ……レアナ……!」
 二人は文字通りひとつだった。体も、心も、お互いがどうしようもなく愛しく、このまま死んでもいいとさえ思った。どれだけの時間が経ったか、二人がとうとう昇りつめた瞬間、バスターが呻いた。
「くっ!……う……!」
 同時に、レアナの胎内に、バスターの体から飛び出した熱い液体が注がれた。それが更にたまらなく、レアナもまた、声を漏らした。
「あ……あ……!」
 レアナの全身から力が抜け、バスターの体に回していた両腕もほどけ、レアナはぐったりと身を横たえた。バスターはそんなレアナから、そうっと身を離した。シーツには零れ出たレアナの血と透明な蜜、そしてバスターが注ぎ込んだ白い液体とが混じり合って広がり、大きな染みが出来るほど濡れきっていた。その赤い血を目にして、バスターは慌てたようにレアナの顔を見た。髪の毛が汗で額に張りついており、大きな呼吸を繰り返していた。
「レアナ……」
 バスターは額に張り付いた髪の毛を指でそっと拭うと、心配そうにレアナに話しかけた。
「その……どこも……大丈夫か?」
 レアナは微笑んで答えた。
「うん……」
 本当はまだ痛みが体の内側に残っていた。だがそんなことよりも、愛する人とひとつになれたことの喜びのほうが遥かに大きかった。二人は唇を重ね、余韻を慈しむかのように、互いの体を強く抱きしめていた。

 バスターとレアナ、二人はは別々の個体でありながら、もはやその心は半身を求め合うひとつの個体になっていた。世界の終わりで生まれた愛は、誰にも止めることなど出来ないほど、強く純粋なものだった―――。



BACK

inserted by FC2 system