No.72…"いろづきチンクルの恋のバルーントリップ"(2009.8.6/DS/開発:バンプール/販売:任天堂)

 『ゼルダ』シリーズの脇役キャラとして登場したチンクル。そのチンクルのスピンオフ第一弾『もぎたてチンクルのばら色ルッピーランド』に続く第二弾作品がこの『いろづきチンクルの恋のバルーントリップ』です。

 35歳独身無職の冴えない主人公。ある日、彼は通販番組で購入した不思議な本の中に吸い込まれてしまいます。その世界では彼は「チンクル」と呼ばれ、元の世界に戻るために冒険の旅に出ることになります。

 今作は『オズの魔法使い』がモチーフとなっており、チンクルも旅の途中で3人の仲間が出来ます。おつむも体も軽くて小さいカカシ、常に冷静沈着でクールな女性型ロボットのブリキ、力持ちだけど弱虫のライオン。彼らはそれぞれ能力を持っており、例えばカカシは狭い所に入って中を探れますし、ブリキは搭載コンピュータで物を解析出来ますし、ライオンは力が強いほかに動物と話す事が出来ます。それらの能力をフルに使って、チンクル達は冒険を進めていくことになるのです。

 また、タイトルにもあるように、今回の大きなセールスポイントは「バルーントリップ」です。チンクルはゲームの途中から過去へ戻れる能力「バルーントリップ」を与えられます。この能力を駆使して、ストーリーが行き詰ったポイントで過去をやり直して物語を進めていくことが出来るようになるのです。

 もうひとつのセールスポイントは「ラブ・プッシュ」です。チンクルは容姿がアレなため、行く先々の女性から不審者扱いされたり、痴漢に間違われたり、子供に泣かれたり、拒絶されたりと当初は散々な目に遭います。そんな女性たちの誤解を解き、心を開かせるシステムが「ラブ・プッシュ」です。「ラブ屋」を名乗る中年男性から品物を買い、女性にプレゼントすることで好感度を上げ、彼女らの誤解を解いていきます。

 ただし、女性たちにはそれぞれに「可愛い系が好き」「クールな物が好き」といった好みがあるので、好感度を上げるにはその好みを満たすプレゼントを渡す必要があります。それら好みは女性の外見や性格、またはブリキの解析などによって知る必要があります。これについては分かりやすいキャラもいれば分かりにくいキャラもおり、ある程度は推理しなければなりません。私はこの点は残念ですが楽しいというより面倒くささを感じてしまいました。

 また、「ラブ屋」からプレゼントを買うには当然お金(ルピー)が必要なのですが、その資金はゲーム途中から怪しげな二人組「ダン&ジョン」が経営する3Dダンジョンをクリアして稼がなければいけません。何度も挑戦してゲームを進めると入れるダンジョンは何種類も増えていき、稼げるルピーも多くなっていきます。しかし、このゲームは全てタッチペン操作となっており、この3Dダンジョンも例外ではありません。ゲームの仕様上、ルピーは大量に必要なのでダンジョンにも何度も挑戦しなければいけないのですが、タッチペンでのダンジョン移動ははっきり言ってやり辛く、残念なマイナスポイントとなっています。

 しかし、このゲームは単なるイロモノではなく、一見おちゃらけているようで実際は深いストーリーとユニークなキャラがゲームを盛り上げてくれています。特にチンクルのお供の3人(カカシ、ブリキ、ライオン)が終盤で「それぞれの足りないもの」を得ていく過程は秀逸で、泣きそうになってしまったくらいです。

 また、主に任天堂作品を中心に様々なパロディが色々見受けられます。前述の「ラブ屋」が新商品を入荷したときの音楽は『パルテナの鏡』のBGMそのままですし、他にも『ゼルダ』『マリオ』『メトロイド』をはじめとしたパロディが満載で、販売が任天堂だとはいえ、プレイしながら「いいのか!?」と思ってしまいました。

 残念なことに前作『もぎチン』と比べるとセールスは振るわなかったようですが、この『いろチン』も、もっと売れるべきだった佳作アクションアドベンチャーです。チンクルという濃いキャラがある意味ネックとなっていますが、興味をもたれた方はプレイしてみてはいかがでしょうか。



OFFICIAL SITE

CONTENTS

inserted by FC2 system