No.97…"ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記"(2001.5.24/PS/開発:ティルナノーグ/販売:エンターブレイン)

 当初は『エムブレムサーガ』というタイトルで発表され、また、ゲーム雑誌「ファミ通」誌上で開発リーダーの加賀昭三氏がかつて氏が同じく開発リーダーを務めた『ファイアーエムブレム』シリーズと世界観を共有している発言をしてその記事が意図的に広告として使われたため、任天堂及びインテリジェントシステムズとの訴訟にまで発展した。その結果、現在の『ティアリングサーガ』というタイトルに変更され、キャラの設定も一部変更を余儀なくされた。詳細は「エムブレムサーガ裁判」で検索してもらえれば分かるだろう。

 本作の主人公は二人。ラゼリア公国の公子リュナンと、グラナダ太守ヴァルスの息子にして私掠海賊団「シーライオン」の頭であるホームズであり、性格も生い立ちも異なるが二人は親友の間柄である。それぞれの部隊を交互に進めていくことでシナリオが進行するシステムとなっているが、シナリオ途中で何度か合流する機会があり、そのたびにユニットやアイテムを交換することが出来るようになっている。リュナン側は自由度がほとんどなく難易度の高いマップが多いが、ホームズ側はリュナン側よりも戦闘難易度は低く、経験値やアイテムを無制限に稼げるフリーマップも用意されている。そのため、リュナン側で加入したユニットをホームズ側に渡して経験値を稼いで鍛えた後、再びリュナン側に戻すという戦術も出来るようになっている。基本的にはリュナン側のシナリオが本筋と言えるが、ホームズ側のシナリオもそれに負けない十分に楽しめる内容である。

 また、前述したように『ファイアーエムブレム』シリーズと制作リーダーが同じであり、元々は同じ世界観のゲームとして制作されたため、システムが非常によく似ており、特に戦闘システムに関してはほとんど一緒と言ってもいいくらい酷似している。おそらく知らないプレイヤーが戦闘画面を見たら、『ファイアーエムブレム』シリーズと勘違いしてもおかしくないくらいである。しかし、戦闘難易度は加賀氏が手掛けてきた『ファイアーエムブレム』シリーズよりも難しめに設定されており、特に経験値を自由に稼ぐこともままならないリュナン側のマップは最初からかなり高めの難易度となっているため、ホームズ側との連携が不可欠であるとも言えよう。

 本作はリーベリア大陸を舞台として様々な国が登場し、その国々の事情や国家間の問題が複雑な以外にも、登場キャラが大変に多く、非常に複雑な血縁関係や婚姻関係、主従関係などでキャラ同士が繋がっているため、登場キャラの相関関係を掌握するだけでも一苦労するだろう。しかし、ただ単にややこしいだけではなく、ちゃんとそういう関係となったバックグラウンドが存在しているので、キャラ同士の関係を理解すればシナリオを更に楽しめるだろう。とはいえ、意外なキャラ同士が意外な関係である場合も多く、中には特殊な条件を満たさないとエンディングで報われないキャラや、そもそも加入すらしないキャラもいるので、それらの要素を存分に楽しみたければ、攻略本必須と言えるゲームではある。

 任天堂との訴訟問題というキナ臭い背景を背負ってしまったゲームだが、戦闘難易度こそ高めであるとはいえ、その面白さは加賀氏が過去に関わった『ファイアーエムブレム』シリーズにも勝るとも劣らないと言える。残念ながらゲームアーカイブス化もされていないために、現在プレイするのは少々困難かもしれないが、プレイヤーの期待は裏切らないであろう良作である。

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