"テンガイ艦長、その最期のこと"



 ステージ5Aラストにおいて、テンガイ艦長がテトラもろとも仕掛けた最後の攻撃。その行動の先に確実な「死」が待ちうけていることは、艦長自身が誰よりもわかっていたはずでした。にも関わらず、艦長をあの行動に駆り立てたものは、そして艦長の最後の真意は―果たして何だったのでしょうか?


 サターン版が発売され、初めてこのイベントを見た当時、まず浮かんだ動機は「ガイの死にショックを受けて激昂したから?」というものでした。大切な部下のひとりであり、同時に先立った親友・五十嵐長官の息子でもあるガイ。艦長にとっても子供のように思っていただろう(もちろんそれはバスターやレアナに対しても同様だったでしょうが、ガイは特に気にかけていたのではないでしょうか。配属以前の幼い頃から知っていたのかもしれませんし)彼を目の前で死なせてしまったことに想像もつかないショックを受け、半ば敵討ちとしてあんな行動に出てしまったんだろうか…?それが自分の最初の解釈でした。


 しかし、艦長の人物像を考え直してみたり、他の方々との意見のやり取りを交わすうちに、自身の推論を思い直すようになりました。すなわち、最後のあの行動は我を失った衝動的なものなどではなかったのではないだろうかと。最大の理由は「艦長は刹那の感情だけで行動する人にはどうしても見えない」という意見を頂き、私自身も確かにそうだと考えたからです。そして辿りついた解釈は―「艦長は激昂どころか、逆に冷静に状況判断したうえで、あの行動を起こしたのではないだろうか」という推測です。

 ガイが目の前で死んだとき、予想もしなかった悲劇にテンガイ艦長が凄まじい動揺を受けたこと、もちろんそれは間違いないでしょう。しかし、艦長は的確な判断力を持ち、大局を見据えることが出来る人物です。その艦長ならば、次の瞬間には動揺も一時の感情の高ぶりも振り切り、「この状況を打破するためにすべきことは何なのか?」という現実について冷静に考えることが出来たのではないでしょうか。

 自分よりも遥かに若いバスターとレアナ。無傷のシルバーガンと破損したテトラ。なによりもこれ以上クルーを犠牲にする訳にはいかない。ガイを死なせてしまった今、バスター、レアナ、クリエイタの3人はどうあっても守りたい。守り、少しでも生き延びさせなければならない。―おそらく犠牲となったガイのために、という思いもどこかに存在していたでしょう。しかし、あくまで今行うべきことの主動機は「死者への追悼」ではなく「生き延びるべき仲間の命を守ること」―そして艦長が下した「自分が成すべき最も賢明な判断」、その結果が…自らが犠牲となる「特攻」という行動だったのかもしれません。


『サイゴノ サイゴマデ アキラメルナ……テンガイ カンチョウ ノ サイゴノ コトバデス』
 艦長とガイを失った直後、バスターの漏らした『俺達は…勝てねえのかな?』という言葉に対し、クリエイタはこんな台詞を口にします。

『ワタシニハ…ソウ キコエタ ヨウナ キガ シマシタ…』
 それは弱気になってしまったバスターとレアナへのクリエイタなりの励ましの言葉であり、クリエイタの気遣いから出た「良い意味での嘘」でした。けれど、もし本当に艦長が二人に遺言を残せていたならば、きっと同じことを言っていたんじゃないだろうか…私はどうしてもそう思ってしまうのです。

…残されたバスターとレアナが生きることが二人を守ろうとした艦長の、そしてガイの生きていた証。その重み=継いだ命のぶんも含めて二人は生きなければいけない。だからどんな小さな可能性であっても未来に絶望するな、生きようとすることをあきらめるな…と。


 最後になりましたが、ゴリバーさん、METATRONさん、エストラさん。未熟なものとはいえ、ようやくこうして文章としてまとめあげることが出来ました。ここに至るまでの遣り取りにお付き合いくださったばかりか、貴重なご意見まで頂けたことに対し、心よりお礼申し上げます。



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