"あとがき"


 今回の話[Regeneration(再生)]は、バスターが「西暦2520年7月14日」の出来事から立ち直るまでの過程を綴ったものです。バスターは、物語中でも書いていますが、おそらく実戦に参加し、敵である「人」を殺した経験があるのでは?と思います。「人」を殺す感覚・思いが一体どんなものなのか、私にはもちろん分かりません。けれど、決して気持ちのいいものなどではないはずですから、彼は、初めて心を開いた仲間であるレアナやガイに、そんな思いをしてほしくないと思っていたはずです。特にレアナ。彼女はいわば「純粋培養」で育てられた少女です。バスターでなくとも、彼女が「人を殺す」行為に耐えられるのか…?とは心配してしまうことでしょう。そんな彼の願いが皮肉にも、「倒すべき敵となる人間そのものが全滅する」という最悪な形で実現してしまったのが、「7月14日」の出来事だったわけです。そこから自己嫌悪に陥ってしまったバスターを救い出すことが出来るのは、同じ「軍人」としての先輩であり、精神的な「父親」であるテンガイ艦長、そして当のレアナなのではないかと思い、このエピソードを書きました。

 考えるに、あの出来事からいちばん早く立ち直ることが出来たのは(テンガイ艦長を除いて)レアナなんじゃないかと思うのです。彼女の「必要以上に明るく振る舞おうとする性格」や「周りに気を配り過ぎる性格」を考えると、レアナはきっと、落ち込んでいる姿を仲間達に見せることは出来なかったのではないでしょうか。そんな姿を見られれば、仲間に迷惑をかけたと余計に落ち込んでしまう性格なのですし。そして、こんな言い方は酷ですが、彼女には失って悲しいと思う者が、地球上には希薄でした。もちろん、育ての親となった施設の職員や、生きていると信じている(実際は既に死んでいますが)両親の存在はあります。しかし、それでも彼女の性格から考えると、心の中では悲しくても泣いても仕方がない、それよりも明るく振る舞うことで、周りを元気づけたいと思う気持ちのほうが強かったのではないかと思うのです。だからこそ、その姿に最後にはバスターも気付き、救い上げられる…という形で締めました。

 この約二週間後、今度はガイが立ち直る過程を書いたものが、(伝)勇者連合さんの発行本『銀銃DI』に載せて頂いた『P.S.』です。こちらでも、今回のバスターのように、テンガイに心中を打ち明けるガイの姿が出てきます。意識的に対比させて書いてみたつもりなのですが……成功したかどうか……今回の反省材料です。

 ところで『P.S.』では、ガイは両親を失った悲しみを告白していますが、バスターにも、嫌悪していたとはいえ実の「父親」が存在していました。バスターがこの「父親」の死をどう思ったのか、それは敢えて、今回の話では書きませんでした。彼の育った複雑な家庭環境を考えると、「父の死」を実感し始めるのは、もっと後、一旦、落ち着いてからではないかと考えたからです。そのエピソードを形にするかどうかは……正直、分かりません。ですが、気まぐれな私のこと、ある日、突然書き始めてアップしているかもしれません(苦笑)

 長くなりましたが、最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。目を通して頂けた、それだけで幸いです。

2001.09.27.



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