[Because "STONE COLD" said so.]


 人は何度、輪廻するのだろう。そしていつ、その輪廻から抜け出せるのだろう。紀元前10万年の地球に独り残されたクリエイタは、幾度となくそう考えた。

 全ての元凶はあの「石」なのか?もしくは「石」が語った「人の犯した過ちの代償」なのか?それとも、双方のエゴがぶつかりあった結果、輪廻を繰り返しているのだろうか?……結論は、いつも出なかった。

(私がここに残された意味……それは人類を再生させること。だからこそ私は、バスターとレアナのクローンをこうして育てている。だが、人類が再生し、再び繁栄を築いたところで、それが「石」の意にそぐわない道だったとしたら、再び人類は同じように全滅させられるのだろう。そして私もまたこうして残されて……だとしたら、一体いつになれば、この「輪廻」を断ち切ることが出来るのだろうか。「輪廻」を断ち切ることが出来れば、私はバスターをはじめとしたTETRAクルーのメンバーといつまでも楽しく過ごせたのだろうか?)

 クリエイタはしばし夕陽を見つめながら物思いにふけることがよくあった。バスターとレアナと「約束」を交わした日の夕暮れに、その夕陽達は酷似していた。そばにバスターとレアナが居ないという条件を除いて。

 「寂しい」という感情には、もう十何年もかかっている。慣れてきてしまったと言ってもいいかもしれない。自分はロボノイドだからなんとか耐えられているのかもしれないが、これがもし人間だったら、こんな寂しい思いには耐えきれなかっただろう。だからこそ、「石」はクリエイタを次世代の「創造主」として残したのだろうか?それでも寂しさには変わりはなく、クリエイタは幾度も耐え切れない孤独と戦っていた。

「『石』ヨ……。アナタハ 地球ノ生命を導く者デス……ケレド、何故コンナ残酷ナ仕打チヲシタノデスカ?私ノ『家族』ヲ奪イ、ソシテコノ場所ニワタシダケガ残ッテイル……『石』ヨ。アナタハ 残酷ナ存在デス……」

 クリエイタはある日、苔生した「石」に対して、そう呟いたことがあった。そしてその場所から立ち去ろうとした瞬間、頭の中にあの「声」が響いてきた。

「私のやっていることは残酷かもしれません。けれど、人はやり直さなければいけなかったのです。だから、私は人を全て消し、貴方に希望を託したのです」

 クリエイタはハッと振り返り、今の「声」が「石」から発声されたものだとすぐに分かった。けれど、それでもクリエイタはキッパリとこう答えた。

「ソレハ言エルカモシレマセン……ケレド……ヤハリアナタハ 冷酷ナ存在デス……」

 そう言い残すと、クリエイタは「石」に再び背を向け、連邦軍本部跡へと戻っていった。その日の青空も赤い夕陽も、あの時と同じ風景だった。



あとがき


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