シルミラ元ネタ解説集



●シャイナ・ネラ・シャイナ(Sinna-Neutlarva-Sinner)
<ゲーム内設定>
……「別れの日」以来、異常化した世界を元に戻すメシアとして、過去の世界が彼女を残した。頑丈なドームで保管されていたが完全ではなく、体内のどちらの属性も活性化できない状態で共存しているという第3の種族となってしまった。そのため、従来の兵器を使用せずに、パラサイトという補助兵器を使って任務を遂行する。前世の記憶のない状態で甦ったシャイナだが、あまりそのことは気にしていないようで、世界再建のヒロイン気分を楽しんでいるようである。
……「Sinner」は(特に宗教・道徳上においての)「罪人」という意味。また、「neut」は「中立」、「larva」は「幼生」を意味し、直訳すれば「中立の幼生」となる。
……「別れの日」以降、シャイナは救世主として目覚めたものの不完全な覚醒であったため、「Neutlarva」は、シルエット・ミラージュどちらでもない中途半端な存在として生まれてきた彼女の状態をそのまま表していると考えられる。また、キリスト教の「七つの大罪」をモチーフとする寄生体(下記参照)を武器とすることや、地獄(後述するゲヘナのこと)を体内に持つことからも、シャイナはまさに「罪人」の呼び名を背負わされているキャラであると言える。

[七体の寄生体と七つの大罪]
・スローサ="sloch"=「怠惰」
・グラットニィ="gluttony"=「飽食」
・カビタス="covetous"=「強欲」
・アンガラ="anger"=「憤怒」
・エンビア="envy"=「嫉妬」
・ラスティ="lust"=「肉欲」
・プライディー="pride"=「高慢」

●ゲヘナ(Gehenna)
<ゲーム内設定>
……シャイナの体内に内蔵されている、サポートプログラム。彼女が無事に目的地へ着くためのアドバイスを行う。エドを再起動させて世界を再建するためのプログラムを持っており、謎多き存在である。
……本来に意味していたのは現在のパレスチナ、かつてエルサレムの城門の外に実在し「ゲーヒンノーム(Ga-Hinnom)」と呼ばれた谷底のゴミ捨て場であり、処刑された罪人や適切な埋葬をされなかった者の遺体が埋められた場所でもあった。それらのゴミを処理するために燃え続けていたので、常に酷い悪臭を放っていた。そこから転じてキリスト教では「地獄(Hell)」と同義の単語となった。
……前述の「ゲーヒンノーム」=「ヒンノムの谷」という意味のヘブライ語を語源とする「ゲヘンナ」というギリシャ語が由来となって、「ゲヘナ」という英語での呼び名が生まれた。
……「救世主」でありながら同時に「罪人」であるシャイナが抱えこむ存在として、ふさわしいネーミングである。

●ハール(Har Birthclod)
<ゲーム内設定>
……ミラージュの支配者。己の力に絶対的な自信を持ち、自分以外の生物をクズとしか見ない典型的なミラージュ型思考。シャイナの起動を気にしてあの手この手で妨害しようとし、ガーディアン・エンジェルを造り上げる。しかし、こうした執拗なシャイナへの攻撃が、彼女の使命感に火を付けることとなる。
……『ヨハネの黙示録』に記されている、神と悪魔の最終戦争=ハルマゲドン(Harmegiddon)が由来。メギドもそうであるが、「Birthclod」とは「クロッドより生まれし者」という意味である。

●メギド(Megido Birthclod)
<ゲーム内設定>
……最強の力を持ってシルエットを支配している存在。身なりは紳士的だが、性格は決してそうではなく、気が荒く凶暴。敵とみなした相手には容赦はしない。今の世界に満足しているわけではなく、シャイナの力が分かってくるにつれ、彼女を利用して元の世界へ戻ろうと接触する。
……ハールと同じく、ハルマゲドンが名の由来。二人は元はクロッドが「知恵」のハールと「力」のメギドに分裂して生まれた存在であるため、ペアで元ネタに繋がっている。なお「Harmegiddon」とはヘブライ語で元々は「メギドの丘」という意味を指す言葉で、英語での綴りは「Armageddon」である。

●ゾファルMT&SP(Zohar-Metatron&Zohar-Sondalphon)
<ゲーム内設定>
……「別れの日」の被害を受けた生物でただ1人、体内に2つの属性を共存させている。しかし、常に両属性が活動している訳ではなく、ミラージュ(サンダルフォン・女性)が機能しているときは、シルエット(メタトロン・男性)は仮死状態となり表面には現れない。逆も然りである。一応ミラージュについている様子だが、一匹狼的なところがあり、ハールの命令に従順というわけでもない。
……ゾファルの真の名は「セーフル・ハ・ゾーハル」。ゾファルはハールに記憶を創り出すシステムを取り付けられ、己を「ハーフ」と認識していたが、実はハールの創り出したガーディアン・エンジェルの一体であった。最終的に記憶を創り出すシステムを取り除かれることで、「セーフル・ハ・ゾーハル」としての真の姿を取り戻し、シャイナと対峙するが、この姿こそが、彼(彼女)の本当の姿と言える。創られていた偽の記憶がなくなったために、過去にあった出来事を全て思い出している。それは、ゾファルもシャイナと同じ過去の遺産でありながら、彼女のように「希望をになう使者」になれなかったという悲しい事実だった…。全ての過去を知ってしまった悲しみから、涙を流しながら戦う。
……メタトロンとサンダルフォンは双子の大天使=アークエンジェル(Archangel)。特に兄のメタトロンは数ある天使の中でも特別な偉大なる天使であり、「神の代行者」「小ヤハウェ」「契約の天使」「天使の王」「万物の創造主」とまで呼ばれている存在である。異説ではメタトロンは血に飢えた残酷な天使であるという説もあるが、いずれにせよ、唯一神に最も近き特別な天使であることには変わりない。
……なお、ゾファルの真の姿の呼び名である「セーフル・ハ・ゾーハル(Sephr ha-Zohar)」とは、ユダヤ教のカバラ経典「光輝の書」の正式な名称である。
……アークエンジェルは下級第二位と階級的には低いが、実際はトップランクの権力と能力を誇示し、神の御前に立つことを許された天使達である。有名な四大天使こと「火のミカエル」「風のラファエル」「水のガブリエル」「土のウリエル」も、熾天使=セラフィム(Seraphim)となる前はこの階位に属していた。
……元ネタが双子であることからも、ゾファルが二つの人格・属性を同時に持っていることは納得がいく。更に偉大なる高貴な天使であるということも、シャイナのライバルとして、じゅうぶんに見合うだけの存在ともいえる。

●モーセ(Moses)
<ゲーム内設定>
……シャイナの眠るシェルターを見張っていたミラージュ兵。しかし、捨てゴマとされたために一族に背を向け、シャイナの行動を手助けするようになる。自分が勝てなかったシャイナを尊敬して、彼女を「アネゴ」と称する。愛棒のエクスデスを使い空間に穴を開け他の空間と繋げることで、離れた距離を瞬時に移動したり、様々な物を呼び出すことが出来る。ただ性能的にイマイチで、1回の転送は40秒が限界。それ以降はかなり無理をしての作業となる。
……「モーゼ」は古代イスラエルの立法・指導者。ユダヤ人でありながらエジプト王の弟として育てられたが、エジプトで奴隷同然に迫害されていたユダヤ人達を率いてエジプトを脱出し、約束の地カナンへと導いた。「十戒」のエピソードでも有名な人物である。
……ゲーム中での空間を操り瞬時に移動させる能力は、モーゼが海を割る奇跡を起こしてユダヤ人達をエジプト軍の追撃から逃れさせた有名なエピソードと重なる。また、モーセがミラージュの裏切り者であるということも、モーゼ(彼もユダヤ人を救うために、エジプト王である義兄に背くこととなった)と共通する点である。

●グレゴリ(Grigori Shemhazai)
<ゲーム内設定>
……本名はグレゴリ・シェムハザイ。シャイナの眠るシェルター監視部隊のシルエット側のリーダーを気取っている。本当の任務は見張り役なのだが、シルエット支配者であるメギドに一泡吹かせようと勝手な行動を取り、地下から大型掘削機を使用してシェルターに侵攻していた。掘削機に取りつくことで、ある程度自由に操れるようである。旧世界では土建作業にいそしむ傍ら、へヴィメタバンド「フォーリンエンジェル」のボーカル&リーダーだったため、激しい性格を持つ。
……グレゴリとは、堕天使の一団の呼び名。シェムハザイはそのなかの統率者のひとりであり、「見張る者」という意味も持つ。
……ゲーム中での立場(シャイナの眠るシェルター監視部隊長)も明らかに元ネタを彷彿とさせるキャラ。「別れの日」以前には「フォーリンエンジェル」という、そのままずばりなバンドのメンバーだったという裏設定も、細かいものがある。

●パラケス(Paracelsus)
<ゲーム内設定>
……本名はパラケルスス。そこそこの相手を求めて徘徊するシルエットの戦士。シャイナ討伐の話を耳に入れ、わざわざラキアの街までやって来た。そのため、ちょっと疲れている。仲間を持たない一匹狼だが、仲間にする程の腕がないとの噂もある。必殺技は愛剣錬金丸を使った「秘剣とんぼ返し」だが、まだ誰にも見せたことがない。今回は戦う場所が悪かったため、街の住人からゴウゴウと非難を受け、えらい目に遭ってしまう。
……パラケルススは実在した中世ドイツの錬金術師。特に人造人間ホムンクルスを生み出す実験にまつわるエピソードは有名である。

●ゴリアテ(Goliath the Philistin Warrior)
<ゲーム内設定>
……ミラージュに、そのナイスな腕前を買われ雇われている……と思い込み、いい様に使われている哀れな労働者。シルエットは皆そうだが、彼も自分は強いと思っている。ミラージュが対シャイナ用に急遽開発した属性ガン・アルター2の警護にあたる。ザコを大量に引き連れているのは、自分の活躍を見せつけるためではなく、いざという時に投げつけるためである。偶然シャイナと接触するが、内心ではちょっと焦っていた。過去の世界では何かの選手だったらしく、「ペリシテウォリアー」とは、そのときの異名らしい。
……旧約聖書『サムエル記』に登場する、ペリシテ人の巨人。イスラエル王ダビデに石投げ紐で撃ち殺された。

●デュナミス(Dyunamis06)
<ゲーム内設定>
……市街地警備用に造られたガーディアン・エンジェル。実戦用にこぎつけた最も初期のタイプである(なお、ナンバーが大きいほど、低レベルのガーディアン・エンジェルを指す)。そのため体を構築するプログラムが単純で、転送も楽に出来るらしい。性格が非常に幼くワガママだが、親と慕うハールの命令には従順である。シャイナと同じく体の左右で属性が異なり、各々の側面から、その属性のアームを伸ばして攻撃する。
……中級第二位の力天使=ヴァーチャー(Virtue)のギリシア語での別名であるが、同時に中級第三位の能天使=パワー(Power)の別名でもある。ヴァーチャーは最初に神に作られた天使であり、第一天シャマインと第二天ラキアを繋ぐ回廊を警護する役割を持つ。また、体を持たない精霊体にして、キリストの受難を表す天使でもあり、それを象徴する赤い薔薇を持った姿で表されることが多い。
……これらはそのまま、ゲーム内設定にもあてはまるモチーフである。ゲーム中でも最初のエリア名はシャマインで、第2エリア名はラキア。更に、デュナミスはラキアで最初に遭遇するガーディアン・エンジェルである。「お花買って〜」という台詞が指す「花」とは、前述の「赤い薔薇」を指している可能性が高い。
……しかし、第3エリア・シェハキムを警備するガーディアン・エンジェルマラキム(Malakim05)も、デュナミス同様にヴァーチャーの別名であり、同じくパワーの別名でもある。これらのことや、ゲーム中でのそれぞれのナンバー(デュナミスは06、マラキムは05)から推察すると、逆にデュナミスが中級第三位(6番目)のパワー、そしてマラキムが中級第二位(5番目)のヴァーチャーをモチーフとしているのではないか?とも考えられる。また、対立するものを調和させて均衡させることが、中級天使(特にパワー)全体の役割であるが、それ故に、善悪の間で揺れやすい性質を持っている。性格が幼くわがままで精神不安定な印象を受けるゲーム内でのデュナミスの設定には、このパワーの性質が反映されているのかもしれない。
……だが、「実戦用にこぎつけた最も初期のタイプのガーディアン・エンジェル」「ラキアで出現する」というゲーム中の設定を考えると、やはりこのデュナミスはゲーム上の設定階位こそ異なれ、ヴァーチャーが元ネタだと考えるのが自然ではないかと思われる。
……なお、天使の階位名と各天界名は、一般に以下の通りである。天使は階級が下がるにつれて、人間に身近な存在となっていく。天界は第一天シャマインが最も地上に近く、対称的に第七天アラボトは神の玉座がある神域である。

[天使階位]
1:上級第一位…熾天使=セラフィム(Seraphim)
2:上級第二位…智天使=ケルビム(Cherubim)
3:上級第三位…座天使=スローンズ(Thrones)
4:中級第一位…主天使=ドミニオン(Dominion)
5:中級第二位…力天使=ヴァーチャー(Virtue)
6:中級第三位…能天使=パワー(Power)
7:下級第一位…権天使=プリンシパリティ(Principality)
8:下級第二位…大天使=アークエンジェル(Archangel)
9:下級第三位……天使=エンジェル(Angel)

[天界]
・第七天:アラボト(ARABOTH)
・第六天:ゼブル(ZEBUL)
・第五天:マティ(MATHEY)
・第四天:マコノム(MACHONOM)
・第三天:シェハキム(SHEHAQIM)
・第二天:ラキア(RAQIA)
・第一天:シャマイン(SHAMAIN)

●パウロ(Paulus)
<ゲーム内設定>
……「別れの日」以前は動物保護団体にいた少年。気弱で、自分の力で動物を救ったという実感がなかったためか、いつも力が欲しいと願っていた。人間体の時はシルエットとは思えないほど、か弱い少年だが、ひとたび狼に変身すると文字通り獣と化す。変身前と後での意識の繋がりはないらしく、両者は全くの別人と言える。シェハキムの山中にあるシナゴーグキャッスルをメギドに与えられ、城主を務めている。変身に関しては、月が大きく影響しているが、それは必ずしも「実物」である必要はないようである。
……キリストの使徒のひとり。キリストの生前には弾圧者だったが、彼の死後、回心してキリスト教の伝道者となった経緯を持つ人物である。
……ゲーム中のパウロの二重人格の元ネタは「弾圧者」と「伝道者」の二つの顔から来ていることは間違いないと思われる。

●マラキム(Malakim05)
<ゲーム内設定>
……カメレオンのような長い舌の先に付いた顔から外部の属性エネルギーを吸収して、自分の属性を作ってしまうガーディアン・エンジェル。本体は属性を吸収しきらない限り姿の見えない状態で攻撃してくる。舌先の小さな顔は相手の神経を逆なでするような台詞ばかり吐き、属性エネルギーを吸収しやすく出来ている。
……デュナミスの項目で前述したとおり、中級第二位の力天使=ヴァーチャー(Virtue)および、中級第三位の能天使=パワー(Power)の別名である。しかしガーディアン・エンジェルとしてのナンバーこそ中級第二位(05)だが、「属性を自分で変えられる」という能力は、むしろ「善悪の間で揺れやすい」性質を持つパワーを彷彿とさせることから、このマラキムのモチーフとなっているのはパワーのほうである可能性が高い。

●サムソン(Samson Hairpower)
<ゲーム内設定>
……本名はサムソン・ヘアパワー。メディアシティの管理者・デリラのボディガード。デリラの「いつかTVに出演させてやる」との言葉にのせられて、身の回りの仕事をしている。シルエットでありながらミラージュに仕えていることは、あまり気にならないらしく、偉い奴のそばで自分も偉そうにしていることが楽しい様である。しかし、もともと統制の取れた街中でのボディガードには退屈していたため、シャイナ撃退に心を燃えあがらせている。旧世界では、マフィアの首領のボディガードだったが、その頃から力ばかりでオツムのほうはイマイチだったようである。
……聖書『土師記』に登場する人物。生まれながらに神に捧げられた「ナジル人」として誕生するが、その懐妊が彼の両親に伝えられた際、ナジル人である彼の髪を決して切ってはならぬ、という警告を受ける。成長したサムソンは怪力無双の大男となり、イスラエルの敵であるペリシテ人を次々と打ち破る英雄となった。しかし、愛人デリラの裏切りによって、怪力の源である髪を睡眠中に切られてしまい、目をえぐられて神殿の地下牢獄に幽閉されてしまった。サムソンは己の罪を悔い、そして、伸び始めた髪の毛に再び力が宿ったとき、最後の力を振り絞って神殿の柱を引き倒し、多くのペリシテ人を道連れにして生涯を終えた。
……ゲーム内でも怪力の大男でデリラにいい様に扱われているという点では、元ネタと通じるものがある。なお、デリラとの一連のエピソードは映画化(題名は『サムソンとデリラ』)もされており、同じく映画化されている『十戒』と並んで、聖書内では有名な伝承である。

●デリラ(Delilah the Beauty)
<ゲーム内設定>
……本名はデリラ・ザ・ビューティ。TVやラジオ、インターネット等の情報媒体を利用して、各地に散らばるミラージュの統制を図るメディアシティの管理者。ボディガードのサムソンを従える美食家でもある。ハールから直接指令の届かないランクの低い者は、この情報を元に行動することが多い。しかし、旧世界では敏腕プロデューサーかつ人気司会者だった彼は、口が上手く、何事も口先だけで解決しようとする。ミラージュの情報とはあまり関係ない娯楽番組を数多く作っていても、ハールには上手くごまかせていると思っている。シャイナの出現をいち早くキャッチした彼は、モーセの足取りから彼女がメディアシティに入る可能性が高いことを知り、TV局内で彼女を倒す実録番組を作成しようとする。
……『土師記』に登場するサムソンの愛人。ペリシテ人に買収されたスパイであり、サムソンの怪力の秘密を探るために彼に近づいた。言葉巧みにサムソンを誘惑して、彼の力の源が髪の毛にあることを聞き出し、サムソンの就寝中に髪を切ってペリシテ人に引き渡した悪女である。
……ゲーム中では性別は男になっているが、サムソンをうまく騙して扱っている点は元ネタと共通するところである。

●サラ(Sarah)
<ゲーム内設定>
……メディアシティのTV局内で制作されている人気番組「サラの死んだら負けよ」の司会者。毎回ゲストを相手に、ゲームバトルと称してギャンブルをメインとした戦いを挑んでいる。普段はバニーガールの看板の裏に隠れていて顔は出さない。旧世界では超売れっ子アイドルだったが、ギャンブルにハマりすぎて自己破産したという豪快な娘だった。
……「サラ」という名前は旧約聖書に登場するアブラハムの妻にしてイサクの母が有名だが、ゲーム中の性格などを見る限りでは、旧約聖書外典に登場する同名の別人物のほうがモデルと思われる。外典のほうの「サラ」は悪魔に取りつかれるという災難に遭っており、ギャンブルという悪魔にハマったシルミラ内でのサラに通じるものがある。

●ファウスト(Georg Faust)
<ゲーム内設定>
……非常にナルシストなシルエットのダンサー。自分の美を求める生き方がデリラと共感する、という理由でメディアシティに居座っている。TV局内に用意されたステージでスポットライトを浴び、多くの観客を魅了するのが一番の楽しみ。サラとは、とかく噂があるらしい。旧世界では、路上で踊る売れないパントマイマーだった。
……16世紀ドイツに存在し、半ば伝説ともなっている人物。全知全能を望んで悪魔メフィストフェレスに魂を売り渡したという有名な伝説がある。この伝説を素材としたのが、かの有名なゲーテ作『ファウスト』である。

●プリンスダム(Princedoms07)
<ゲーム内設定>
……体内にフィールドを持ち、最大級の大きさを誇るガーディアン・エンジェル。しかしナンバーから分かるように低ランクのガーディアン・エンジェルで性能も高くないため、戦闘兵器としてはあまり重要視されていないらしい。現在は属性兵器としての発展型ともいえるヨナ特殊部隊の性能実験フィールドとして、体内を提供する羽目となっている。2つの頭部を持ち、ミラージュ側をシープ、シルエット側をゴートという。
……「プリンスダム」という名前は、下級第一位の権天使=プリンシパリティ(Principality)の別名である。プリンシパリティは個人よりも大きな単位の存在、つまり国家の運命や文明の隆盛、そして世界の歴史をも司る天使である。文明の監視者にして、信仰の擁護者でもあり、その性質上、厳格な善悪の観念を持っている。
……ゲーム中に登場するプリンスダムが巨大な体を持っているのは、キリスト教における広範囲な役割を反映しているのではないだろうか。2つの頭部を持っているのも、他の天使よりも善悪の観念が強いことを意味しているのではと思われる。また、ハールの生み出したガーディアンエンジェルには全て天使の階級名がつけられているが、これは前述のデュナミスやマラキム達にも当てはまる(デュナミスの項を参照)。ゾファルに対しては例外的に、メタトロンとサンダルフォンという個人名が付けられている。

●ヨナ特殊部隊(Jonah)
<ゲーム内設定>
……特別編成された戦闘兵器軍団。生体マシンであるマスターコマンダーと、ただのマシンであるコマンダーとソルジャー、そしてアサシンで編成されている。属性を変える実験及び実戦での実用性を見るために、ハールに生体改造された人間達である。
……「ヨナ」は旧約聖書『ヨナ書』に登場するヘブライ人の預言者。神の意に逆らったために海に投げ出され、巨大な魚に飲みこまれたが、神の命に従った魚によって再び陸地へと吐き戻された人物である。
……ヨナ特殊部隊も巨大なプリンスダムの体内に居たという点で、原典のヨナと共通する項目である。

●ガルガリン(Galgalim03)
<ゲーム内設定>
……居合わせたクピトやディブルを食べることで外部からの属性エネルギーを吸収し、自分の属性を変化させるガーディアン・エンジェル。人としての人格は既になく、ただただ指令通りに動く、半ば機械のような存在になってしまっている。
……キリスト教の上級第三位の座天使=スローンズ(Thrones)の別名。オファニム(Ophanim)とも呼ばれる(「オファニム」という別名はヘブライ語では「輪」の複数形を表し、また、天球を表すとされている)。緑色に燃える車輪に喩えられる姿をした、異形の天使である。具体的には4つの顔、4つの翼、直線的な脚を持ち、その脚の裏は子牛のようであると言われている。また、4つの顔は、それぞれ牡牛、獅子、鷲、青年の顔をしており、それぞれが占星術では金牛宮、獅子宮、天蠍宮、宝瓶宮を表している。

●セーラ(Seraphim01)
<ゲーム内設定>
……ハールの最愛にして最強のガーディアン・エンジェル。自己の生命維持を最優先に考えられて製造された。体を構築するプログラムが膨大なため、重要な場面での転送しか行われない。
……羽根の1枚1枚全てに孔雀のごとき目がついた6枚の翼と4つの頭を持つ、上級第一位の熾天使=セラフィム(Seraphim)。純粋な光の思考として神と直接に交わり、神の愛の炎と共振する存在。神の栄光を直接授かるという名誉ある地位にある天使である。トリスアギオン("Trisagion"=「三聖頌」)の歌詞がヘブライ語で刻まれた炎の短剣サンクトゥス(Sanctus)、もしくは旗を持ち、神の玉座の周囲を「聖なるかな」と常に唱えながら飛び回るとされている。なお、「トリスアギオン」とは唯一神「ヤハウェ(YHWH)」=「テトラグラマトン("Tetragrammaton"=「神聖なる四文字」)」=「アルファにしてオメガ」を称える歌であり、その歌詞は「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、昔いまし、今いまし、後きたりたもう、主たる全能の神」という内容である。
……ゲーム中のセーラの姿形や台詞は、この原典のイメージに準じてデザインされていることは明らかである。

●クロッド(Clod)
<ゲーム内設定>
……旧世界で、属性分子を操作して産み出されていたミュータント達の中でも、最も危険な実験の素材にされていた少年。実際にはハールとメギドの合体途中の電子体だが、過去にされた行いに対しての怒りは、その姿からも感じ取れる。旧世界でエドに直結されていたクロッドは、ミュータントとしての力を発揮し、旧世界に対する復讐のために、エドの暴走を引き起こした。これが「別れの日」の原因である。
……そのまま英語で「土くれ」を指す単語。
……人は土くれから作り出された、というキリスト教思想が由来と思われる。

●クピト(Cupid)
<ゲーム内設定>
……命令に従順で決して逆らわず任務にあたる、最も低ランクのミラージュ。一見するとかわいらしい女の子のようだが、その仮面の下には、石のように乾いたミイラのような素顔が隠されている。器用で、様々な機械の操縦を行うことも出来る。
……ローマ神話の美の女神ビーナスの息子であり、愛を司る少年神キューピッドのこと。
……キリスト教・ユダヤ教が世界観の根底にあるシルミラ本来の呼び名を考えると、下級第三位の天使=エンジェル(Angel)のほうが合っているのだが、クピトの場合は世界観よりも名前の響きなどを優先したため、この名称となったらしい。

●ディブル(Devil)
<ゲーム内設定>
……クピトと違い不器用で、武器は粗野なものしか持てないが、その代わりに自らの頭を爆弾として投げつけることが出来る、最下級のシルエット。なお、頭部のカボチャの中にはロウソクが1本立っているだけである。自分の名を上げたいために、シャイナを襲っている。
……そのままずばり、キリスト教圏において悪魔を意味する。
……クピトの命名には前述のような理由があったが、ディブルのほうはこのままOKとなったようである。

●ザカリアス(Zacharias)
<ゲーム内設定>
……メギドには劣るものの非常に強いパワーを持つ、シルエットの実力者のひとり。力に対して非常に興味を持ち、強い相手と戦うことに生き甲斐を感じている。メシアであるシャイナの噂を聞きつけ、彼女に戦いを挑んでくる。
……「狂皇」の別名から察するに、同名のローマ教皇が元ネタかと思われる。
……PS版復活キャラ。最初のメギド戦までノーミスで辿りつくことが出来れば出現する。

●ケルヴ(Cherub02)
<ゲーム内設定>
……力での能力ではなく精神エネルギーを操作することをメインにおいたガーディアン・エンジェル。そのエネルギーにより、一定ランク以下の属性生命体の精神を乗っ取り、自分の道具として扱うことが可能である。パワー的にはセーフル・ハ・ゾーハルとほぼ同ランクだが、戦闘時に大量の犠牲が出るため、あまり戦闘には参加しない。ガーディアン・エンジェルの中で最も優秀な知能を誇り、自分達ガーディアン・エンジェルが、シャイナの実験を行った際に生み捨てられた残骸から生み出されたことを知り、ハールを憎みだしている。
……エデンの園の番人・神の玉座の担い手・聖櫃の守護者とされる、上級第二位の智天使=ケルビム(Cherubim)。ヘブライ語での意味は「知識」叉は「仲介者」という。知識を司り、しばしば翼を持った天童、あるいは翼の生えた子供の頭部で象徴される。
……PS版復活キャラその2。知性に重点を置いたガーディアンエンジェルという点では、まさしく原点通りのキャラと言える。PS版では分岐次第で最後のボスとなる存在である。

●ユダ(Judas Iscariot)
……有名な「イスカリオテのユダ」。姓である「イスカリオテ」は「金」または「賞金」を意味すると同時に、ヘブライ語では「窒息により」という原義を持つ。元はキリストの12使徒の一人であったが、銀貨30枚のためにキリストを裏切るも、後に己の罪を悔い、絞首自殺した。故に、その生涯はまさにその姓の持つ意味そのものである。
……PS版でも復活出来なかった没キャラ。「裏切りのユダ」の呼び名を持ち、エリア6〜7間に出現する予定だった、シルエットの隠しボス。金が彼女(シルミラ版では女性)の力の源であるためか、金に異常な執着を示し、その力を愛貨シルバーに与えて武器としている。メギドの彼女的存在であったらしい。

●ハシュマリム(Hashmallim04)
……中級第一位の主天使=ドミニオン(Dominion)の別名。その名は支配、主権、統制を意味し、天使の務めを統制する天界の行政官。神の言葉をあまねく知らしめるために様々な活動を行う天使にして、神の意志を行動に移す実行部隊の長である。また知恵を司る精霊であるともされている。
……PS版でも復活出来なかった没キャラその2。エリア3のパウロの前後に出現予定だったガーディアンエンジェル。空間に属性のエネルギーを与えることができ、その空間は同じ属性のものを引き寄せる性質を帯びている。しかし、完成までにハールがかなり手を加えたため、人としての感覚(この場合、ハールの命令をどこまで聞くかということが大事)がかなり失われており、ハールに対しても反抗的であった。そのため、シャイナにぶつけることはなく、洋館にあつらえた専用の空間で永久に遊んでいるという名目で閉じ込められている。

●ネブカドネザル(Nebuchadnezzar)
……紀元前6世紀に存在したバビロニアの王。
……ユダやハシュマリム同様、PS版でも復活出来なかった没キャラその3。エリア4のファウストの前後に出現予定だった、TVタワーの老監督。自分の領域に入った者は全て役者として扱うため、シャイナにも様々な演技を要求してくるはずだった。


参考資料:「シルエットミラージュ公式ガイドブック」(ケイブンシャ)

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