No.118…"嘘つき姫と盲目王子"(2018.5.31/Nintendo Switch/開発・販売:日本一ソフトウェア)
No.118…"嘘つき姫と盲目王子"(2018.5.31/PS4/開発・販売:日本一ソフトウェア)
No.118…"嘘つき姫と盲目王子"(2018.5.31/PS Vita/開発・販売:日本一ソフトウェア)

 昼でも薄暗い闇に包まれた深い森。さらには人食いの化け物までが住むそんな森に、一匹の人食いの狼がいました。その狼は大変美しい歌声を持っており、毎晩、崖の上から月に向かって歌っていました。

 その歌声に惹かれて森へとやって来たのは、この深い森に囲まれた小さな王国の王子。王子は狼の歌をとても気に入り、毎夜、狼が歌い終わると崖の下から大きな拍手を贈るほどでした。最初は王子を食べてやろうかと思っていた狼でしたが王子が自分の歌を聞いてくれることが狼はいつの間にか嬉しくなり、いつしか王子の拍手が楽しみで歌うようになっていました。

 しかしある晩、歌い終わっても拍手は聞こえてきません。不思議に思った狼が崖から覗き込むと、なんと王子が一生懸命に崖を登って来るではありませんか! 「この姿を見られてしまう……!」と動転した狼は、とっさに腕を振り上げ、王子を崖の下に突き落としてしまいます。しかもこのとき、狼は王子の両目に致命的な怪我まで負わせてしまっていたのでした。

 盲目となって王族としての地位を剥奪された王子が塔に幽閉されていることを知った狼は、森の魔女の元へと急ぎます。盲目の王子を魔女の元まで連れてくるために、彼の手を引いて一緒に歩ける姿を手に入れるために。魔女は美しい歌声と引き換えに狼に姫の姿に変身する能力を与えます。狼の力が強くなる月明かりには注意しろと釘を刺して。

 姫の姿となった狼は自分は隣国の姫だと嘘をつき、王子を連れ出します。王子の目を治してもらうために森の魔女の元へと向かう二人の切なく小さな恋と冒険の物語の始まりでした……。

 絵本のような形式で物語が語られるパートと、アクションゲームとしてのパートとにこのゲームは大きく二つに分かれています。絵本パートは女性声優による朗読で切なくも美しいのですが、それに加えてアクションゲームとしてのパートがあるからこそ、このゲームは名作たり得ているのだと、実際にプレイしてみるとわかります。

 狼は本来の姿の人食い狼の姿でなら森の化け物も高所からの転落も何も怖いものはない存在なのですが、傷つけることしか知らないその恐ろしい手では盲目の王子の手を引いて一緒に歩くことは出来ません。姫の姿になれば王子の手を握って一緒に歩くことが出来るのですが、非常にか弱くなってしまい、森の化け物には王子を守る以前に呆気なくやられてしまいますし、少しでも高いところから落ちただけでも死んでしまいます。端的に言えば、狼は狼と姫の姿を選んで頻繁に変身して王子を守りながら、一緒に森の奥深くに住む魔女の元へと進む必要があるのです。

 この、狼と姫の姿でそれぞれ出来ること&出来ないことを考えて、さらにはパズル的な仕掛けも解きながら姫と王子を森の奥へと導く操作を繰り返すうちに、二人に対してとてもいとおしい感情が湧いてきます。私は最初はこのゲームは絵本パートだけでじゅうぶんで、アクションパートは必要ないだろうと思っていましたが、すぐにそれは間違いだと気づきました。アクションパートで手に手を取って前へと進む姫と王子の姿を見せられるからこそ、二人、特に姫への感情移入度が段違いに深くなるのです。

 最後のステージはさすがに一筋縄では行きませんが、私は自分でも気づかないうちに本当に泣きながらプレイしていました。王子を懸命に守る姫の姿があまりにも愛しかったのです。

 どうしてもアクションパートがクリア出来ない場合は、各ステージごとに規定時間が設けられており、その規定時間を越えてもステージをクリア出来ないと、そのステージをスキップ出来るようになる仕様となっていますので、アクションはちょっと……という方にもオススメしたいところです。

 本当に素晴らしいゲームなので、一人でも多くの方にこのゲームを知ってほしい思いでいっぱいです。興味を持たれた方はぜひ手に取ってみてください。



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