No.11…"Forget me not パレット"(2001.4.26/PS/開発:サクセス/販売:エンターブレイン)

 「第4回アスキーエンターテイメントソフトウェアコンテスト」のグランプリ作品『パレット』を下敷きにしたコンシューマバージョンである。精神科医シアノス・B・シアンの事務所に深夜、突然の電話がかかってきたことから物語は始まる。電話の内容は「B.D」という少女の記憶を電話越しに治療すること。断ろうにも、玄関の外には銃を持った謎の人物が陣取っており、シアンは依頼を受けざるを得なくなってしまう。こうして、シアンは電話を通じて、「B.D」の精神世界へと入りこみ、彼女の失われた記憶を取り戻していくことになる……。

 「B.D」の精神世界は幾つかの小部屋から成り立っており、その精神を解放していくことで、段々と入る事の出来る部屋が増えていくし、断片的な記憶が繋がっていく。個人的に上手いと思ったのは「精神障壁」の存在である。「B.D」が記憶の部屋を移動しようとすると、その間には「精神障壁」が張られている。それは1枚のときもあれば、記憶の核心に迫るときなど、10枚近くに及ぶこともある。そして、この精神障壁を破る力は「物語を進める」=「B.Dが記憶を取り戻していく」ごとに増えていく。このシステムのおかげで、「B.D」が徐々に記憶を取り戻していく過程が秀逸なものになっているのである。

 なお、なぜこの作品のタイトルが『パレット』と付けられているのかは、最後までクリアされた方ならお分かりになると思う。「B.D」が心の奥に閉ざした記憶の真実、シアノス・B・シアンの存在理由、そして「犯罪者の家族」が背負う重い十字架。それらは全て、「ゲームだからこそ可能な」一級のミステリであると断言出来る。

 グラフィックは地味であるし、際立ってプレイヤーに分かりやすい要素を持つ作品ではない。しかし、間違いなく秀作である。出回りが悪かったらしく、中古屋でもなかなか見つからないソフトだが、もし見つけて興味を持たれたら、ぜひプレイしてみてほしい。こういった「地味な佳作」がすぐに埋もれてしまうのは、あまりにも惜しいからである。

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