No.17…"タクティクスオウガ外伝 The Knight of Lodies"(2001.6.21(廉価版:2006.2.2)/GBA/開発:クエスト/販売:任天堂)

 シミュレーションRPG史上にその名を燦然と残す名作『タクティクスオウガ』の外伝として発売された作品。年代的には『タクティクスオウガ』より十数年前に遡り、オウィス島という島を舞台に物語は語られる。このオウィス島に、ローディス教国の属国であるフェーリス公国の公子レクトール・ラスナンティと、彼の部下にして親友であり、この物語の主人公である若き騎士アルフォンス・レーエルが、騎士団を連れて派遣されてくるところからストーリーは始まる。

 旅の最中で、アルフォンスは二人の女性と出会う。ひとりの名はエレノア・オリアト。人間とマーメイドが敵対するオウィス島において、出生時からマーメイドと深く関わり、数奇な運命を辿って生きてきた少女である。もうひとりはシビュラ・アリンダ。ローディス教国本国の密偵であり、アルフォンスたちとは別に密かにオウィス島にやってきた女性である。オウィス島はかつて堕天使が封印されたという伝説が伝えられており、また、先住者であるマーメイドと移住してきた人間とが激しく争った歴史を持つ。このとき、マーメイドが手にしながらも現在では行方がわからなくなった聖槍ロンギコルヌスを捜索してローディス本国に持ち帰るために、シビュラは派遣されたのである。そしてそのロンギコルヌスの行方を知るあるマーメイドは、エレノアとも大きく関わっている。このそれぞれ二人の女性に助けられたことにより、アルフォンスの運命は大きく動き出すこととなる。

 システム的に『タクティクスオウガ』と根本的に大きく変わった部分として、敵味方交互に攻撃フェイズが回ってくる一般的なターン制の戦闘システムになったことが挙げられる。敵味方問わずに素早いユニットから攻撃ターンが回ってきた戦闘システムが『タクティクスオウガ』の肝とも言えたため、この変更は少々残念であった。しかし、据え置き型ハードであったSFCと違い、GBAという携帯ハードでのゲームであるということを考えると、仕方のないことであるのかもしれない。

 また、クラスチェンジの条件も大きく変わっている。『タクティクスオウガ』ではほとんどの場合、ユニットの属性とパラメータが条件を満たしていれば、それだけで任意のクラスになることが出来た(殺害人数が関わるテラーナイトやクレリック、プリーストなどを除く)。しかし、この『外伝』では、属性やパラメータだけではなく、一定の条件を満たした場合に取れる「勲章」を取得しなければ、つくことが出来ないクラスが多数存在する。例えば「ナイト」になるには、「相手から反撃を受ける状態で物理攻撃を15回以上行う」ことで取得出来る「騎士の証」が必要になる。このような条件ならば、トレーニングで条件を満たすことが出来るが、「女性キャラが男性キャラの説得に成功する」ことで得られる「小悪魔のささやき」が必要な「ウィッチ」などは、実戦で狙って勲章を獲得するしかない。この変更点はどうも個人的には面倒くさくて残念であった。また、「トレーニングで20回以上レベルアップ」したキャラは、実戦でクリティカルを出せなくなってしまう勲章「ハリボテ勇者」を得てしまう。『タクティクスオウガ』でトレーニングの存在がゲームバランスを崩しかねないことがあったことを配慮しての変更なのかもしれないが、出撃チームのレベルを揃えないと戦闘が厳しいこのゲームにおいて、トレーニングに制限がついてしまったことは、クラスチェンジ条件の変更同様に残念に思う。

 ストーリーも『タクティクスオウガ』と比べるとボリューム不足な印象を受けるが、あまりにも名作すぎる『タクティクスオウガ』と比較しては可哀相であるかもしれない。エンディング後のアルフォンスのその後はいくつかあるエンディングのうち、真エンディングでのみ明らかになる。ある条件を満たせば『タクティクスオウガ』につながる更に踏み込んだシーンを見ることも出来るが、その条件というのは以下の通りである。

1:クリア時間25時間以内
2:自軍の戦死者数5人以内
3:アルフォンスの殺害数50人以上

 「2」と「3」の条件は容易に満たせる。問題は「クリア時間25時間以内」という条件である。頭を使ってじっくり楽しむものであろうシミュレーションRPGにおいて、この条件ではゲームを楽しむことも出来ないであろう。なぜこんな条件にしてしまったのか。非常に残念である。

 結局、本家である『タクティクスオウガ』には及ばない作品となってしまった『外伝』。しかし、そこらの凡百のシミュレーションRPG(例:『鬼武者タクティクス』)と比べたら、間違いなく良く出来たゲームであると思う。『オウガバトル』シリーズは版権の関係などもあってか、この『外伝』以降、久しく出ていないが、また新たなゼテギネアの物語に出会えることを祈りたいものである。



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