No.47…"MOTHER3"(2006.4.20/GBA/開発:任天堂、東京糸井重里事務所、HAL研究所、ブラウニーブラウン/販売:任天堂)
No.47…"MOTHER3"(2015.12.17/WiiU VC/販売:任天堂)

 まず初めに断っておきます。今回の『MOTHER』は『1』や『2』のような予定調和でほのぼのとした物語を期待すると、第1章という最序盤から裏切られます。ですから、『1』『2』のような「少年少女のワクワクするような冒険譚」を期待された方には、『3』は受け入れ難いかもしれません。でも、クリア後にじわじわと心に響いてくる物語、それが『MOTHER3』という作品なのです。

 舞台はノーウェア島という小さな島の小さな村であるタツマイリ村。ここでは人々は助け合い、そばの森や山の生き物達も、強いものが弱いものを守り、平和に暮らしています。この村に住む羊飼いのお父さんとお母さん、そして双子の息子達に飼い犬。プロローグでは彼らがいかに幸せに穏やかに暮らしていたかが語られます。

 しかし、その平穏な生活は、ある衝撃的な事件で一転します。主人公の家族の絆も無残に踏みにじられます。主人公は島に起きた異変を探るため、そして失った家族の絆を取り戻すために、立場は違えど志を同じくする人々と共に行動し、最終的にはノーウェア島に隠された謎や、過去に起きた想像もつかないような事実を知ることになります。これらの真実を知ったときの衝撃は、とてもではないですが忘れられるものではありません。

 今回の『3』は「家族」というものを真正面から描いた作品です。舞台と言うか旅をする世界は小さいですし、プレイ時間も短いですが、とても切なくて、けれど素晴らしい物語です。このゲームはニンテンドウ64版がいったんは開発中止になりましたが、GBAという新たなプラットフォームに舞台を移して、お蔵入りにならずに世に出たことは、本当によかったと心から思います。

 「奇妙で、おもしろい。そして、せつない。」……制作責任者である糸井重里さん自らが書き下ろしたこのキャッチコピーが、世界の全てを見事に表しているこの作品。どうぞ手にとってみてください。



「ほぼ日刊イトイ新聞 『MOTHER3』の気持ち」
(ゲームの内容に大きく触れているのでご注意ください)

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