No.105…"探偵 神宮寺三郎 伏せられた真実"(2009.3.19/DS/開発:ワークジャム/販売:アークシステムワークス)

 ファミコン時代からハードこそ色々と移行してきたが、綿々とシリーズを重ねてきた神宮寺三郎シリーズ。今回紹介する『伏せられた真実』は同タイトルの完全新作1本に加えて、携帯アプリとして配信された短編5本を収録した作品である。

 自身が関わった難事件を解決したことで、世間から「探偵J」の呼び名で主にワイドショーなどで一躍脚光を浴びて騒がれる存在となった神宮寺三郎。しかし神宮寺自身は全く関心を示さなかったため、数日が経ち、「探偵J」の話題が沈静化した頃、神宮寺探偵事務所に二人の姉妹が訪ねてくる。姉妹の父親はケーブルテレビ局の社長であり、表立ってはいないが現在は誘拐されている身であった。犯人は「探偵J」に身代金を指定した場所まで運んでこいと要求してきたため、姉妹は神宮寺の元へ依頼を受けてほしいと懇願に来たのであった。

 物語が進むにつれ、神宮寺はこの誘拐には何者かが仕組んだ「裏」があるのではないかということに気づき始める。その本当の事情こそが「伏せられた真実」であり、この事件に裏で大きく関わった人物について、神宮寺が名作童話『泣いた赤鬼』に例えてその行動の尊さを語ったとき、そして「伏せられた真実」というサブタイトルの示すものが分かったときには、思わず涙が出そうになってしまったほどであった。ゲームを進めるテンポではところどころに無駄に思える探索シーンなどがあり、全くの良作とは言えないかもしれないが、プレイヤーの心には間違いなく、何かが残る物語であろう。

 また、メインシナリオである『伏せられた真実』以外にも、携帯アプリとしてリリースされた短編『イヌと呼ばれた男』『ふた色の少女』『命断つ刻限』『託された指輪』『真偽の狭間』の計5本も収録されている。どれも短編なのでプレイするにはクリアまでそんなに時間はかからないが、時間が少し出来たときにでもプレイするには適しているボリュームではないかと思われる。

 前述したようにファミコン時代から今なお現役のゲームキャラとして認知されている神宮寺三郎。近年に出た新作『復讐の輪舞』は正直に言って傑作とは言い難かったが、またこの『伏せられた真実』のようなクリアしたプレイヤーの心に残るようなシリーズ作の登場に期待したいものである。



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