No.35…"ICO"(2001.12.6(廉価版:2004.8.5)/PS2/開発・販売:ソニーコンピュータエンタテインメント)
No.35…"ICO"(2011.9.22/PS3/開発・販売:ソニーコンピュータエンタテインメント)

 主人公のイコは角の生えた少年で、力も強い。そのイコが「霧の城」に「贄」として封じられるところから物語は始まる。イコは自力で閉じ込められた棺から抜け出し、城の中をさまよううちに、同じように巨大な鳥籠に閉じ込められていた少女と出会う。少女の話す言葉をイコは理解できず、それでも二人は共に城の出口を目指す。そして出口に現れた「女王」の言葉から、少女が女王の娘であることとヨルダという名であることがわかる。女王はイコもヨルダも城から脱出させる気はさらさらなく、出口を閉ざしてしまう。

 それでもイコは諦めない。ヨルダを連れ、他の出口を探索することになる。ヨルダは非力で、イコならば持てるものも持てないし、ジャンプする力も弱い。しかもイコがヨルダを置いて一人にしておくと、謎の魔物に連れ去られてしまう。ヨルダはきつく言うと足手まといな存在ですらあるかもしれない。しかし、要所要所にある謎の扉はヨルダが触らなくては開かないし、そういった攻略要素以上に、このか弱い少女を守らなければという使命感が自然と出てくる。その最大の要因は「手を繋ぐ」という行為かもしれない。ヨルダと手を繋ぐと、アナログコントローラが弱く振動する。まるで本当にヨルダの手を握っていて、その動きや体温が伝わってくるように錯覚してしまう。

 一言の台詞も用いずプレイヤーのアクションに連動する動作や感覚だけで、ヨルダをここまで魅力的なヒロインとして描いた演出は実に見事である。終盤ではヨルダがずっとイコに守られてきた経緯が存在するからこそ感動してしまうシーンもある。巧みとしか言いようがない。

 間違いなく、その名をゲーム史に残すであろうアドベンチャーゲームの名作である。

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