No.57…"Londonian Gothics 〜迷宮のロリィタ〜"(2005.10.13/DS/開発・販売:株式会社メガサイバー)

 19世紀末英国ロンドン。魔導科学者ナボコフは自らの研究対象であった異界の魔物により、彼の屋敷地下に出現した迷宮の奥深くに拉致されてしまう。ナボコフの一人娘のアリスは父を救うため、ナボコフや彼の助手兼執事の青年ミヒャエルらが作り出した魔導力の宿る「ドレス」を武器に、魔物が跋扈する迷宮へと飛び込んでいった。こうしてアリスの生死を賭けた冒険が始まったのである……。

 この『ロンドニアンゴシックス』は、上述のようなプロローグから始まる「ゴスロリアクションRPG」(説明書より抜粋)です。ジャンル名に「ゴスロリ」がつき、しかも武器であり防具である唯一の装備は「ドレス」です。ドレスと言っても「魔力を帯びている特殊なドレス」ですので、ただのドレスではありません。

 ドレスは全22種類作成出来ます。それらは全て「ゴシックロリータ」もしくは「ブリティッシュロリータ」なデザインで、デザインもネーミングも一着一着ごとに凝っています。最初にアリスが着ている「ヒステュール」以外は、迷宮内で魔物を倒して得られる、それぞれの「型紙」と「素材」を揃え、アリスが「魔法のミシン」を使って自ら作ります。一部のドレスには攻撃能力がありますが、ほとんどのドレスの能力は「体力回復スピードアップ」「マップ内索敵」「一マス分のジャンプ能力」といった補助的なものがほとんどです。おまけに迷宮を攻略するうえで必須のドレスは、最後に型紙を入手する「アーガス」だけです。極端に言ってしまえば、他のドレスは別に作成必須ではないのです。

 しかし、前述したような補助機能を持つドレスの有無で、迷宮探索の難易度はがらりと変わります。それに機能だけでなく、ドレスを着替えると(作成したドレスはいつでもチェンジ可能)、アリスのグラフィックもきちんと変わります。これが単にマップ上の服装グラフィックだけなら何も見るべきものではないですが、着用したドレスによって髪型も、ストレートやアップ、ツーテールなどに変化します。それに、このゲームは会話時に胸元から上の顔グラフィックがアップで出るのですが、そのバストショットのグラフィックも、アリスは彼女がそのときに着用しているドレスで変わるという凝りようです。ドレスのデザインがしっかりしているので、これがなかなか楽しいのですが、こういった『ラブandベリー』にも通じるかもしれない「着せ替え」要素は、男性プレイヤーよりも、むしろ女性プレイヤーのほうが楽しめるかもしれません。

 このようにゲームシステムは結構面白く、実際、新しいドレス見たさについつい深入りプレイもしがちです。けれど、残念ながらシナリオはお世辞にも褒められたものではありません。アリスは迷宮探索を進めるかたわらで、父ナボコフの研究の実態を調べはじめ、彼女の出生の秘密を知ることになります。それは言ってしまえばお約束な展開なのですが、アリスが持つ力やその肉体そのものの詳細、それにそもそもなぜ敵はわざわざナボコフをさらっていったのかといった謎は、まるで分かりません。ほとんどが伏線なしで投げっぱなしなのです。迷宮と屋敷内でのみゲームが進むので、舞台が19世紀末ロンドンである必要性も全くありません。

 また、アクション要素も残念な部分が多いです。アリスの当たり判定が大きすぎる、敵キャラの出現タイミングが掴みにくいなど。それでも、これらはドレスの能力や慣れでなんとかなります。いちばん手こずるのは、おそらくラスボス戦でしょう。これも結局は慣れとタイミングの把握に尽きるんですが、「アクションRPG」と銘打つには、なんともお粗末な戦闘であります。

 以上。欠点は多々あります。「名作」でもないし「傑作」とも言えません。敢えて言えば「人を選ぶ奇作」でしょうか。でも私はとても気に入ったので、ここで取り上げた次第です。キーワードは「ロリータファッション」に「着せ替え」。この二つの要素がお嫌いでなければ、楽しめるのではないでしょうか?



ドレス解説一覧
(2008.3.22)

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