No.2…"エナジーブレイカー"(1996.7.26/SFC/開発:ネバーランドカンパニー/販売:タイトー)

 「惜しい」、それが私のこの作品に対する思いを端的に表す言葉である。

 ゲームの内容はいわゆるターン制のシミュレーションRPGで、戦闘部分はよく出来たゲームだと思う。例えば、移動や攻撃を行う際は、「バランスポイント(以下BP)」というものをそれぞれ消費する。例えば移動では5ポイント、攻撃では3ポイント消費するし、「エナジーブレイク」のような大きな技になると、ほとんどのBPを消費して攻撃することになる。このBPは各キャラクターによって上限は決まっているのだが、基本的には毎ターン回復するシステムになっている。「基本的には」と書いたのは、BPは単純に毎ターンごとに全回復するわけではないからだ。実はBPの回復比率はHPの残量に比例しているので、HPが満タンならばBPも全快するが、HPが残り少なければ、BPもほとんど回復はしない。これは敵も味方も区別なく共通である。つまり、嫌な攻撃をしてくる敵に対しては、とどめを刺せなくとも、集中的に攻撃を加えてHPを減らしておけば、その敵は敵ターンになってもBPがないために、移動も攻撃も出来なくなるのである。ただし、前述したように、これは味方キャラも同様なので、大ダメージを食らう背後からの攻撃を防いだり、そのターン以内に速やかにHPを回復させる必要がある。また、各キャラにはBPとは別に、火、水、土、風の四大元素の「エナジーポイント」というパラメータも存在し、この4つのエナジーポイントを自分で調整することで様々な技を覚えていくシステムになっている。以上のシステムは最初は分かりにくいかもしれないが、戦略を練る意味でも良く出来ていると思う。

 しかし、戦闘部分がこれだけよく出来ていて楽しめるのに対して、ストーリー部分の説明不足が多すぎるのだ。そもそもの発端である主人公・マイラの現在の素性自身、ゲーム中では全く語られない。「夢の中の記憶を失っている」と言われても、マイラの詳細な身の上が分からない為、夢の中のことなんてどうでもいいじゃないか、としかプレイする側には思えない。それに発売前は大きな目玉ポイントであったと思われる「ライブリートークシステム」。これは、会話時に自キャラの感情を変えて発言することで、相手の返答が変わってくるというシステムだが、実際はゲーム中での影響はほとんどない。おそらくは容量の問題から削られたと思われるイベントがもっと存在していたと思われる。また、古いゲーム誌にて紹介されている記事では、主人公を自由に選ぶことが出来た、と記述してあり、実際のゲーム画面の写真でも、マイラ以外のキャラクターが主人公として動いていた。これらの要素も、容量の制限から削られてしまったのだろう。

 SFC末期にこのような良質のS・RPGが発売されたことは個人的には嬉しいことであった反面、発売時期に恵まれず、中身も散々苦労した挙句に見切り発射してしまった部分が多い本作品。もしも、もっと容量に恵まれたであろうPSやSSで開発されていれば、いや、SFCでももっと上手く容量を使いこなしていれば……そんなことばかり考えてしまう。良作だけに、そしてもっともっと名作になれる可能性があっただけに、本当に惜しいゲームである。

PS:言い忘れるところだったが、メインキャラクターデザインは『トライガン』でブレイクする以前の内藤泰弘氏が手掛けており、パッケージやマニュアルのメインキャラクターのイラストも同氏によるものである。氏のファンの方は一見の価値あり、と思う。  



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(2010.6.4)

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(2006.1.30)

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