No.77…"ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生"(2010.11.25(廉価版:2011.11.23)/PSP/開発・販売:スパイク)
No.77…"ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生"(2016.2.28/PC(Steam)/開発・販売:スパイク・チュンソフト)
No.77…"ダンガンロンパ 1・2 Reload"(2013.10.10/PS Vita/開発・販売:スパイク・チュンソフト)
No.77…"ダンガンロンパ 1・2 Reload"(2017.5.18/PS4/開発・販売:スパイク・チュンソフト)

 各分野における「超高校級」の超エリート高校生のみが入学を許される高校「希望ヶ峰学園」。特筆すべき才能もないごく平凡な高校生である苗木誠は、本来ならばそんな学園に入ることなど出来ないはずだったが、「超高校級の幸運」によって抽選の中から選ばれて入学資格を得た。だが、苗木が希望ヶ峰学園に入学した日、彼は一緒に入学した他の超高校級の高校生たちと共に突如として封鎖された学園内に閉じ込められてしまう。

 苗木を含めた16人の高校生たちの前に現れたのは、学園長を名乗る謎のクマのぬいぐるみ「モノクマ」。モノクマは16人に対して「これから一生をこの学園内で過ごしてもらう」「卒業、つまり外に出たければ誰かを殺して、他の者に犯人だと分からなければOK」という信じがたいルールを突きつける。

 いくら外に出たいからと言っても仲間を殺すなんて平常ならば考えられない。だが、16人全員が「殺人の動機」となり得る弱みをモノクマに握られていることが分かり、一触即発な状況下でついに殺人は起きてしまう。それも最初の殺人だけで終わらず、それをきっかけとして次々と……。殺人が起きるたびに、生き残った者によって犯人を探し当てるための学級裁判が開かれることになる。犯人=クロを当てられればクロだけがモノクマによる「おしおき」で殺されて無実の者は助かるが、逆にクロを当てられなければクロだけが卒業してしまい、クロ以外の者全員が「おしおき」されて死んでしまう。文字通り命がけの学級裁判が幕を開けるのだった。

 ジャンルとしてはアドベンチャーに分類されるが、このゲームのメインの見せ場である学級裁判モードはディベート形式で進み、捜査で集めた情報をゲームタイトル通り「言霊の弾丸」として銃に装填し、相手の意見を撃って「論破」して真実を探し当てていくシステムになっている。具体的には純粋な推理要素以外に、制限時間つきで表示されるメッセージの矛盾点を狙って撃つというアクションシューティング的な要素が加わっている。この「推理要素」と「アクション要素」はそれぞれ学級裁判開始前に「シンセツ」「ユルヤカ」「イジワル」の3段階の難易度から選べるシステムなので、例えば推理力には自信があるがアクションは苦手で……というプレイヤーであっても、自分に適切な難易度を選ぶことで安心して遊べるようになっている。

 アドベンチャーの屋台骨とも言えるシナリオについては、次から次へと予測不可能な展開の連続で、まさに息もつかせぬ内容となっている。登場人物は皆、一癖も二癖もありながら魅力的なキャラばかりだが、「殺される被害者」は呆気なく殺され、その度に意外なキャラが「殺人犯」だと発覚していく。シナリオ分岐はなく一本道のストーリーであるため「殺される者」と「生き残る者」は最初から最後まで決まっているが、誰が死んで誰が生き残るのかをプレイ前に完全に予想出来るプレイヤーはおそらくほとんど存在しないだろう。

 そしてこのゲームの最大の魅力と言っていいキャラ「モノクマ」。本作は大山のぶ代さんがドラえもん役を引退してから約5年ぶりとなった声優復帰作であるが、大山さんがドラえもんの声とイントネーションそのままで繰り出す数々の毒舌や下ネタのインパクトにはすさまじいものがある。大山さんがドラえもん役を既に降板しているとはいえ、よくこんなどす黒いキャラを演じることを引き受けたものだとも思うが、開発スタッフへのインタビューなどを読むと、大山さんはモノクマに対して好感を抱いていて楽しく演じていたようである。大山さんがモノクマを演じたことでモノクマがただの憎らしい悪役で終わらず可愛ささえ感じる魅力的なキャラになり、加えて『ダンガンロンパ』の世界観を表す言葉「サイコポップ」のイメージが明確になったのだから、豪華な声優陣がそろった今作のキャストの中でも大山さんの存在はやはり特別なものであると思われる。

 なお、通常版の発売から約1年後に「PSP the Best」として廉価版が発売されているが、廉価版では通常版に存在したバグが修正されていたり、通常版ではスキルとしてゲーム内で獲得しなければ使うことが出来なかった「観察眼(探索パートで調べられる箇所が△ボタンを押せば一目で分かる)」「ダッシュ(移動時に×ボタンを押すことで移動速度が速くなる)」を最初から使えるように修正されていてゲームを進める際のテンポや操作性が向上しているので、今からプレイしてみようかと考えている方は、値段を考慮しても廉価版を購入したほうがいいだろう。

 「高校生同士の殺し合い」という設定を始めとしてゲーム内で語られるストーリーは残酷で衝撃的だが、カジュアルなキャラデザイン、音楽、台詞回しといった数々の要素が、前述した『ダンガンロンパ』独特のイメージ「サイコポップ」を作り上げている。その高い内容の質が販売量に正比例した結果、完全新規のアドベンチャーゲームとしては異例のヒットとなった作品でもあるので、良質なアドベンチャーをプレイしたいと思っている方には是非オススメしたい傑作である。

 なお、『ダンガンロンパ 1・2 Reload』は『ダンガンロンパ』とその直接の続編の『スーパーダンガンロンパ2』のカップリング移植作品であり、グラフィックがHD化されているほか、『1』の追加要素として『2』のアイランドモードにあたる「スクールモード」が実装されている。これからプレイされる方はハードさえ持っているのならば、このバージョンを買われたほうがお得ではないかと思われる。



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