No.56…"緋王伝 〜魔物達との誓い〜"(1994.2.11/SFC/開発:ウルフチーム/販売:日本テレネット)

 ウルフチームがPC用に開発した同タイトル作品第1弾の移植版が、今回紹介させてもらう『緋王伝 〜魔物達との誓い〜』である。

 隣国からの突然の侵攻によって、追われる身となったマッキンタイア王国第3王子リチャード。親友カークウッドらに助けられ、逃げ込んだ古城の最上階に広がる空中庭園で、樹木の精霊(ドライアド)の女性ベアトリクスと出会う。ベアトリクスや彼女の仲間である他のドライアドらは、大地に根を張ることを願いながらも、空中庭園で芽吹いてしまったが為に、そんな些細な願いさえ叶えられずにいた。そこで、偶然とはいえ出会ったリチャードに、ベアトリクスはこう告げたのだった。「この空中庭園を始めとした色々な場所に封印されている魔物を、貴方のしもべに出来る指輪を差し上げましょう。封印された魔物が解放されてオーラが弱まれば、この空中庭園も落下を始めます。けれどこの庭園が地上に落ちることで、私達も大地に根を下ろせるのです」……と。

 父王も兄も国も失い、そして今は親友や数少ない部下をも失おうとしているリチャードに迷っている時間など、元よりなかった。リチャードはベアトリクスと契約し、解放した魔物をしもべとして自らの先兵としたその時から、リチャードの戦いは始まった……そして同時に、後に「血にまみれし王」即ち「緋王」として恐れられることになる、リチャードの悲運の人生の始まりでもあった。

 上述のプロローグよりも前に、実はOPデモの時点から既に、この物語の行き着く先が「力ゆえに恐れられた王の悲劇」であることがゲーム内で語られている。そのため、ハッピーエンドではないと分かっているうえでゲームをプレイすることになるが、別の観方をすれば、「リチャードがどのような経緯で「緋王」という恐れられる存在となってしまったのか?」という「過程」を、プレイヤーは追っていくことになるとも言える。シナリオで引っ張ると言う意味では成功している例ではないだろうか。

 シナリオ説明にだいぶ割いてしまったが、このゲームは元々、そのオリジナリティ溢れる画期的な戦闘システムで一躍知名度を上げた作品である。メンバーから数名で複数の小隊を編成し、基本的な命令と異動地点を設定すると、それら小隊がリアルタイムで動き出す。各小隊の現状は、複数のウィンドウから成る画面から監視することになる。命令を与えているとはいえ、細かく見張っていないと、回復が必要なのに回復魔法が使えないという事態に陥ってしまったりすることなどしょっちゅうである。この辺りはもっと細かい命令系統を使えるようにしてほしかった。マップ上のチビキャラ達が入り乱れて戦う様は、それはそれでコミカルなのだが。

 最近になって、ネット上でのダウンロード販売オンリーとはいえ、サウンドトラックも発売されたこのゲーム。「名作」とまではいかなくても「渋みある佳作」ではあるだろう。

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