No.16…"ブラックマトリクス"(1998.8.27/SS/開発:フライト・プラン/販売:NECインターチャネル)
No.16…"ブラックマトリクスアドヴァンスト"(1999.9.30(廉価版:2002.10.31)/DC/開発:フライト・プラン/販売:NECインターチャネル)
No.16…"ブラックマトリクスクロス"(2000.12.14(廉価版:2002.3.7)/PS/開発:フライト・プラン/販売:NECインターチャネル)
No.16…"ブラックマトリクスクロス"(2009.12.24/PS ゲームアーカイブス/販売:ガンホー・オンライン・エンターテイメント)…2010年12月24日をもって配信終了

 発売当時、完全限定生産ということで話題を集めたシミュレーションRPGである。もっとも、その後、サターン版は再販されたし、ドリームキャストやプレイステーションにも移植されているし、仲間に加わるキャラの幅なども後発版のほうが広がっているし、ゲームバランスもサターン版よりプレイステーション版のほうが改善されている。私はサターン版とプレイステーション版はクリアしたが、1999年9月30日に発売されたドリームキャスト版(ブラックマトリクスアドヴァンスト)はキャラデザインの変更や出来の悪いムービー追加に不満を覚えたため、最初のほうだけプレイして手放してしまった。そのため、このページでは、ドリームキャスト版が好きな方には申し訳ないが、サターン版とプレイステーション版について触れることにする。

 まず厳しいことを言わせてもらうと、このゲームはゲーム誌での紹介の仕方から間違っていた。5人の「ご主人様」=「ヒロイン」(隠しキャラで男の「ご主人様」も1人存在)ばかりがクローズアップされ、まるでギャルゲーのような印象ばかりを与えていた。しかしゲームをいざ始めてみると全く違う。ヒロインは最初と最後にしか登場せず、戦闘で仲間になるメインキャラは邪道騎士「ルピルピ」や、途中途中で仲間となる何人かのサブキャラの女性(ジェル、アークエンなど)以外は男性キャラばかりである。また戦闘もかなり本格的なシミュレーションRPGで、各々の武器の特性や戦法を把握して進軍する必要がある。特にオリジナルのサターン版は戦闘バランスが結構きつく、ギャルゲーと思って始めてみると、とんでもないしっぺ返しが返ってくるのである。それに「完全限定生産」と銘打っておきながら、再販もされたし、他機種へのリメイク移植もされた。この辺は発売元も最初からそのつもりだったのだろう。実に姑息な手である。

 話はゲームの中身へと移る。善悪の価値観が逆転した世界観というのは興味深いものがある。白い翼に生まれた主人公や旅の仲間のほとんどは、黒い翼の種族に奴隷として使役される存在である(主人公は黒い翼を持つヒロインの奴隷という身分なので、「ヒロイン」=「ご主人様」と呼ばれているのである。しかし主人公とヒロインの関係はまったく恋人同士のそれである)。また、現実世界では悪徳(例えば七つの大罪)となっていることが、このゲームの世界では美徳となっているのである。そして逆に、平等、自由、善意、弱者、友情、人権、愛といった要素が大罪とされており、特に「愛」は最大の罪として捉えられており、そのために主人公とヒロインは引き裂かれ、行方不明となったヒロインを探す旅が始まるのである。

 しかしこれらの世界観が上手く生かしきれたかというと、どうもイマイチな印象を受ける。例えば前述のメイン女性キャラ・ルピルピ。黒い翼の種族である彼女は「美徳」を守るモラルの高い女性であるが、一方で師であるヨハネを密かに愛しているという一面を持つ。「愛」が最大の大罪だと知っていながらである。また、メインの仲間のひとりであるピリポ。彼は両親に捨てられたと思い込んでいた気弱な少年であるが、実は両親は彼を愛していたからこそ、「病弱」という「悪徳」を背負った彼を世間の目にさらされないようにしたのである。そして、やはりメインキャラのひとりである少年・マルコ。彼も白い翼の持ち主だが、黒い翼の親友がいたという背景を背負っている。善悪が逆転しているのに、そこには男女の愛も家族愛も友情もちゃんと存在しているのである。この辺りの要素に消化不良気味なものを感じてしまった。善悪逆転の世界と言っても、結局は恋愛や家族愛や友情が存在していなければ世界が成立するはずがないということなのかもしれないが……。

 なんだかんだと言ったが、結構面白いゲームではある。もし興味を持たれて今から買うなら、廉価版も出ているプレイステーション版か、安価でダウンロード出来るゲームアーカイブス版がいいだろう(注:残念ながら現在ではゲームアーカイブス版は配信停止してしまいダウンロード不可能になっている)。戦闘バランスが改善されているし、シナリオにも追加があり、メインに選ばれなかった残りのヒロイン候補がサブキャラクターとして登場して仲間にすることも出来る。なかなかお買い得な作品でないかと個人的には思う。


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