No.119…"殺戮の天使"(2015.9.15/PC/開発:星屑KRNKRN/同人フリーソフト)
No.119…"殺戮の天使"(2016.12.20/Steam/開発:星屑KRNKRN/販売:PLAYISM)
No.119…"殺戮の天使"(2018.6,28/Nintendo Switch DLソフト/開発:星屑KRNKRN/販売:PLAYISM)

 とあるビルの最下層である地下7階で目を覚ました少女レイチェル。彼女は当初は記憶を失っていたが、時を経ずして起こるある出来事をきっかけに失っていた記憶を取り戻す。そして自分の前に現れた殺人鬼の青年アイザックに「自分を殺して」と嘆願する。ビルの中に設けられた「ルール」を破ったことで「追う者」からレイチェルと同じ「追われる者」の立場となったアイザックは「一緒にここから出る手助けをしてくれよ。そしたらお前を殺してやる」と約束する。

 奇妙で歪な約束を交わして行動を共にする二人はやがてお互いを「レイ」「ザック」と呼び合うようになる。果たして二人の決死行の行方は。そして二人を待つ結末は――。

 最初はPCのフリーゲームとして配信され、異例とも言えるほどのダウンロード数を記録し大ヒットしたアクションアドベンシャーである。そして開発者は原作者でもある星屑KRNKRNこと真田まこと氏ほぼ一人で、RPGツクールを開発ツールとして使って作られたという経緯を持つゲームでもある。

 作風としてはサイコホラーであり、主人公のレイとザックを含めて一般的に正常な精神の持ち主はほとんど登場しない。もっとも、ゲームをプレイしていくうちに「正常な精神」とは何か?と突きつけられてもプレイヤーは答えられなくなるのではと思ってしまうが。それほどまでに原作者の真田まこと氏の作り上げた世界と物語は強烈で、プレイヤーを飲み込んでしまうのである。

 ゲームを進めていくごとに、タイトルにもなっている「殺戮の天使」という言葉が誰を指すのかはプレイヤーにも自ずと見えてくる。「殺戮の天使」とは少々ショッキングな言葉だが、このゲームのタイトルにはこの言葉しかなかったのだということもプレイヤーはわかってくるだろう。狂気に満ちた歪な世界と言えるビルの中の世界で、プレイヤーはいつの間にかレイとザックに不思議な愛着を抱いているだろうし、だからこそ二人が迎えるあの結末にもある意味で安堵してしまうのだろう。

 なお、商業出版されている公式ファンブックには真田まこと氏によるゲーム全編の解説が載っており、このゲームを楽しめた人ならば非常に興味深いだろう内容に満ちている。ゲームクリア後に合わせて読んでみることをオススメする一冊である。



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